サイバーセキュリティ保険は本当に必要?中小企業の被害実態と加入率をデータで徹底解説
「うちのような会社が狙われるはずがない」。そう考える中小企業ほど、いま被害が集中しています。公的機関の最新統計が示す実態と、サイバーセキュリティ保険でどこまで備えられるのかをまとめました。
中小企業こそサイバーセキュリティ保険が必要とされる理由
サイバー攻撃の被害はいま、大企業ではなく中小企業に集中し、なおかつ増え続けています。にもかかわらず、備えとしてのサイバーセキュリティ保険はほとんど普及していません。このリスクと備えのギャップこそ、多くの中小企業が抱える最大の弱点です。
実際、ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する不正プログラム)の被害の約6割は中小企業が占めています。2025年の被害報告226件のうち143件が中小企業で、対策が手薄な中小企業が狙われる構図が続いています(出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年3月)。
それでも、中小企業のサイバー保険加入率はわずか8.8%にとどまります。火災保険の加入率58.6%と比べると、その低さは際立ちます。そもそもサイバーリスクを事業上のリスクとして認識している中小企業自体が32.7%にとどまり、リスクの認識も備えも追いついていないのが実情です(出典:日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」2025年12月)。
本ページでは、公的機関の統計をもとに、なぜ中小企業のサイバーセキュリティ保険の必要性が高いのかを順に見ていきます。そのうえで、実際にどこまで備えられるのか、必要性が特に高い企業の特徴もあわせてご紹介します。
統計で見るサイバー攻撃の現状
サイバー攻撃、とりわけランサムウェアの被害は、規模の小さな企業ほど深刻になっています。
ランサムウェア被害の約6割を中小企業が占めています。警察庁への2025年のランサムウェア被害報告件数は226件(うち中小企業143件)でしたが、これは「報告があったもの」に限られ、実際の被害はさらに多いと考えられます(出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年3月)。
攻撃の入り口も明確です。感染経路の8割以上がVPN機器・リモートデスクトップ経由でした。テレワークや拠点間接続のために導入した機器が、そのまま攻撃の通り道になっているのです。高度なハッキングというより、外から届く入口の隙を突かれるケースが大半だといえます(出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年3月)。
攻撃の傾向は専門機関の脅威ランキングにも表れています。IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの1位が「ランサム攻撃による被害」で、これは11年連続の顔ぶれです。2位には「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が入り、8年連続でランクインしています(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」2026年1月)。
被害の割合そのものも上昇しています。何らかの事故・被害を経験した中小企業のうち、サイバーリスクによる被害を挙げた企業は16.8%と、2021年調査の5.8%から3倍近くに増えています。まれな事故から、起こりうる事故へと位置づけが変わってきています(出典:日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」2025年12月)。
「うちは狙われない」が通用しない理由
「規模が小さいから狙われない」という考え方は、いまや当てはまりません。理由は、攻撃者の狙いが「あなたの会社そのもの」ではなく「あなたの会社を経由した先」にあるからです。
前述のとおり、専門機関の脅威ランキングでは「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が組織向け2位に入り、8年連続でランクインしています(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」2026年1月)。サプライチェーン攻撃とは、セキュリティ対策が比較的手薄な中小企業を踏み台にして、その取引先である大手企業へと侵入していく手口です。攻撃者にとって、守りの堅い大手を正面から狙うより、つながりのある中小企業から入るほうが容易なのです。
この構図が意味するのは、中小企業が「被害者」であると同時に「加害側」にもなりうるということです。自社がマルウェアに感染し、それが取引先へ広がれば、取引先の業務停止や情報漏えいの引き金を引いてしまうおそれがあります。実際、サイバー攻撃被害を受けた中小企業の約7割で、取引先など他社にも影響が及びました(出典:IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」2025年5月・経済産業省 2025年2月19日発表)。
取引先に迷惑をかければ、事後の対応費用や賠償だけでなく、その後の取引関係にも影響しかねません。「自社の被害額」だけでリスクを見積もると、備えが大きく不足してしまうのはこのためです。備えられる範囲は補償内容のページで整理しています。
被害にあうといくらかかるのか
では、実際に被害にあうと、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。近年の調査では、その金額は「中小企業でも十分に経営を揺るがす水準」まで上がっています。
ランサムウェア被害の直近2年の被害金額は、平均6,019万円・中央値3,800万円と報告されています(出典:JNSA「インシデント損害額調査レポート 別紙『被害組織調査』第2版」2025年7月)。さらに、調査・復旧費用に1,000万円以上を要した組織は5割を超え(51.7%)、1か月未満で復旧できた組織は5割強にとどまるなど、長期の業務停止も珍しくありません(出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年3月)。
費用の内訳について、JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)が公表している費用の目安と、実際の被害事例を挙げると次のとおりです。金額はケースにより大きく異なります。
| 費用の種類 | 金額の目安・実例 | 出典 |
|---|---|---|
| 初動対応・フォレンジック調査(PC・サーバー数台程度の調査) | 概ね300〜400万円 | JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」2021年 |
| コールセンターの委託 | 1か月あたり概ね120〜200万円(3か月対応の場合600〜1,000万円程度) | 同上 |
| お詫び状・見舞品の送付(モデルケース:ECサイトから個人情報1万件が漏えい) | 650万円 | 同上 |
| システム復旧費用(実例:従業員20〜999名の製造業。VPN機器から侵入されサーバー複数台が感染) | 4,000万円 | JNSA「インシデント損害額調査レポート 別紙『被害組織調査』第2版」2025年7月 |
上記は目安・一例であり、実際の費用は被害の規模・内容によって大きく変わります。いずれも「事故が起きてから」発生する費用で、事前の予算取りが難しいのが実情です。
そして、最も注意したいのが「身代金を払えば解決する」という誤解です。調査では、暗号化されたデータを復旧できた組織は73%でしたが、その多くはバックアップからの復旧で、身代金を支払ったと回答した組織は存在しませんでした(出典:JNSA「インシデント損害額調査レポート 別紙『被害組織調査』第2版」2025年7月)。支払っても戻る保証はなく、頼れるのは日頃のバックアップと、事故対応の体制・費用への備えです。実際の被害の流れは事故事例のページもあわせてご覧ください。
サイバーセキュリティ保険でどこまで備えられるか
ここまで見てきた「賠償」と「費用」のリスクに、まとめて備える手段のひとつがサイバーセキュリティ保険です。あいおいニッセイ同和損保の「サイバーセキュリティ保険」を例に、備えられる範囲の概要を整理します。
基本となるのは、大きく2つの区分です。ひとつは賠償損害:情報漏えいなどで他人に損害を与えた場合の、法律上の損害賠償金や争訟費用などです。もうひとつは費用損害:事故原因の調査費用、コンピュータシステム・データの復旧費用、見舞金、謝罪広告費用、コールセンター設置費用など、事故対応そのものにかかる費用です。前章で見た事故後にかかる費用に対応するものだとお考えください。
さらにオプションの特約として、事業が止まったことによる喪失利益や営業継続費用に備える利益損害補償特約、不正送金やビジネスメール詐欺(取引先や役員になりすまして送金させる詐欺)などに備える資金損害補償特約もあります。どの特約をどのプランにセットできるかなど詳細は、パンフレットおよび「重要事項のご説明 契約概要のご説明・注意喚起情報のご説明」でご確認ください。
なお、保険はあらゆる損害を無条件に補償するものではありません。補償の対象となるかどうかは、ご契約のプランおよび普通保険約款・特約集の内容によります。たとえば、攻撃者へ支払う身代金(ランサム支払い)そのものは補償の対象外です。保険が担うのは、事故対応にかかる正当な費用や、他者に与えた損害への賠償といった部分だとお考えください。補償区分ごとの詳しい内容は補償内容のページにまとめています。
サイバーセキュリティ保険の必要性が特に高い企業
すべての企業にリスクはありますが、なかでも次の特徴に当てはまる場合、サイバーセキュリティ保険の必要性はとりわけ高いといえます。ひとつでも該当すれば、備えを前向きに検討する価値があります。
- 顧客の個人情報を保有している:会員名簿・顧客データ・従業員情報などを扱っている。漏えい時の対応費用や賠償リスクが大きくなります。
- ECサイト・ネット通販を運営している:決済情報やアカウントを扱い、常時オンラインでさらされているため、標的になりやすい環境です。
- VPN機器・リモートワークを導入している:前述のとおり、感染経路の8割以上がVPN機器・リモートデスクトップ経由です。利便性が、そのまま入口の増加につながります。
- 大手企業や官公庁と取引している:サプライチェーン攻撃の踏み台として狙われやすく、取引先への影響(賠償)リスクも抱えます。
- IT・情シス担当が少人数、または兼任である:検知・初動対応が遅れがちで、被害が拡大しやすい体制です。事故対応サービスの支援が特に有効です。
- 業務がシステム・データに大きく依存している:システムが止まると事業も止まる場合、業務停止による損失が甚大になります。
これらは特別な業種に限った話ではありません。いまや多くの中小企業が、いずれかに当てはまるはずです。ちなみに、非加入の中小企業のうち24.0%が今後サイバー保険に「加入したい」と回答しており、これは業務災害補償保険に次ぐ2位でした。関心そのものは着実に高まっています(出典:日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」2025年12月)。
被害は中小企業に集中し、費用は年々高額化しています。しかも身代金を払っても解決しません。とはいえ、いきなり契約を決める必要はありません。まずは自社のリスクがどの程度か、どの補償が自社に合うかを知ることが出発点です。必要な備えは業種・売上高・体制により異なり、保険料もそれらにより異なるため、お見積もりでご確認いただくのが確実です。加入の進め方は加入方法のページ、ご不明な点はよくある質問もご参照ください。資料請求・お見積もりフォームから、お気軽にお問合わせください。
まずは自社のリスクを知ることから
資料請求だけでもお気軽に。業種や規模をお知らせいただければ、担当者が具体的なリスクと備え方をご案内します。
お電話でのお問合わせ:050-1725-4773(受付時間 平日9:00〜19:00)