副業で稼ぐ会社員の保険。傷病手当金は本業の給与だけが基準
この記事の要点
- 会社員の傷病手当金は本業の標準報酬月額が基準で、副業の収入は含まれません。副業収入で家計の固定費を組んでいると、その部分は病気やケガで休んだときに公的な補てんがありません。
- 副業が業務委託(事業所得・雑所得)なら、社会保険の二重加入は一般に生じません。会社の健康保険・厚生年金・団体保険はすべて本業の給与を基準に設計されています。
- 副業部分の備えは「副業収入のうち固定費に充てている額×貯蓄が尽きるまでの期間」で考えます。独立を検討しているなら、独立後は本業分の傷病手当金もなくなることを前提に、早めに全体を設計し直します。
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「副業 保険」で調べる人の多くが気にしているのは、社会保険に二重で入ることになるのか、会社に知られるのか、という点です。先に短く答えると、副業の報酬が給与でなく業務委託などの報酬(事業所得・雑所得)であれば、社会保険の加入は本業の勤務先のみで、二重加入は一般に生じません。会社に知られるかどうかは主に住民税の徴収方法の問題で、社会保険とは別の話です。詳細は年金事務所や税理士にご確認ください。この記事で扱うのはその先の、見落とされやすい問題です。会社員の傷病手当金は本業の給与だけが基準で、副業収入は守られていません。総務省の調査では、副業としてフリーランスの仕事をしている人は48万人。副業収入で家計を組んでいる人ほど、この穴は大きくなります。
傷病手当金は本業の標準報酬月額が基準:副業収入は含まれない
会社員が業務外の病気やケガで働けなくなると、健康保険から傷病手当金が支給されます。金額は標準報酬日額の約3分の2で、期間は同じ病気・ケガについて通算1年6か月です。この「標準報酬」は、本業の勤務先が健康保険に届け出ている給与をもとに決まります。
副業の収入は、この標準報酬にまったく反映されません。業務委託の報酬はもちろん、副業先で給与を受けていても、本業の健康保険にしか加入していなければ計算の基礎は本業の給与だけです。つまり、本業の月給30万円と副業の月10万円で生活している人が3か月休むと、傷病手当金は月給30万円の約3分の2をもとに計算され、副業の10万円分は何も補てんされません。
| 本業の給与 | 副業の収入 | |
|---|---|---|
| 傷病手当金病気・ケガで休んだとき | 標準報酬日額の約2/3・通算1年6か月 | 対象外計算の基礎に含まれない |
| 遺族厚生年金・障害厚生年金 | 本業の報酬に比例して計算 | 反映されない |
| 会社の団体保険・福利厚生 | 本業の給与・勤続を基準に設計 | 対象外 |
| 高額療養費医療費の自己負担上限 | あり | あり(本業の健康保険で適用) |
治療費については本業の健康保険の高額療養費が使えるので、副業をしていても差はありません。差が出るのは「休んでいる間の収入」の、副業にあたる部分です。
副業収入で固定費を組んでいる場合の穴の大きさ
副業収入の使い道によって、穴の大きさはまったく違います。
- 副業収入を貯蓄や余裕資金に回している:働けなくなっても固定費は本業の傷病手当金と貯蓄で賄えます。穴は小さく、備えの優先度は低めです。
- 副業収入で固定費の一部を払っている:住宅ローンの繰り上げ分、家賃の差額、子どもの習い事などを副業収入で払っている場合、働けなくなるとその支出が続くのに収入だけが消えます。この額が穴です。
- 副業収入が本業と同程度かそれ以上:傷病手当金が本業分しか出ないため、家計の半分以上が無補てんになります。フリーランスに近い状態で、備え方もフリーランスに近づけます。
生命保険文化センターの調査では、直近の入院で収入が減った人は18.3%、その逸失収入は平均27.3万円でした。副業をしている会社員は、本業分の傷病手当金があっても、副業分はそのまま減収になります。
副業が事業所得でも雑所得でも、公的な補てんは同じ
副業の所得区分(事業所得か雑所得か)は、税務上の扱いには影響しますが、傷病手当金や厚生年金の計算には関係ありません。どちらであっても、副業の収入は本業の健康保険・厚生年金の標準報酬に含まれず、働けなくなったときの公的な補てんはありません。
また、副業の報酬が給与でなければ、副業について国民健康保険や国民年金に別途加入することもありません。本業の社会保険に加入していれば、それで完結します。副業が業務委託の場合、雇用保険の被保険者は「雇用される労働者」なので、副業部分は雇用保険の対象にもなりません。
副業が事業所得で青色申告をしていても、事業主本人のための生命保険料は経費にはならず、生命保険料控除(各区分の上限4万円・合計12万円)の対象です。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
会社の団体保険・福利厚生でカバーされる範囲
会社員には、公的制度のほかに勤務先の福利厚生があります。団体保険(団体定期保険など)、休職制度、見舞金などです。これらが副業収入をカバーするかを確認しておきます。
- 団体保険の保障額は本業の給与基準:保障額が「給与の何か月分」「標準報酬の何割」のように決まっている場合、副業収入は反映されません。
- 休職制度は本業の雇用を守るもの:休職中の給与の扱いは会社によって異なりますが、いずれも本業の給与の話です。副業の契約が止まることを守る制度ではありません。
- 副業規程との関係:副業を会社に届け出ていない場合、福利厚生の利用場面で副業の存在が問題になる可能性があります。就業規則の副業規程を先に確認します。
勤務先の制度がどこまで手厚いかは会社ごとに大きく違います。就業規則と団体保険の案内で、休職中の給与と団体保険の保障額を確認すると、本業部分の穴の大きさがわかります。そのうえで副業部分を考えます。
副業部分の備えの考え方
副業部分の備えは、次の順番で決めます。
- 穴の額を出す:副業収入のうち固定費に充てている額(毎月)。
- 貯蓄で持つ期間を出す:貯蓄÷(固定費 − 本業の傷病手当金)で、働けなくなってから何か月持つかを計算します。本業分の傷病手当金があるので、フリーランスより長く持つのが普通です。
- 超える部分を保険で備えるか決める:貯蓄で持つ期間を超えて働けなくなったときに毎月受け取る保障(就業不能保険など)を、穴の額を目安に検討します。貯蓄が十分なら保険は不要です。
副業をしている会社員の多くは、本業の傷病手当金と貯蓄で数か月から1年程度は持つため、保険が必要になるのは「副業収入が家計の大きな割合を占めている」か「貯蓄が少ない」場合に限られます。副業収入がまだ小さいうちは、保険よりも副業収入をそのまま貯蓄に回して、持つ期間を伸ばすほうが合理的です。
家族がいる場合
扶養する家族がいて、副業収入が家計の固定費の一部になっている場合は、自分が亡くなったときの備え(収入保障保険など)の必要額にも副業分を含めて考えます。遺族厚生年金は本業の報酬をもとに計算され、副業分は反映されないためです。
独立を検討している人へ:副業の今が設計し直す時期
副業を足がかりに独立を考えている人にとって、今の状態は「本業分だけ公的制度に守られている」中間地点です。独立すると、本業分の傷病手当金もなくなります。国民健康保険の傷病手当金は法律上の任意給付で、通常の病気・ケガを対象に支給している市区町村は原則ありません。フリーランス白書2026では、独立前にこのことを知らなかった人が48.0%にのぼります。
独立後は、厚生年金による遺族厚生年金・障害厚生年金もなくなり、健康保険は国民健康保険・任意継続・国保組合のいずれかを選ぶことになります。副業をしている今のうちに、次の3つを確認しておくと、独立時に慌てずに済みます。
- 毎月の固定費と、独立後に見込む収入の幅
- 貯蓄が固定費の何か月分あるか(独立後は傷病手当金がないので、この期間がそのまま備えの期間になります)
- 会社の団体保険でカバーされていた保障のうち、独立後も必要なもの
会社員のうちに加入した保険は、独立後にそのまま続けるか見直すかを含めて、全体を設計し直す対象です。詳しくは「フリーランスの健康保険はどれ?」「働けなくなったら収入はどうなる?」のガイドをご覧ください。
副業の収入は、公的制度の外にあります。それが問題になるかどうかは、副業収入が家計のどこに使われているか、貯蓄が何か月分あるか、家族がいるかで決まります。相談では、本業の給与・副業収入・固定費・貯蓄・家族構成から、副業部分の穴の大きさと、備えが必要な額、入らなくてよい保険を仕分けします。独立を検討している方は、独立後の設計もあわせてお伝えします。
よくある質問
Q1副業をすると社会保険に二重で加入することになりますか?
副業の報酬が給与でなければ(業務委託などで事業所得・雑所得になる場合)、社会保険の加入は本業の勤務先のみで、二重加入は生じないのが一般的です。副業先でも雇用されて給与を受け、その勤務先でも加入要件を満たす場合は、複数の事業所で加入する手続きが必要になることがあります。個別の判断は年金事務所や加入先の健康保険にご確認ください。
Q2副業で病気になって休んだら、傷病手当金は副業分も出ますか?
出ません。傷病手当金は本業の健康保険から、本業の標準報酬月額をもとに計算して支給されます。副業の収入は計算に入らず、副業が止まった分の収入減はそのまま家計の穴になります。
Q3傷病手当金を受け取っている間に副業の仕事を続けてもいいですか?
傷病手当金は「働けない状態」であることが支給の要件です。療養中に副業の仕事を続けていると、働ける状態とみなされて支給に影響する場合があります。加入している健康保険に事前にご確認ください。
Q4副業の収入が増えてきました。保険はいつ見直すべきですか?
目安は「副業収入がなくなると固定費が払えなくなる」ようになったときです。副業収入を貯蓄や余裕資金に充てているうちは、公的な補てんがなくても家計は回ります。固定費の一部を副業収入で払うようになったら、その額が働けなくなったときの穴になるので見直しのタイミングです。
Q5副業の保険料は経費になりますか?
事業主本人のための生命保険料は、副業が事業所得でも経費にはならず、生命保険料控除の対象です。控除の上限や区分については国税庁の情報を確認のうえ、税務署または税理士にご確認ください。
出典
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 総務省「令和4年就業構造基本調査」結果の概要(副業としてフリーランスの仕事をしている人48万人)
- 国民健康保険法 第58条(e-Gov法令検索)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(遺族厚生年金・障害厚生年金の有無)
- 生命保険文化センター「2025年度 生活保障に関する調査」(逸失収入あり18.3%・平均27.3万円)
- フリーランス協会「フリーランス白書2026」(独立前に「傷病手当金が出ない」ことを知らなかった48.0%)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」
本記事は公的制度の一般的な説明であり、特定の保険商品の内容を説明したものではありません。制度の詳細はお住まいの市区町村・加入先により異なります。税務上の取り扱いは税務署または税理士にご確認ください。
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