Case Studies

役員個人が訴えられた事例・判例

「役員個人が賠償を命じられる」は、教科書の中の話ではありません。公表されている裁判例から、役員責任が現実に問われた著名な事案を類型別に紹介します。いずれも、D&O保険を検討するうえでの前提となる事実です。

誰もいない役員会議室。長机と革張りの椅子に窓から斜光が差し込んでいる
Fig.01 The Boardroom — 経営判断が問われる場所
Case 01 — Derivative Suit

株主代表訴訟 — 管理体制の不備が個人責任に

大阪地裁判決・平成12年9月20日。 米国ニューヨーク支店の行員による約11億ドルの巨額損失事件をめぐり、株主が旧経営陣らの責任を追及した株主代表訴訟です。第一審判決は、リスク管理体制(内部統制システム)の構築義務違反などを理由に、取締役らに総額約7億7,500万ドル(当時の邦貨換算で約829億円)という巨額の賠償を命じ、社会に衝撃を与えました(事件はその後、控訴審の係属中に和解で終結しています)。

  • 問われたこと:不正そのものではなく、不正を防ぎ発見するための管理体制を整えていたか、という経営陣の注意義務
  • この事案が示すもの:自ら不正をしていない役員でも、体制の不備を理由に個人責任を問われ得ること。そして請求額は、会社に生じた損害の規模しだいで青天井になり得ること
  • D&O保険の観点:この事件は日本でD&O保険が広く注目される契機になったといわれています。誠実に職務を行っていても訴えられる可能性がある以上、争訟費用を含めた備えが必要になります
Case 02 — Claim by the Company

会社・株主からの責任追及 — 約583億円の賠償が確定した事案

最高裁判決・平成18年4月10日ほか。 大株主から脅迫的な要求を受けた経営陣が、警察に届け出るなどの対応をとらずに巨額の資金を提供するなどした事案について、最高裁は取締役らの善管注意義務違反を認める判断を示しました。差戻し後の審理を経て、元役員らに約583億円という極めて高額の賠償責任が確定したことで知られています。

  • 問われたこと:反社会的な要求への対応という、極限状況での経営判断の適否
  • この事案が示すもの:確定した賠償額が個人の支払能力をはるかに超える規模になり得ること。役員責任は連帯責任であり、複数の役員が同時に巨額の債務を負うこと
  • D&O保険の観点:支払限度額を検討する際、「役員全員で分け合う総枠である」ことを踏まえる必要があります。詳しくは保険料の考え方で解説しています
Case 03 — Employee Claims

従業員側からの請求 — 過労死で取締役個人の責任を認めた事案

大阪高裁判決・平成23年5月25日。 入社数か月の従業員が長時間労働の末に急性心不全で死亡した事案で、遺族が会社とともに取締役ら個人を訴えました。裁判所は、労働時間の管理体制を整えるべき義務を怠ったとして、会社だけでなく取締役ら個人にも連帯して約7,860万円の損害賠償を命じ、この判断は最高裁で確定しています。

  • 問われたこと:従業員の生命・健康を守る労務管理体制を構築する、取締役としての義務
  • この事案が示すもの:労務問題は「会社の問題」で終わらず、役員個人の賠償責任に直結し得ること。上場・非上場を問わず、従業員を雇用するすべての会社に共通するリスクであること
  • D&O保険の観点:ハラスメントや長時間労働をめぐる請求は、中小企業の役員にとって最も身近なリスクのひとつです。管理職従業員まで対象を広げる設計も含め、検討の価値があります
Case 04 — Insolvency

倒産局面 — 破産管財人・債権者からの責任追及

会社が倒産しても、役員個人への責任追及は終わりません。 会社が破産すると、破産管財人には旧経営陣の責任を調査する職責があり、放漫経営や財産の流出について役員の任務懈怠責任を追及する訴訟が現実に提起されています。また、回収不能となった債権者が、会社法429条に基づいて役員個人に賠償を求める類型も、中小企業をめぐる裁判例で繰り返し現れる典型例です。

  • この類型が示すもの:会社に資力がなくなったときこそ、請求は役員個人の財産に向かうこと。退任後・会社消滅後にも請求は起こり得ること
  • D&O保険の観点:会社が役員を守る「会社補償」は、会社に資力がなければ機能しません。会社の資力から独立した備えであることが、D&O保険の固有の価値です。補償内容と免責もあわせてご確認ください
Takeaway

事例から読み取れる3つの共通点

  • 「自分は不正をしない」では防げない。問われるのは不正そのものより、体制の不備や判断の適否です。誠実な役員でも訴えられます。
  • 請求額に上限はない。会社に生じた損害の規模しだいで、個人の支払能力を超える請求が現実に起きています。
  • 争うだけでも費用がかかる。責任が認められなかった場合でも、長期の訴訟には多額の弁護士費用がかかります。争訟費用の補償は、それ自体が備えです。

事例を「自社の話」に引き直してみませんか

会社の規模・業種・株主構成をうかがえば、どの類型のリスクが大きいかを整理してお伝えできます。そのうえで、D&O保険のお見積もりと設計の考え方をご提示します。ご相談・お見積もりは無料です。

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本ページで紹介した事例は、公表されている裁判例に基づく事案の要旨であり、事実関係・判断の詳細は各判決文によります。金額は判決等で示された概数です。本ページはD&O保険(会社役員賠償責任保険)の一般的な仕組みを説明するものであり、特定の保険商品の内容のすべてを記載したものではありません。詳細はお見積もり時にお渡しする資料およびご契約のしおり・約款をご確認ください。引受保険会社:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社/取扱代理店:那由他保険テクノロジーズ株式会社

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