Coverage & Exclusions
D&O保険の補償内容と「補償されないケース」
D&O保険の補償は「法律上の損害賠償金」と「争訟費用」の2本柱です。一方で、どんな請求でも補償されるわけではありません。補償の中身と対象者の範囲、そして免責事由まで、契約前に押さえておくべき枠組みを一般的な商品内容に沿って整理します。
補償の2本柱 — 賠償金と争訟費用
D&O保険は、役員が職務の遂行に起因して損害賠償請求を受けた場合に、①判決・和解などにより役員が負担する法律上の損害賠償金と、②応訴のための弁護士費用などの争訟費用を補償します。 役員への請求は、最終的に責任が認められなかった場合でも、争うこと自体に多額の費用と長い時間がかかります。「負けたときの賠償金」だけでなく「争うための費用」を賄えることが、D&O保険の実務上の大きな価値です。
| 補償項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律上の損害賠償金 | 役員個人が損害賠償請求を受け、判決や和解により法律上負担することとなった賠償金・和解金。株主代表訴訟で会社への賠償を命じられた場合も、契約条件に応じて補償の対象となります。 |
| 争訟費用 | 損害賠償請求に対応するための弁護士報酬、訴訟費用などの費用。請求に理由がなく最終的に責任を負わなかった場合でも、応訴のための費用は現実に発生するため、実務上はこの補償が使われる場面が多くあります。 |
| その他の費用(商品による) | 商品や特約によっては、危機管理対応の費用、調査対応の費用などが補償に含まれる場合があります。範囲は商品ごとに異なるため、お見積もり時の資料でご確認ください。 |
補償項目の名称・範囲は引受保険会社・商品によって異なります。上表は一般的な枠組みの説明です。
誰が補償の対象になるのか
被保険者の基本は会社の役員ですが、契約によって範囲を広げられる場合があります。「誰が守られていて、誰が守られていないか」は、契約時に必ず確認すべきポイントです。
- 取締役・監査役等の役員:被保険者の基本。原則として、契約時の役員だけでなく、保険期間中に新任・退任した役員も対象に含まれる設計が一般的です
- 執行役員・管理職従業員:契約や特約により対象に含められる場合があります。管理職が労務トラブルなどで個人責任を問われる場面への備えです
- 子会社の役員:契約により対象に含められる場合があります。グループ経営では、親会社の契約でどの範囲の子会社役員までカバーされているかの確認が重要です
- 役員の相続人など:役員が死亡した後にその責任が追及された場合、相続人等が受けた請求を対象とする設計が一般的です
補償されない主なケース(免責事由)
D&O保険は、役員のどんな行為でも守る保険ではありません。以下のような場合は補償の対象外とされるのが一般的です。免責事由を理解しておくことは、加入の判断そのものと同じくらい重要です。
Criminal / Fraudulent Acts
犯罪行為・不正行為に起因する請求
役員の犯罪行為や、法令に違反することを認識しながら行った行為に起因する損害賠償請求は、補償の対象外とされるのが一般的です。D&O保険は誠実に職務を行った役員を守る保険であり、故意の不正までは守りません。
Personal Profit
違法に得た私的な利益に関する請求
役員が違法に私的な利益や便宜の供与を得たことに起因する請求は、補償の対象外とされるのが一般的です。
Prior Claims
保険期間の開始前からの請求・係争
保険期間の開始前にすでになされていた請求や、開始前から係争中だった事案に起因する請求は対象外とされるのが一般的です。D&O保険は「請求がなされた時点」を基準とする契約(クレームズメイド方式)が基本のため、リスクが顕在化してからの加入では間に合いません。
Other Exclusions
その他の免責事由
身体の障害や財物の損壊に関する賠償責任(他の賠償責任保険の領域)、罰金・課徴金など、商品ごとに定められた免責事由があります。免責の範囲は約款で個別に定められているため、契約前の確認が欠かせません。
免責事由の具体的な範囲・文言は引受保険会社・商品により異なります。上記は一般的な例示であり、実際の取り扱いはご契約の約款によります。
会社補償・責任限定契約との違い
役員のリスクに備える仕組みはD&O保険だけではありませんが、それぞれ守れる範囲が異なります。組み合わせて使われることも多く、違いを知っておくと設計の議論がしやすくなります。
| 仕組み | 概要 | 限界・注意点 |
|---|---|---|
| D&O保険 (会社法430条の3) | 引受保険会社が役員の賠償金・争訟費用を補償する。会社の資力に依存しない。 | 免責事由があり、支払限度額の範囲内での補償となる。内容の決定には取締役会の決議等が必要。 |
| 会社補償契約 (会社法430条の2) | 会社が役員の防御費用や賠償金の一部を補償する契約。 | 会社に資力がなければ機能しない。会社自身が役員を訴える場面(会社訴訟・代表訴訟)では構造的に使いにくい。 |
| 責任限定契約 (会社法427条) | 非業務執行役員等について、会社に対する責任の上限をあらかじめ定める契約。 | 対象は非業務執行役員等に限られ、第三者からの請求には効果が及ばない。 |
会社が倒産した局面や、会社自身が請求者となる局面では、会社補償は頼れません。会社の資力から独立した備えという点が、D&O保険の固有の役割です。
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本ページはD&O保険(会社役員賠償責任保険)の一般的な補償の枠組みを説明したものであり、特定の保険商品の内容のすべてを記載したものではありません。補償の内容・免責事由・引受の可否は商品や契約条件により異なります。詳細はお見積もり時にお渡しする資料およびご契約のしおり・約款をご確認ください。引受保険会社:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社/取扱代理店:那由他保険テクノロジーズ株式会社