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フリーランスが働けなくなったら収入はどうなる?公的制度と備え方

公開 / 著者 中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社)

この記事の要点

  • フリーランスが病気やケガで働けなくなると、収入は休んだ日から止まります。会社員の傷病手当金(給与の約3分の2・通算1年6か月)にあたる公的給付は、国民健康保険では原則ありません。
  • 公的制度で使えるのは、治療費の上限を決める高額療養費と、重い障害が残った場合の障害基礎年金(1級・2級のみ)。数か月から1年程度の休業中の生活費を補う制度はありません。
  • 備えの順番は、貯蓄が固定費の何か月分あるかを数えることから。貯蓄で持つ期間を超えたときに備えるのが、毎月一定額を受け取る民間の保障です。

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フリーランス・個人事業主が病気やケガで働けなくなったら、収入はどうなるのか。答えは単純で、働けなくなった日から売上が止まります。会社員のように給与の一部を補う仕組みはなく、休業補償にあたる公的制度もありません。生命保険文化センターの調査では、ケガや病気に不安を感じる人が88.6%いる一方、経済的な準備ができていないと答えた人は64.5%でした。この記事では、休む期間が1か月・半年・1年以上の場合に何が起きるか、使える公的制度とその条件、貯蓄が尽きるまでの計算方法、備えの型を順に整理します。

フリーランスが働けなくなったら、収入は休んだ日から止まる

会社員は、業務外の病気・ケガで働けなくなると健康保険から傷病手当金が出ます。給与(標準報酬日額)の約3分の2が、同じ病気・ケガについて通算1年6か月支給される仕組みです。フリーランス・個人事業主の多くが加入する国民健康保険では、傷病手当金は国民健康保険法第58条の「任意給付」で、通常の病気・ケガを対象に支給している市区町村は原則ありません。

つまり、同じ病気で同じ期間休んでも、会社員には給与の3分の2が入り、フリーランスには何も入りません。この差が、働けなくなったときの備えを考える出発点です。フリーランス白書2026では、社会保険制度に不安を感じている人が68.2%にのぼりました。

期間別に何が起きるか:1か月・半年・1年以上

厚生労働省の患者調査では、入院した場合の平均在院日数は全体で28.4日、35〜64歳では20.2日です。ただし病気によって差が大きく、脳血管疾患は68.9日、精神及び行動の障害は290.4日と長くなります。退院後の通院や療養期間を含めると、働けない期間は入院日数より長くなるのが普通です。

1か月休む場合

その月の売上がなくなり、翌月以降の入金も減ります。生活費と事業の固定費(家賃・通信費・ソフトウェアの利用料・リース料など)は変わらず出ていきます。治療費は高額療養費制度で月ごとの上限がありますが、差額ベッド代や食事代などは対象外です。生命保険文化センターの調査では、直近の入院の自己負担額は平均18.7万円(1日あたり24,300円)でした。1か月程度なら、多くの人は貯蓄で乗り切れます。

半年休む場合

固定費の6か月分がそのまま貯蓄から出ていきます。取引先との契約が切れ、復帰後に以前と同じ売上に戻るまでの期間も見込む必要があります。ここで貯蓄が足りなくなる人が増えます。

1年以上休む場合

重い障害が残った場合には障害基礎年金の対象になる可能性がありますが、対象は1級・2級に限られ、判断は初診日から一定期間を経過した時点の状態で行われるため、受給までに時間がかかります。それまでの期間を補う公的制度はなく、障害が2級に該当しない程度であれば、働けないまま給付もないという状態が続きます。

使える公的制度と条件:個人事業主の休業補償は何があるか

制度補うものフリーランスの場合
高額療養費治療費の自己負担の上限使える国民健康保険にもある。収入は補わない
傷病手当金休業中の収入(給与の約2/3)原則なし国保では任意給付
労災保険の特別加入仕事中のケガ・病気の治療費と休業給付加入していれば使える任意加入。業務外の病気は対象外
障害基礎年金重い障害が残った場合の年金1級・2級のみ3級と障害厚生年金はない

労災保険の特別加入は、2024年11月から特定受託事業者(フリーランス)が広く対象になりました。ただし対象は仕事が原因のケガ・病気に限られ、フリーランス白書2026では認知している人が42.7%、加入している人は10.4%にとどまります。

障害基礎年金の額は2026年4月分から、1級が年1,059,125円、2級が年847,300円です。2級は月額換算で約70,600円で、これは老齢基礎年金の満額と同じ水準です。受給できたとしても、働いていたときの収入を置き換える額ではありません。

公的制度を並べてみると、フリーランスが働けなくなったとき「治療費」は高額療養費で守られ、「重い障害」は障害基礎年金で一部守られます。守られていないのは、その間の「休業中の収入」です。

貯蓄が尽きるまでの計算:フリーランスの病気と収入の「持ち月数」

備えが必要かどうかは、不安の大きさではなく、数字で決められます。次の3つを書き出してください。

  1. 毎月の固定費:生活費(家賃・食費・光熱費・保険料・教育費など)と事業の固定費の合計
  2. 休んでも入る収入:配偶者の収入、家賃収入、継続課金の売上など
  3. 使える貯蓄:事業の運転資金や税金の支払い分を除いた額

持ち月数は「使える貯蓄 ÷(毎月の固定費 − 休んでも入る収入)」です。たとえば固定費が月30万円、休んでも入る収入が月10万円、使える貯蓄が200万円なら、200 ÷ 20 で10か月持ちます。ここから入院の自己負担(平均18.7万円)を引くと、9か月前後になります。

この持ち月数が12か月以上あれば、1年程度の休業は貯蓄で乗り切れる可能性が高く、民間の保障の優先度は下がります。6か月未満であれば、半年の休業で貯蓄が底をつくため、備えを検討する段階です。

備えの型:毎月一定額を受け取る保障

貯蓄で持つ期間を超えて働けなくなったときに備えるのが、民間の就業不能保険です。病気やケガで所定の働けない状態が続いたときに、毎月一定額を受け取る仕組みで、傷病手当金のないフリーランスにとっては会社員の傷病手当金に相当する役割になります。生命保険文化センターの調査では、就業不能保障保険の加入率は個人で5.1%、世帯で17.2%と、まだ少数派です。

設計の考え方は次のとおりです。

  • 毎月の受取額:固定費から「休んでも入る収入」を引いた額が上限の目安。貯蓄で一部を賄えるなら、その分は減らせます。
  • 受け取り始める時期:持ち月数の範囲は貯蓄で賄い、それを超える期間から受け取れれば十分です。短期の休業まで保険でカバーしようとすると保険料が重くなります。
  • 受け取る期間:復帰までの期間か、障害基礎年金の判断が出るまでの期間か、あるいは就労年齢までか。長くするほど保険料は上がるため、貯蓄と家族構成で決めます。

なお、万一のときに家族が受け取る収入保障保険とは役割が違います。働けなくなったときに本人が受け取るのが就業不能保険、亡くなったときに家族が受け取るのが収入保障保険で、扶養する家族がいない場合は前者の優先度が高くなります。

精神疾患で働けなくなった場合

患者調査では、精神及び行動の障害の平均在院日数は290.4日と、他の病気と比べて際立って長くなっています。退院後も段階的な復帰になることが多く、フリーランスにとっては働けない期間がもっとも長くなりやすい病気です。

一方で、就業不能保険には精神疾患を保障の対象外としたり、対象でも受け取れる期間や条件を限定したりするものがあります。これは商品によって扱いが大きく異なる点なので、検討の際は精神疾患が対象かどうか、対象の場合にどのような条件がつくかを確認してください。障害基礎年金は精神障害も対象ですが、1級・2級に該当するかどうかの判断であり、受給までに時間がかかる点は他の病気と同じです。

まず数字を出すことから

フリーランスが働けなくなったときの不安は、制度を知らないことから大きくなります。フリーランス白書2026では、障害年金の要件を独立前に知らなかった人が75.3%いました。制度を知り、持ち月数を計算すれば、備えが必要かどうかと、必要な場合の額と期間は自分で決められます。

貯蓄が十分にあり扶養する家族がいなければ、民間の保障は不要と判断してかまいません。相談では、収入・固定費・貯蓄・家族構成から必要な額と期間を出し、必要な備えと不要な保険を仕分けします。

よくある質問

Q1フリーランスでも休業補償のような制度はありますか?

業務外の病気・ケガで休んだ期間の収入を補う公的制度は、国民健康保険には原則ありません。仕事中のケガや通勤中の事故については、労災保険に特別加入していれば休業給付の対象になりますが、加入は任意で、業務外の病気は対象外です。

Q2障害年金は働けなくなったらすぐもらえますか?

障害基礎年金は、初診日から一定期間を経過した時点(障害認定日)の障害の状態で判断される制度で、数か月の休業では対象になりません。また、国民年金の加入者が受け取れるのは1級・2級に該当する場合に限られます。会社員が対象になる3級や障害厚生年金はありません。

Q3労災保険の特別加入をしていれば、病気のときも安心ですか?

労災保険が対象にするのは仕事が原因のケガや病気(業務災害・通勤災害)です。がんや脳血管疾患、うつ病など、仕事が原因と認められない病気で働けなくなった場合は対象外です。業務外の病気は、貯蓄か民間の保障で備えることになります。

Q4貯蓄がいくらあれば、働けなくなったときの保険はいらないですか?

一つの目安は、生活費と事業の固定費の合計で12か月分以上の貯蓄があり、扶養する家族がいないことです。この条件を満たしていれば、1年程度の休業は貯蓄で乗り切れる可能性があります。ただし、入院の自己負担や事業の固定費が重い場合は、持つ月数が短くなるため、実際の数字で確認してください。

出典

本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。

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