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フリーランスの老後は国民年金だけでいくら足りない?上乗せの順番

公開 / 著者 中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社)

この記事の要点

  • 老齢基礎年金の満額は月70,608円(2026年4月分から)。会社員の厚生年金モデル世帯(夫婦2人)の月237,279円と比べると、夫婦ともフリーランスで満額でも月約9.6万円の差があります。
  • 足りない額は「老後の月の生活費-公的年金」×12か月×年数で出します。公的年金だけでは不十分と考える人は79.8%ですが、必要額は生活費と働く年数で人ごとに大きく変わります。
  • 上乗せは、税制優遇が大きく自由度の高い公的・準公的な制度から。付加年金・国民年金基金・iDeCo(月6.8万円、2026年12月1日から7.5万円)・小規模企業共済(月1,000〜70,000円・全額所得控除)を確認し、個人年金保険はそのあとに位置づけます。

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フリーランスの公的年金は、原則として国民年金(老齢基礎年金)だけです。会社員の厚生年金のような2階部分がないため、「老後は大丈夫なのか」という不安は、独立した人の多くが一度は抱きます。この記事では、2026年4月分からの年金額をもとに、会社員との差を数字で確認し、足りない額の出し方と、上乗せする制度の順番を整理します。

国民年金だけの老後はいくら?老齢基礎年金の満額と厚生年金との差

日本年金機構の案内によると、2026年4月分からの老齢基礎年金の満額は月70,608円です。これは20歳から60歳までの40年間、保険料をすべて納めた場合の額で、未納や免除の期間があれば減ります。

一方、会社員の年金は老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。同じ案内に示された厚生年金のモデル世帯(平均的な収入で40年間働いた夫と専業主婦の妻、2人分の基礎年金を含む)の年金額は月237,279円です。

条件をそろえるために、夫婦2人ともフリーランスで、2人とも満額の老齢基礎年金を受け取る場合を考えると、月141,216円。厚生年金のモデル世帯との差は月約9.6万円、年に直すと約115万円になります。老後が25年続けば、累計の差はおよそ2,900万円です。

会社員(厚生年金)フリーランス(国民年金)
年金の構造老齢基礎年金+老齢厚生年金(2階建て)老齢基礎年金のみ(1階だけ)
年金額の目安2026年4月分からモデル世帯 月237,279円満額で月70,608円(1人)
保険料の負担会社と折半・給与に比例定額・全額自己負担
上乗せの手段企業年金・企業型DC・iDeCoなど付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済など(自分で選んで加入)

この差は「フリーランスが損」という話ではなく、会社員は給与に比例した保険料を会社と折半で40年間払い続けた結果です。フリーランスは保険料が定額で安い分、2階部分を自分で用意する設計になっています。

老後に足りない額の出し方

生命保険文化センターの調査では、公的年金だけでは老後の生活費をまかなえないと考える人が79.8%にのぼります。ただ、「足りない」の中身は人によってまったく違います。計算は次の3段階です。

  • 1. 老後の月の生活費を決める。住居費(持ち家か賃貸か)が最大の分かれ目です。
  • 2. 公的年金の見込額を確認する。ねんきん定期便かねんきんネットで、現時点の見込みが分かります。会社員時代がある人は、その期間分の厚生年金も加算されます。
  • 3. (生活費-年金)×12か月×年数で不足額を出す。年数は、何歳まで働くかと、何歳まで生きると想定するかで決めます。

たとえば月の不足が5万円なら、25年間で1,500万円。月10万円なら3,000万円です。フリーランスは定年がないため、「何歳まで、どのくらいの収入で働くか」が不足額を大きく左右します。60代も一定の収入を続けられる見込みがあるなら、必要な積み立ては減ります。

不足額を出すときは、老後の支出から「現役中だけの支出」(子どもの教育費、事業の経費、積み立て自体)を外すのを忘れないでください。現役の生活費をそのまま老後にあてはめると、必要額が過大になります。

フリーランスが上乗せできる制度と順番

国民年金の上に積む制度は4つあります。いずれも掛金が所得控除の対象で、現役中の税負担を減らしながら積み立てられる点が、民間の保険や預金と違います。

付加年金

国民年金の保険料に少額の定額を上乗せして納め、納めた月数に応じて老齢基礎年金に加算される制度です。手続きは市区町村の窓口で、掛金は小さく仕組みも単純なため、最初に検討する人が多い制度です。国民年金基金に加入する人は付加年金には加入できません(基金に付加年金相当が含まれるため)。

国民年金基金

フリーランス・自営業者のための「2階部分」として設けられた制度です。加入時に将来の受取額が決まり、終身で受け取る型が基本で、掛金は全額が社会保険料控除になります。受取額が確定している安心感がある一方、途中で任意に脱退して掛金を引き出すことはできません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

自分で掛金を拠出し、自分で運用先を選ぶ制度です。掛金は全額所得控除、運用益は非課税で、受け取るときにも控除があります。フリーランス(第1号被保険者)の掛金上限は月6.8万円で、2026年12月1日から月7.5万円に引き上げられます。この上限は国民年金基金の掛金と合算です。受取額は運用成績で変わり、原則60歳まで引き出せません。

小規模企業共済

個人事業主や小規模企業の経営者のための「退職金」制度です。掛金は月1,000〜70,000円の範囲で選べ、全額が所得控除になります。事業をやめたときや65歳以降に共済金を受け取る仕組みで、掛金の範囲内で貸付を受けられる制度もあります。年金というより、廃業・引退時のまとまった資金として位置づけると分かりやすい制度です。

順番の考え方は、「確実に残る土台(付加年金または国民年金基金)」→「税制優遇を使い切る(iDeCo・小規模企業共済)」です。ただし、iDeCoと国民年金基金は原則60歳まで引き出せず、小規模企業共済も短期間での解約は元本を下回ることがあります。事業の運転資金や生活防衛資金を先に確保し、その上で、当面使わないと言い切れる額を積む順番が安全です。

個人年金保険の位置づけ

生命保険会社の個人年金保険は、一定期間保険料を払い込み、決めた年齢から年金形式で受け取る商品です。公的・準公的な制度と比べると、保険料は生命保険料控除の対象で(個人年金保険料税制適格特約の付いた契約は個人年金保険料控除)、所得税の控除上限は年4万円(2012年以降の新契約)です。上の4つの制度が掛金の全額を控除できるのに対し、控除の効き方は限られます。

そのため位置づけは、「税制優遇の大きい制度の枠を使ったうえで、まだ積みたい分」か、「受け取り方・払い方・途中の柔軟性の面で保険の形が合う場合」です。たとえば、iDeCoのように60歳まで引き出せないことに抵抗がある人、受取開始の年齢や期間を契約で固定しておきたい人には、個人年金保険の形が合うことがあります。逆に、控除の枠を使い切っていない段階で個人年金保険を先に選ぶ理由は、税の面では薄くなります。

老後の備えの前に確認しておくこと

老後の積み立てを始める前に、2つ確認しておくことがあります。

1つ目は、国民年金の保険料を未納のままにしていないかです。未納期間は老齢基礎年金を減らすだけでなく、障害年金・遺族年金の受給要件にも関わります。フリーランス協会の調査では、独立前に遺族基礎年金の受給要件を知らなかった人が74.8%でした。所得が少ない時期は免除・納付猶予を申請しておけば、受給資格期間に算入されます。

2つ目は、現役中に働けなくなるリスクへの備えが先ということです。病気やケガで収入が止まれば、老後のための積み立ても止まります。貯蓄が固定費の何か月分あるか、それを超えて働けなくなったときに毎月の収入をどう補うか(就業不能保険など)を先に決め、老後の積み立てはその上に置くのが順番です。

老後にいくら必要で、どの制度にいくら積むかは、現在の収入・固定費・貯蓄・家族構成・何歳まで働くかで変わります。相談では、その数字をもとに、必要な積み立ての額と、入る必要のない保険を仕分けします。

よくある質問

Q1国民年金だけで老後は生活できますか?

老齢基礎年金の満額は月70,608円(2026年4月分から)で、40年間すべて納めた場合の額です。未納や免除の期間があればその分減ります。これだけで生活費をまかなえるかは、住居費の有無や生活費の水準で変わりますが、公的年金だけでは不十分と考える人は調査で79.8%にのぼります。自分の場合は、ねんきん定期便で見込額を確認し、老後の月の生活費との差を出すところから始めます。

Q2国民年金基金とiDeCo、どちらを先に考えるべきですか?

性格が違います。国民年金基金は加入時に将来の受取額が決まり、終身で受け取れる型が基本です。iDeCoは自分で運用し、受取額は運用成績で変わりますが、受け取り方や掛金の変更の自由度が高い制度です。掛金の上限は2つを合算して月6.8万円(2026年12月1日から7.5万円)なので、両方に入るなら配分を決めることになります。確実な終身の土台を重視するか、運用で増やす余地を重視するかで順番が変わります。

Q3個人年金保険には入ったほうがいいですか?

付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済は、掛金が全額または大部分所得控除になる制度です。個人年金保険の保険料は生命保険料控除の対象(税制適格特約の付いた契約は個人年金保険料控除)で、所得税の控除上限は年4万円(2012年以降の新契約)です。まず控除の大きい制度の枠を使い、それでも足りない分や、受け取り方・払い方の面で保険の形が合う場合に検討する順番が合理的です。

Q4収入が少なくて国民年金の保険料を払えない時期があります。老後の年金はどうなりますか?

未納のままにすると、その期間分の老齢基礎年金が減り、障害年金・遺族年金の受給要件にも影響することがあります。所得が少ない場合は保険料の免除・納付猶予の制度があり、承認されれば受給資格期間に算入され、免除期間は一部が年金額に反映されます。手続きはお住まいの市区町村の窓口か年金事務所で行います。

Q5老後の備えと、働けなくなったときの備えは、どちらを先にすべきですか?

一般には、現役中に働けなくなるリスクへの備えが先です。働けなくなって収入が止まれば、老後のための積み立ても止まるからです。貯蓄が固定費の何か月分あるか、万一のとき家族に何が必要かを先に確認し、老後の積み立てはその上に置きます。

出典

本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。

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