持病があるフリーランスの備え方。告知と加入できる保険の考え方
この記事の要点
- 生命保険・医療保険・就業不能保険の加入には健康状態の告知が必要です。事実と異なる告知や告知漏れがあると、契約が解除され保険金が支払われないことがあります。
- 持病があっても、条件付きで引き受けられる場合や、引受条件を緩和した保険に加入できる場合があります。ただし保険料や保障の内容は通常の保険と異なることがあります。
- 保険に入れるかどうかの前に、高額療養費・障害年金・貯蓄で賄える範囲を数字で確認します。保険は、それでも残る不足を埋めるものです。
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高血圧や糖尿病、うつ病の通院歴、過去の手術。持病や既往症があると、「保険に入れないのでは」「正直に言うと断られるのでは」と、相談そのものをためらう方がいます。フリーランスは会社員と違って傷病手当金が原則なく、休んだ分がそのまま減収になるため、持病がある人ほど備えの必要性は高いのに、備えにくい。この記事では、告知の仕組みと、持病があっても検討できる加入の形、そして保険に入れるかどうかにかかわらず使える備えを整理します。病名ごとの加入可否は書きません。それは告知内容をもとに保険会社が判断することだからです。
持病があると保険に入れない?まず告知の仕組みから
生命保険・医療保険・就業不能保険・収入保障保険は、加入時に健康状態を申告する告知が必要です。告知は、保険会社が引き受けるかどうか、どんな条件で引き受けるかを判断するための材料で、保険料を払う人の間で公平さを保つための仕組みでもあります。
告知の方法は、告知書の質問に答える形式が一般的です。質問は「過去○年以内に入院や手術をしたか」「過去○か月以内に医師の診察・検査・治療・投薬を受けたか」「現在、医師から治療や検査をすすめられているか」のように、期間と内容が具体的に区切られています。「持病がある=加入できない」ではなく、告知した内容をもとに、通常の条件か、条件付きか、引き受けられないかが決まります。
告知義務とは。正しく告知しないとどうなるか
告知は保険法で定められた契約者・被保険者の義務(告知義務)で、保険会社が告知書で尋ねた事項について、事実をありのまま申告する必要があります。事実と異なる告知をしたり、尋ねられた事実を告げなかったりすると、保険会社は契約を解除でき、保険金や給付金が支払われないことがあります。一般に、解除の権利は契約から一定期間が過ぎると行使できなくなりますが、その期間内に保険金の支払い事由が起きた場合は、告知義務違反を理由に支払われないことがあります。
フリーランス白書2026では、社会保険制度に不安を感じている人が68.2%でした。不安があるから保険に入りたい、でも持病を正直に書くと入れないかもしれない。このジレンマで告知を軽く済ませてしまうと、保険料を払い続けたのに受け取れない、という最も避けたい結果になります。
持病があるフリーランスが検討できる加入の形
告知の結果、保険会社の引受判断は大きく次のいずれかになります。
- 通常の条件で引き受け:治療が終わって一定期間が経過している場合や、数値が安定している場合など。告知した内容によっては、持病があっても通常の条件で加入できることがあります。
- 条件付きで引き受け:特定の部位や疾病を保障の対象から外す(不担保)、保険料を割り増す、一定期間は保険金を減額する、といった条件がつく形です。条件の内容と期間は保険会社と商品によって異なります。
- 引受条件を緩和した保険:告知項目を少なくし、持病や通院歴があっても加入しやすくした保険(引受基準緩和型・限定告知型などと呼ばれます)。医療保険や死亡保障などで用意されています。
- 引き受けられない:どの形でも加入が難しい場合。このときは、次に述べる保険以外の備えが中心になります。
就業不能保険は、病気やケガで働けない状態が続いたときに毎月一定額を受け取る保険ですが、精神疾患の扱いや、持病に関する部位・疾病の不担保の有無は商品によって異なります。何が保障の対象になり、何が外れるのかを、契約前に約款と重要事項説明で確認してください。
保険料や保障が通常と異なる点
条件付きや引受条件を緩和した保険で加入する場合、通常の保険と何が変わるかをまとめます。具体的な保険料や条件は商品ごとに異なるため、ここでは一般的な傾向だけを書きます。
| 通常の保険 | 条件付き・引受条件を緩和した保険 | |
|---|---|---|
| 告知項目 | 詳細な質問に答える | 少ない・限定された質問(緩和型) |
| 保険料 | 年齢・性別などで決まる標準の水準 | 割増や、標準より高めの水準になることがある |
| 保障の範囲 | 約款どおり | 特定部位・疾病の不担保や、加入後一定期間の減額がつくことがある |
| 持病の悪化・再発 | 約款の範囲で対象 | 不担保の対象であれば支払われない |
保険料が高めで保障が限定されるなら、「その保険に入る意味があるのか」を貯蓄と比べて考える必要があります。たとえば月々の保険料を10年間積み立てた額と、保険から受け取れる見込みの額を並べると、入る価値があるかどうかが見えてきます。持病がある人の相談では、この比較を先に行います。
保険以外の備え:高額療養費・障害年金・貯蓄
保険に入れるかどうかにかかわらず、フリーランスが使える公的制度と、貯蓄で持つ期間の目安を押さえておきます。
- 高額療養費:国民健康保険にもあり、1か月の医療費の自己負担には所得に応じた上限があります。持病の治療費が続く場合でも、月ごとの上限を超える分は払い戻されます。生命保険文化センターの調査では、直近の入院の自己負担費用は平均18.7万円でした。
- 傷病手当金:国民健康保険では法律上の任意給付で、通常の病気・ケガで支給している市区町村は原則ありません。休んだ間の収入を補う公的制度は、原則としてないと考えて備えます。
- 障害年金:病気やケガで日常生活や仕事に一定以上の制限が残った場合の制度です。国民年金の障害基礎年金は1級・2級のみで、2026年4月分からの年額は1級1,059,125円・2級847,300円です。持病の種類によっては対象になり得ますが、保険料の納付要件があり、受給までに時間もかかります。フリーランス白書2026では、独立前に障害年金の要件を知らなかった人が75.3%でした。
- 貯蓄:厚生労働省の患者調査では、平均在院日数は全体で28.4日、35〜64歳で20.2日、精神及び行動の障害では290.4日です。入院だけでなく、退院後の療養や通院で働けない期間も含めて、固定費の何か月分を貯蓄で持つかが備えの土台になります。
同じ調査で、直近の入院で収入が減った人の逸失収入は平均27.3万円でした。会社員も含む平均ですが、傷病手当金のないフリーランスでは休んだ分がそのまま減収になります。保険に入れない場合は、この減収を貯蓄で何か月吸収できるかが、備えの中心になります。
相談で健康状態をうかがう理由
当社の相談では、最初に収入・固定費・貯蓄・家族構成とあわせて、健康状態と通院歴をうかがいます。これは加入を断るためではなく、告知で引っかかる可能性のある保険を最初から候補から外し、入れる形と入らなくてよい範囲を整理するためです。告知が必要な保険を申し込んでから引き受けられないと分かるより、先に分かっていたほうが、貯蓄や公的制度を含めた全体の設計を立てやすくなります。
持病がある人の備えの順番は、次のとおりです。
- 高額療養費と障害年金で、治療費と長期の就業不能がどこまで賄えるかを確認する。
- 固定費の何か月分を貯蓄で持てるかを計算し、休業時に貯蓄が尽きるまでの期間を出す。
- その期間を超える不足に対して、通常の保険・条件付き・引受条件を緩和した保険のどれで備えられるかを、告知内容をもとに確認する。
- 保険料と保障を貯蓄と比べ、入る意味のある保険だけを残す。
相談では、収入・固定費・貯蓄・家族構成と健康状態から必要な額を出し、入れる保険と入らなくてよい保険、保険より貯蓄で持つべき範囲を仕分けします。持病があることは、相談を避ける理由ではなく、先に整理しておく理由です。
よくある質問
Q1持病を告知すると、保険には入れなくなりますか?
病気の種類・治療の状況・経過期間などを総合して保険会社が判断するため、一律には言えません。通常の条件で引き受けられる場合、特定の部位や疾病を保障の対象外にするなど条件付きで引き受けられる場合、引受条件を緩和した保険であれば加入できる場合、どの保険にも加入が難しい場合があります。個別の可否は告知内容をもとに保険会社が判断します。
Q2告知をしなければ、ばれないのではないですか?
保険金の請求時に、保険会社は診療記録などを確認します。告知義務に反していたことが分かると、契約が解除され保険金が支払われないことがあります。保険料を払い続けたうえで、いざというときに受け取れないのが最も避けたい結果なので、ありのままを告知してください。
Q3引受条件を緩和した保険は、通常の保険と何が違いますか?
告知項目が少なく持病があっても加入しやすい一方、一般に保険料は通常の保険より高めに設定され、加入後一定期間は保障が減額されるなどの条件がつくことがあります。具体的な条件は商品によって異なるため、加入前に保障内容と保険料を通常の保険と比較して確認してください。
Q4過去に病気をしましたが、今は完治しています。告知は必要ですか?
告知書には「過去○年以内の入院・手術」「過去○か月以内の診察・投薬」のように期間を区切った質問があり、その期間内の事実は完治していても告知の対象です。期間を過ぎていれば告知対象外となる場合があります。質問文の期間と内容をそのまま読んで答えてください。
Q5国民健康保険だと、持病で休んだときの収入はどうなりますか?
国民健康保険の傷病手当金は法律上の任意給付で、通常の病気・ケガで支給している市区町村は原則ありません。医療費は高額療養費で上限がありますが、休んだ間の収入を補う公的制度は原則なく、貯蓄か民間の保障で備えることになります。
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 国民健康保険法 第58条(e-Gov法令検索)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(障害基礎年金 1級 1,059,125円・2級 847,300円(年額))
- 厚生労働省「令和5年 患者調査」(平均在院日数 総数28.4日、35〜64歳20.2日、精神及び行動の障害290.4日)
- 生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」(入院時の自己負担費用 平均18.7万円、逸失収入 平均27.3万円)
- フリーランス協会「フリーランス白書2026」(社会保険制度に不安68.2%、独立前に「障害年金の要件」を知らなかった75.3%)
本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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