フリーランス・個人事業主の保険の選び方。優先順位と必要額の決め方
この記事の要点
- フリーランス・個人事業主の保険選びは、商品を比べる前に「公的制度でどこまで守られているか」を確認することから始めます。差が出るのは休業中の収入・障害・死亡・老後の4つです。
- 優先順位は、働けなくなったとき(就業不能保険)が最優先。万一のとき(収入保障保険)は扶養する家族がいる場合のみ。老後は所得控除のある制度を先に使い、足りない分を個人年金保険で補います。
- 必要額は「毎月いくら × 何年分」で出します。固定費・休んでも入る収入・貯蓄・家族構成の4つがわかれば計算でき、足りているものはやめてかまいません。
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「個人事業主 保険 おすすめ」で検索すると商品名が並びますが、フリーランス・個人事業主に必要な保険は、収入・固定費・貯蓄・家族構成で一人ひとり変わります。商品から選ぶと、必要のない保障に保険料を払い、必要な保障が抜けることが起きます。この記事では、先に公的制度で守られている範囲を確認し、働けなくなったとき・万一のとき・老後の3つに分けて優先順位と必要額を決める手順を、独身・共働き・子ありの家族構成別に整理します。やめていい保険も書きます。
保険を選ぶ前に、公的制度で足りる範囲を確認する
会社員からフリーランスになると、健康保険は国民健康保険に、厚生年金は国民年金になります。この切り替えで、公的制度の守る範囲が変わります。フリーランス白書2026では、傷病手当金がなくなることを独立前に知らなかった人が48.0%、遺族基礎年金の要件を知らなかった人が74.8%でした。
| 出来事 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 治療費 | 高額療養費で上限あり | 高額療養費で上限あり |
| 休業中の収入 | 傷病手当金(給与の約2/3・通算1年6か月) | 原則なし |
| 重い障害 | 障害基礎年金+障害厚生年金(3級まで) | 障害基礎年金のみ(1級・2級) |
| 死亡 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 遺族基礎年金のみ子のある配偶者または子に限る |
| 老後 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金モデル世帯 月237,279円 | 老齢基礎年金のみ満額 月70,608円 |
| 仕事中のケガ | 労災保険 | 労災保険の特別加入任意加入。業務外の病気は対象外 |
年金額は2026年4月分からの金額です。治療費については国民健康保険にも高額療養費があり、会社員との差はありません。差が出るのは、休業中の収入・障害・死亡・老後の4つで、いずれも「収入を補う」部分です。保険で備えるのはこの4つのうち、貯蓄と家族の収入で受け止められないものだけです。
3つの「もしも」の優先順位:フリーランスは働けないときが先
保険で備える出来事は、働けなくなったとき・万一のとき・老後の3つに分けられます。会社員向けの一般的な順番は死亡保障が先ですが、フリーランスでは順番が変わります。
第1優先:働けなくなったとき(就業不能保険)
傷病手当金がないため、病気やケガで働けなくなると収入が止まります。独身でも既婚でも、自分の生活費と事業の固定費は自分の収入で払っているはずで、この穴は家族構成にかかわらず存在します。毎月一定額を受け取る就業不能保険が、会社員の傷病手当金に相当する役割になります。生命保険文化センターの調査では、就業不能保障保険の加入率は5.1%で、備えている人はまだ少数です。
第2優先:万一のとき(収入保障保険)
自分が亡くなったときに生活に困る家族がいる場合に必要です。遺族基礎年金は子のある配偶者または子に限られ、会社員のような遺族厚生年金はありません。扶養する家族がいなければ、この備えは不要です。亡くなったあと毎月一定額を家族が受け取る収入保障保険は、必要な期間だけ保障を買えるため、まとまった一時金型より保険料を抑えやすい設計です。
第3優先:老後(制度が先、個人年金保険は最後)
老齢基礎年金の満額は月70,608円で、厚生年金のモデル世帯(月237,279円)との差は大きいです。公的年金だけでは不十分と考える人は79.8%にのぼります。ただし老後の備えは保険より先に、小規模企業共済やiDeCoといった所得控除のある制度を使うのが順番です。それでも足りない分を個人年金保険で補います。
必要額の決め方:毎月いくら × 何年分
保険の必要額は「毎月いくら」と「何年分」の2つで決まります。計算に必要なのは、毎月の固定費(生活費+事業の固定費)、休んでも入る収入、使える貯蓄、家族構成の4つです。
働けなくなったときの必要額
毎月の額=固定費 − 休んでも入る収入。たとえば固定費が月30万円で、配偶者の収入が月10万円なら、月20万円が上限の目安です。貯蓄で一部を賄えるなら、その分は減らせます。期間は、貯蓄で持つ月数(使える貯蓄 ÷ 毎月の不足額)を先に出し、それを超える期間から受け取れれば足ります。短期の休業は貯蓄で受け止め、長期だけ保険に任せると保険料を抑えられます。
万一のときの必要額
毎月の額=家族の生活費 − 遺族基礎年金 − 配偶者の収入。期間は、末子が独立するまで、または配偶者が働ける期間までが目安です。子どもが成長するにつれて必要な残り年数は減るため、受取総額が年々減っていく収入保障保険の形と相性がよい備えです。
老後の必要額
毎月の額=老後の生活費 − 老齢基礎年金(満額で1人あたり月70,608円)− 他の収入。この不足分を、所得控除のある制度と貯蓄でどこまで埋められるかを先に計算し、残りが個人年金保険で備える範囲です。
家族構成別の選び方:独身・共働き・子あり
独身
万一のときの備えは不要です。優先するのは働けなくなったときの収入で、貯蓄が固定費の12か月分以上あれば保険なしでも成り立ちます。6か月分に満たなければ、就業不能保険を検討する段階です。老後は制度を優先します。
共働き・子なし
配偶者に収入があれば、自分が働けなくなったときの不足額は「固定費 − 配偶者の収入」まで小さくなります。万一のときも、配偶者が自分の収入で生活できるなら死亡保障は小さくてかまいません。ただし住宅ローンなど二人の収入を前提にした固定費がある場合は、その分を見込みます。
子あり
働けなくなったときと万一のときの両方が必要になります。遺族基礎年金は子のある配偶者が対象になりますが、報酬比例の遺族厚生年金がない分、会社員の家庭より不足額は大きくなります。期間は末子の独立までで区切り、子どもの成長に合わせて保障を減らしていく設計にすると、保険料を抑えられます。
やめていい保険・減らしていい保険
必要額を出すと、会社員時代に入った保険の中に、フリーランスには過剰なものが見つかることがあります。次の4つは見直しの候補です。
- 扶養する家族がいないのに続けている死亡保障:受け取る人がいなければ不要です。働けなくなったときの保障に組み替えます。
- 高額療養費と重複している医療保険:治療費は高額療養費で上限があり、入院の自己負担は平均18.7万円、平均在院日数は28.4日です。貯蓄でこの額を出せるなら、医療保険は減らすか、やめる選択も合理的です。
- 保険料が重い貯蓄型の保険:貯蓄を兼ねた保険は保険料が高くなりやすく、収入が変動するフリーランスには負担になることがあります。保障は掛け捨てで買い、貯蓄は貯蓄で分けるのが基本です。
- 控除のために入っている保険:事業主本人の生命保険料は経費にはなりません。生命保険料控除の上限は所得税で区分ごとに4万円、合計12万円で、控除のために不要な保険を持つ理由にはなりません。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
選び方のまとめ
フリーランス・個人事業主の保険の選び方は、公的制度の確認、3つのもしもの優先順位、毎月いくら × 何年分の計算、家族構成での調整、不要な保険の整理、の順番です。この手順で出た必要額がゼロなら、保険は不要という結論になります。
相談では、収入・固定費・貯蓄・家族構成から必要な額を出し、必要な備えと不要な保険を仕分けします。保険ありきではなく、数字から決めるための30分です。
よくある質問
Q1結局、個人事業主にはどの保険がおすすめですか?
収入・固定費・貯蓄・家族構成によって答えが変わるため、全員に当てはまる商品はありません。順番としては、働けなくなったときの備え(就業不能保険)を最初に検討し、扶養する家族がいれば万一のときの備え(収入保障保険)を加え、老後は所得控除のある制度を優先します。この順番で、自分に必要なものだけ残すのが選び方です。
Q2保険料は収入の何%くらいが目安ですか?
収入に対する割合で決める方法は適していません。必要な保障額は固定費と貯蓄と家族構成で決まるもので、収入の大小とは直接関係がないからです。固定費から逆算して必要額を出し、その保障にかかる保険料が家計に収まるかを確認する順番で考えてください。
Q3持病があっても保険に入れますか?
生命保険の加入には健康状態の告知が必要で、持病によっては条件がついたり、加入できなかったりする場合があります。引受条件を緩和した保険もありますが、保障の範囲や保険料が通常と異なります。まず公的制度と貯蓄で備えられる範囲を確認したうえで、加入できる保険を検討してください。
Q4法人化(マイクロ法人)したら保険の選び方は変わりますか?
変わります。法人の役員として健康保険・厚生年金に加入すると、傷病手当金や障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になり、個人事業主のときに保険で備えていた部分の一部を公的制度が担うようになります。法人化の前後で必要保障額を出し直してください。
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 国民健康保険法 第58条(e-Gov法令検索)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金 月70,608円、厚生年金モデル世帯 月237,279円、障害基礎年金 1級1,059,125円・2級847,300円(年額))
- 厚生労働省「労災保険 特別加入制度」
- 厚生労働省「令和5年患者調査」(平均在院日数 総数28.4日)
- 生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」(入院の自己負担平均18.7万円(1日24,300円)、逸失収入平均27.3万円、就業不能保障保険の加入率5.1%、公的年金だけでは不十分79.8%)
- フリーランス協会「フリーランス白書2026」(独立前に知らなかった: 傷病手当金48.0%・遺族基礎年金の要件74.8%)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」
本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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