収入保障保険と就業不能保険の違い。フリーランスはどちらを先に考える?
この記事の要点
- 収入保障保険は本人が亡くなったとき「家族」が毎月受け取る死亡保障、就業不能保険は本人が働けなくなったとき「本人」が毎月受け取る保障。名前は似ていますが備える出来事が違います。
- 会社員には傷病手当金(給与の約3分の2・通算1年6か月)と遺族厚生年金がありますが、フリーランスにはどちらも原則ありません。そのため「働けなくなったとき」の優先度が会社員より上がります。
- 必要額は「毎月の不足額×必要な年数」で出します。扶養する家族がいなければ収入保障保険の優先度は低く、貯蓄が固定費の何か月分あるかで就業不能保険の要否も変わります。
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「収入保障保険」と「就業不能保険」は、どちらも毎月決まった額を受け取る保険で、名前も似ています。けれど備えている出来事はまったく違います。収入保障保険は本人が亡くなったときに家族が受け取る死亡保障で、就業不能保険は本人が病気やケガで働けなくなったときに本人が受け取る保障です。この記事では2つの違いを表で整理したうえで、会社員と公的制度が違うフリーランスではどちらを先に考えるべきか、必要額はどう出すかを解説します。
収入保障保険と就業不能保険の違い:誰が・いつ・何を受け取るか
2つの保険の違いは「誰が」「どんなときに」受け取るかで整理できます。収入保障保険は死亡(または所定の高度障害)が支払いの条件で、受け取るのは遺された家族。就業不能保険は本人が所定の働けない状態になったことが条件で、受け取るのは本人です。
| 収入保障保険 | 就業不能保険 | |
|---|---|---|
| 備える出来事 | 本人の死亡(所定の高度障害を含む) | 本人が病気・ケガで働けない状態 |
| 受け取る人 | 遺された家族 | 本人 |
| 受け取り方 | 亡くなった時点から保険期間の満了まで毎月 | 働けない状態が続く間、毎月(上限期間あり) |
| 本人が働けなくなったとき | 対象外高度障害に該当する場合を除く | 対象 |
| 本人が亡くなったとき | 対象 | 対象外死亡保障は付かないのが一般的 |
| 必要性を左右するもの | 扶養する家族の有無 | 貯蓄と固定費、公的制度の有無 |
ひとことで言えば、収入保障保険は「自分がいなくなったあとの家族の生活費」、就業不能保険は「自分が働けない間の自分(と家族)の生活費」です。独身で扶養する家族がいなければ前者の必要性は低く、後者はすべてのフリーランスに関係します。
フリーランスで優先順位が変わる理由:傷病手当金と遺族厚生年金がない
会社員は「働けなくなったとき」と「亡くなったとき」の両方に、公的な収入の下支えがあります。フリーランスはそのどちらも薄くなります。
働けなくなったとき:傷病手当金が原則ない
会社員の健康保険には傷病手当金があり、業務外の病気やケガで働けないとき、給与(標準報酬日額)の約3分の2が通算1年6か月支給されます。フリーランスが加入する国民健康保険では、傷病手当金は国民健康保険法第58条の「任意給付」で、通常の病気・ケガを対象に支給している市区町村は原則ありません。働けなくなった月の収入は、貯蓄か民間の保障で補うことになります。
亡くなったとき:遺族基礎年金だけで、遺族厚生年金がない
会社員が亡くなると、遺族には遺族基礎年金に加えて、報酬に比例した遺族厚生年金(報酬比例部分の4分の3)が支給されます。国民年金のみのフリーランスには遺族厚生年金がなく、遺族基礎年金も「子のある配偶者」または「子」が対象です。子がいない配偶者は遺族基礎年金を受け取れません。フリーランス白書2026では、独立前に遺族基礎年金の要件を知らなかった人が74.8%、障害年金の要件を知らなかった人が75.3%にのぼります。
| 会社員 | フリーランス | |
|---|---|---|
| 働けないとき公的な収入の補てん | 傷病手当金(給与の約2/3・通算1年6か月) | 原則なし |
| 亡くなったとき遺族への年金 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 遺族基礎年金のみ子のある配偶者または子が対象 |
| 重い障害が残ったとき | 障害基礎年金+障害厚生年金(3級あり) | 障害基礎年金のみ1級・2級に限る |
つまりフリーランスでは、会社員なら傷病手当金で乗り切れる「数か月から1年半の休業」が、そのまま収入の穴になります。この穴は家族構成にかかわらず誰にでも起こりうるため、扶養する家族がいる人も、まず「働けなくなったとき」から考えるのが順番です。そのうえで、家族がいる人は「亡くなったとき」の不足額を見ます。
必要額の出し方:毎月の不足額×年数
どちらの保険も「毎月いくら受け取るか」を決める保険なので、必要額の出し方は共通です。まず「毎月の不足額」を出し、それに「必要な年数」をかけます。
就業不能保険の場合
- 毎月の固定費を出す(家賃・住宅ローン、食費、光熱費、通信費、保険料、事業の固定費など)。
- 働けない間も入ってくるお金を引く(配偶者の収入、障害年金に該当する場合はその額など)。残りが毎月の不足額です。
- 貯蓄が固定費の何か月分あるかを確認する。その期間は貯蓄で賄えるので、保険で備えるのは貯蓄が尽きたあとの期間です。
たとえば毎月の不足額が15万円で、貯蓄が固定費の6か月分なら、「7か月目以降に毎月15万円」が備えの目安になります。どのくらいの期間を備えるかは、生命保険文化センターの調査にある入院時の逸失収入の平均27.3万円(収入が減った人の平均)や、厚生労働省の患者調査にある平均在院日数(35〜64歳で20.2日、精神疾患では290.4日)のように、短期で済む場合と長期化する場合の幅を見て決めます。
収入保障保険の場合
- 自分が亡くなったあとの家族の毎月の生活費を出す。
- 遺族基礎年金(子がいる場合)、配偶者の収入、貯蓄を引く。残りが毎月の不足額です。
- 不足が続く年数を決める。末子が独立するまで、配偶者が年金を受け取り始めるまで、などが目安です。
収入保障保険は、亡くなった時点から保険期間の満了までを毎月受け取る仕組みなので、「末子が22歳になるまで毎月10万円」のように、不足が続く期間に合わせて設計できます。子の成長とともに必要な総額が減っていく家庭の実態に合った形です。
加入前の注意点:告知・支払い条件・精神疾患の扱い
- 告知が必要:どちらの保険も加入時に健康状態の告知が必要です。持病や通院歴によっては条件がついたり、加入できない場合があります。
- 支払いが始まるまでの期間:就業不能保険は、働けない状態が一定期間続いたことを条件に支払いが始まる商品が多く、その期間の長さは商品ごとに異なります。その間は貯蓄で賄う前提で、貯蓄額と期間の長さを合わせて考えます。
- 「働けない状態」の定義:就業不能保険の支払い条件は「入院または在宅療養」「所定の障害状態」など商品で異なります。自分の仕事で起こりやすい状況が対象に含まれるかを確認します。
- 精神疾患の扱い:うつ病などの精神疾患を対象外とする商品、対象にするが条件や期間を別に定める商品があります。平均在院日数が最も長いのは精神疾患(290.4日)であり、対象範囲の確認は重要です。
- 保険期間と受取期間の上限:収入保障保険は何歳まで保障するか、就業不能保険は最長何年(または何歳まで)受け取れるかで、備えられる範囲が変わります。
家族構成別:フリーランスはどちらを先に考えるか
独身・扶養する家族がいない
収入保障保険の優先度は低くなります。自分が亡くなったときに生活費が不足する人がいないからです。考えるのは就業不能保険のみで、それも貯蓄が固定費の何か月分あるかで要否が決まります。貯蓄が十分で、働けなくなっても親などに頼れる場合は、保険なしで貯蓄を積み増す選択も合理的です。
共働き・子なし
配偶者に収入があれば、亡くなったときの不足額は小さくなりがちです。一方、子がいない配偶者は遺族基礎年金の対象外なので、配偶者の収入だけで生活費と住居費が賄えるかを確認します。働けなくなったときは、配偶者の収入で何か月持つかを計算して、就業不能保険の要否を決めます。
子あり・自分が主な稼ぎ手
両方を検討する家族構成です。働けなくなったときは家族全員の生活費が不足し、亡くなったときは遺族基礎年金だけでは足りないことが多いためです。ただし順番は「働けなくなったとき」から。会社員と違って傷病手当金がないぶん、数か月の休業でも家計に直接響くからです。
どちらの保険も「必要な額」は収入・固定費・貯蓄・家族構成で決まり、人によっては不要です。相談では、その4つの数字をもとに、必要な保障の額と期間、そして入らなくてよい保険を仕分けします。
よくある質問
Q1収入保障保険と就業不能保険、両方に入る必要がありますか?
家族構成によります。扶養する家族がいて、自分が亡くなると家族の生活費が不足する場合は収入保障保険、自分が働けなくなると自分や家族の生活費が不足する場合は就業不能保険が候補です。独身で扶養する家族がいなければ、収入保障保険の優先度は低くなります。
Q2就業不能保険は、うつ病などの精神疾患でも受け取れますか?
商品によって扱いが異なります。精神疾患を対象外とするもの、対象にするが支払い条件や期間を別に定めるものがあります。加入前に約款で対象範囲を確認してください。相談ではその確認の仕方も含めてお伝えします。
Q3就業不能保険は、働けなくなったらすぐ受け取れますか?
多くの商品では、働けない状態が一定期間続いたことを条件に支払いが始まります。その期間の長さや、支払い対象となる「働けない状態」の定義は商品ごとに異なります。その期間の生活費は貯蓄で賄うことになるため、貯蓄額とあわせて考える必要があります。
Q4収入保障保険と定期保険(一括で受け取る死亡保険)はどう違いますか?
定期保険は死亡時に決まった金額を一括で受け取るのに対し、収入保障保険は亡くなった時点から保険期間の満了まで毎月(または毎年)受け取ります。契約後の時間の経過とともに受け取る総額が減っていくため、一般に同じ保障の始まり方なら定期保険より保険料を抑えやすい仕組みです。
Q5持病があると、どちらも入れませんか?
どちらも加入時に健康状態の告知が必要で、持病の内容によっては条件がついたり加入できない場合があります。引受条件を緩和した商品もありますが、保障範囲や保険料は通常の商品と異なります。詳しくは「持病があるフリーランスの備え方」のガイドをご覧ください。
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 国民健康保険法 第58条(e-Gov法令検索)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(遺族基礎年金の対象・遺族厚生年金の報酬比例3/4・障害基礎年金の額)
- 生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」(就業不能保障保険の加入率5.1%・逸失収入の平均27.3万円)
- フリーランス協会「フリーランス白書2026」(独立前に知らなかった: 遺族基礎年金の要件74.8%・障害年金の要件75.3%)
- 厚生労働省「令和5年 患者調査」(平均在院日数)
本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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