個人事業主の保険料は経費?控除?確定申告での扱いを整理
この記事の要点
- 事業主本人の生命保険料(医療保険・就業不能保険・収入保障保険・個人年金保険など)は事業の必要経費にはならず、所得控除の「生命保険料控除」で差し引きます。経費と控除では税額への効き方が違います。
- 生命保険料控除は一般・介護医療・個人年金の3区分で、所得税の控除額は各区分の上限4万円・合計12万円(2012年以降の新契約)。国民健康保険料・国民年金保険料は社会保険料控除で全額、iDeCo・小規模企業共済の掛金は小規模企業共済等掛金控除で全額が対象です。
- 控除証明書は秋以降に保険会社などから届き、確定申告(翌年2月16日〜3月15日)で申告します。本記事は国税庁タックスアンサーに基づく一般的な説明です。個別の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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「個人事業主なら保険料は経費にできる」と聞いたことはないでしょうか。結論から言うと、事業主本人の生命保険料は経費にはなりません。ただし、確定申告で所得から差し引ける「控除」の対象にはなります。この記事では、経費と控除の違い、生命保険料控除の3区分と上限、国民健康保険料・国民年金保険料・iDeCo・小規模企業共済の扱い、控除証明書の時期と申告の手順を、国税庁タックスアンサーをもとに整理します。
個人事業主の保険料は経費になる?ならない?
所得税の必要経費は、売上原価や、収入を得るために直接かかった費用、販売費・一般管理費などの業務上の費用です(国税庁 No.2210)。家計と事業の両方にかかわる支出は、業務に直接必要だと明らかに区分できる部分だけが経費になります。
事業主本人の生命保険(医療保険・就業不能保険・収入保障保険・個人年金保険など)は、本人や家族の生活を守るための契約であり、事業に直接必要な費用とは扱われません。したがって帳簿の経費には入れず、所得控除の「生命保険料控除」で申告します。国民健康保険料や国民年金保険料も同じく経費ではなく、「社会保険料控除」の対象です。
「経費」と「控除」では、税額への効き方が違います。経費は所得そのものを減らすため、支出額の全部が所得から引かれます。生命保険料控除は、支払った保険料のうち計算式で決まった額(上限あり)だけが所得から引かれます。「保険料が全額戻ってくる」ものではなく、所得税率をかけた分だけ税が軽くなる、という理解が正確です。
生命保険料控除の3区分と上限(所得税)
生命保険料控除は、契約の種類によって3つの区分に分かれます(国税庁 No.1140・No.1141)。
- 一般生命保険料控除:死亡保障を中心とした契約。収入保障保険、終身保険、定期保険など。
- 介護医療保険料控除:入院・通院・介護などを給付の原因とする契約。医療保険、がん保険、介護保険など。就業できなくなったことを給付の原因とする契約も含まれ、就業不能保険はこの区分になる場合があります。
- 個人年金保険料控除:個人年金保険料税制適格特約の付いた個人年金保険。
2012年(平成24年)1月1日以後に結んだ「新契約」では、所得税の控除額は各区分で年間保険料8万円超のとき上限4万円、3区分の合計で上限12万円です。年間保険料が2万円以下ならその全額、2万円超〜8万円以下は段階的な計算式で控除額が決まります。
| 区分 | 所得税の控除上限(新契約) | |
|---|---|---|
| 収入保障保険・定期保険・終身保険 | 一般生命保険料控除 | 年4万円 |
| 医療保険・がん保険・介護保険 | 介護医療保険料控除 | 年4万円 |
| 就業不能保険 | 介護医療保険料控除になる場合あり(契約による) | 年4万円 |
| 個人年金保険(税制適格特約つき) | 個人年金保険料控除 | 年4万円 |
| 3区分の合計 | 年12万円 |
2011年(平成23年)12月31日以前の「旧契約」は、一般と個人年金の2区分で、計算式と上限(各5万円)が異なります。新旧両方の契約がある場合は、区分ごとに新・旧それぞれで計算して合算し、その区分の上限内で控除します。また、令和8年分(2026年分)以降は、23歳未満の扶養親族がいる場合に一般生命保険料(新契約)の控除上限が6万円になる改正があり、この場合も合計の上限は12万円のままです。
国民健康保険料・国民年金保険料は社会保険料控除で全額
フリーランスが毎年支払う国民健康保険料(国民健康保険税)と国民年金保険料は、社会保険料控除の対象です(国税庁 No.1130)。生命保険料控除と違って上限はなく、その年に実際に支払った全額が所得から差し引かれます。国民年金基金の掛金、介護保険料、後期高齢者医療制度の保険料も同じ区分です。
生計を一にする配偶者や子どもの国民年金保険料・国民健康保険料を本人が支払った場合、その分も本人の社会保険料控除に含められます。たとえば、学生の子どもの国民年金保険料を親が払っているケースです。
国民年金保険料と国民年金基金の掛金については、支払額を証明する書類(控除証明書)を確定申告書に添付するか、提出時に提示する必要があります。国民健康保険料は、市区町村から届く納付額のお知らせや納付書の控えで年間の支払額を確認して記入します。
iDeCo・小規模企業共済は小規模企業共済等掛金控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金と小規模企業共済の掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象で、その年に支払った全額が所得から差し引かれます(国税庁 No.1135)。こちらも証明書の添付または提示が必要で、iDeCoは国民年金基金連合会から、小規模企業共済は中小企業基盤整備機構から、それぞれ控除証明書が届きます。
生命保険料控除が「支払額の一部・上限あり」なのに対し、社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除は「支払額の全額」です。老後の積み立てを考えるとき、同じ1万円を積むなら控除の効き方が違う、という点は順番を決める材料になります。詳しくは老後の上乗せの順番のガイドで整理しています。
控除証明書が届く時期と確定申告の手順
確定申告の流れは次のとおりです。
- 秋〜年末:保険会社から「生命保険料控除証明書」が届きます。国民年金保険料の控除証明書は日本年金機構から、iDeCo・小規模企業共済の証明書もそれぞれの運営機関から届きます。電子データ(電子的控除証明書)で受け取れる場合もあります。
- 年明け:市区町村から国民健康保険料の年間納付額のお知らせが届く自治体が多く、届かない場合は納付書の控えや口座の引落し記録で集計します。
- 翌年2月16日〜3月15日:確定申告書の「所得から差し引かれる金額」欄に、社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除をそれぞれ記入し、証明書を添付または提示します(国税庁 No.2024)。e-Taxで申告する場合は、証明書の電子データを添付するか、記載内容を入力して原本を保管する方法があります。
生命保険料控除は、証明書に記載された区分(一般・介護医療・個人年金)と新旧の別ごとに、年間の支払保険料を合計してから計算式にあてはめます。確定申告書作成コーナーでは区分ごとの支払額を入力すれば控除額が自動で計算されます。
控除があることは、保険に入る理由にはならない
ここまで整理したとおり、保険料の控除は「所得の一部を差し引いて税を軽くする」仕組みで、保険料そのものが戻るわけではありません。生命保険料控除は各区分4万円が上限なので、年間保険料が8万円を超える部分には控除が効きません。「控除になるから」という理由だけで保険に入ると、必要以上の保険料を払うことになります。
順番としては、まず自分にどの備えが必要か(働けなくなったとき・万一のとき・老後)を決め、必要な保障を選び、そのうえで控除を正しく申告する、です。相談では、収入・固定費・貯蓄・家族構成から必要な保障の額と、やめてよい保険を仕分けします。税務上の個別の取り扱いは、税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問
Q1就業不能保険の保険料は、どの区分の控除になりますか?
契約内容によります。所得税法施行令では「就業することができなくなったこと」などを給付の原因とする契約が介護医療保険料控除の対象に含まれており、就業不能保険は介護医療保険料控除の対象になる場合があります。実際の区分は、保険会社から届く控除証明書に記載された区分で確認してください。
Q2医療保険の保険料は経費で落とせますか?
事業主本人の医療保険の保険料は必要経費にはなりません。所得控除の生命保険料控除(介護医療保険料控除)の対象で、所得税の控除額は年4万円が上限です(2012年以降の新契約)。
Q3家族の国民年金保険料を自分が払った場合も控除できますか?
できます。生計を一にする配偶者や親族が負担すべき国民年金保険料・国民健康保険料などを納税者本人が支払った場合、その分も本人の社会保険料控除の対象になります。国民年金保険料は、金額を証明する書類の添付または提示が必要です。
Q4青色申告と白色申告で、保険料の控除は違いますか?
違いません。生命保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除はいずれも所得控除で、青色・白色にかかわらず同じ計算です。青色申告で変わるのは青色申告特別控除などで、保険料の控除とは別の項目です。
Q5控除証明書をなくしてしまいました。
保険会社に再発行を依頼できます。多くの保険会社は契約者向けのウェブページから再発行を受け付けており、電子データ(電子的控除証明書)で受け取れる場合もあります。確定申告の期限までに間に合うよう、早めに手配してください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」(各区分の上限4万円・合計12万円、新契約と旧契約の区分)
- 国税庁 タックスアンサー No.1141「生命保険料控除の対象となる保険契約等」
- 国税庁 タックスアンサー No.1130「社会保険料控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」
- 国税庁 タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」(申告期間 2月16日〜3月15日)
本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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