業務災害補償保険(労災上乗せ保険)とは
業務災害補償保険(労災上乗せ保険)とは、従業員が業務上のケガや病気を被ったときに、政府労災(労災保険)の給付に上乗せして保険金を支払う、民間の任意保険です。 「任意労災」「労働災害総合保険」などの名前でも呼ばれます。従業員への補償だけでなく、会社が従業員などから損害賠償請求を受けたときの賠償金・訴訟費用への備え(使用者賠償責任の補償)まで、1つの契約でまとめてカバーできるのが特徴です。
- 従業員を守る「上乗せ補償」:死亡・後遺障害・入院・通院・休業などに対し、政府労災とは別に、契約で定めた保険金を支払います。福利厚生・災害補償規定の裏付けとして機能します
- 会社を守る「賠償への備え」:労災事故について会社が安全配慮義務違反などを問われた場合の損害賠償金・訴訟費用を補償します(使用者賠償責任の補償)。特約でパワハラ・セクハラ・不当解雇など雇用トラブルの賠償までカバーできる商品もあります
- 1証券でまとめて設計:従業員への補償と会社の賠償リスクを別々の保険に分けず、業種・規模に合わせて1つの契約に組み合わせるのが一般的です
労災は「現場の事故」だけではなくなっています
休業4日以上の死傷者は年間13万人を超え、その半数以上は建設業でも製造業でもない第三次産業で起きています。さらに近年は、精神障害の労災支給決定が2年連続で年間1,000件を超えています。どの業種にとっても、他人事ではない数字です(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」「令和7年度 過労死等の労災補償状況」)。
Casualties
135,333人
労働災害による死傷者数(休業4日以上、令和7年・確定値)。前年比385人減とほぼ横ばいで、13万人台の高止まりが続いています。
出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」
Tertiary Industry
53.1%
死傷者数に占める第三次産業(小売・介護・飲食など)の割合。転倒や腰痛など、オフィスや店舗でも労災は起きています。
出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(第三次産業 71,878人/135,333人)
Mental Disorders
1,082件
精神障害の労災支給決定件数(令和7年度)。2年連続で1,000件を超え、原因別ではパワーハラスメント(222件)が最多です。
出典:厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」
政府労災だけでは足りない3つの理由
従業員が労災にあったとき、政府労災(労災保険)から給付はあります。それでも多くの会社が上乗せの保険に入るのは、政府労災でカバーされない部分がはっきりしているからです。
No Solatium
慰謝料や賠償金は、政府労災からは出ない
政府労災の給付は、治療費や休業補償など法律で定められた範囲に限られます。遺族や本人への慰謝料、給付を超える逸失利益は対象外です。会社に安全配慮義務違反(労働契約法5条)があれば、この差額はそのまま会社への損害賠償請求になります。労災訴訟では、政府労災の給付を差し引いてもなお数千万円から1億円を超える賠償が命じられた事案が公表されています。
80% Cap
休業補償は給付基礎日額の8割まで
政府労災の休業(補償)給付は、給付基礎日額の6割に特別支給金の2割を加えた計8割が上限です。残業代や賞与への影響も考えると、被災した従業員の生活水準は下がりやすく、その不足分の補填を会社が災害補償規定などで約束しているケースは少なくありません。上乗せ保険は、その支払い原資になります。
New Types of Claims
過重労働・メンタル不調・ハラスメントという「新しい労災」
精神障害の労災請求は令和7年度に4,958件(前年度比1,178件増)へ急増し、支給決定も2年連続で年間1,000件を超えました。長時間労働やハラスメントに起因する請求は、現場作業のない業種でも起こり、会社への損害賠償請求や訴訟に発展しやすい類型です。一般的な業務災害補償保険では、政府労災に認定された精神障害等を補償の対象とする設計や、雇用トラブルの賠償に備える特約を組み込めます。
判例に見る、高額賠償の現実
いずれも公表されている実際の裁判例です。労災をめぐる会社の賠償責任は、規模の大小を問わず現実に問われています。
Overwork Suicide
長時間労働の末の自殺に、会社の賠償責任を認めた最高裁判決
差戻し後の和解金額※1約1億6,800万円
入社2年目の従業員が長時間労働の末に自殺した事案。最高裁は会社の健康配慮義務違反を認め、差戻し後に高額の和解が成立しました。過労自殺への企業責任を確立した事案として知られています。
最高裁 平成12年3月24日判決
Karoshi
入社数か月の従業員の過労死に、会社と役員個人の連帯責任
会社と取締役らに連帯で(認容額※2)約7,860万円
飲食チェーンの新入社員が長時間労働の末に急性心不全で死亡した事案。裁判所は労働時間の管理体制の不備を理由に、会社だけでなく取締役ら個人にも連帯しての賠償を命じ、最高裁で確定しています。
大阪高裁 平成23年5月25日判決
Harassment
上司の暴行・叱責による自殺に、会社と代表者の賠償責任
会社・代表者らに(認容額※2)約5,400万円
上司からの暴行や執拗な叱責を受けていた従業員が自殺した事案で、裁判所は会社と代表者らの損害賠償責任を認めました。ハラスメントが高額賠償に直結することを示す事案です。
名古屋地裁 平成26年1月15日判決
※1 金額は法令情報総合オンラインサービス(Westlaw Japan)によるものであり、判決による認容額ではありません。
※2 認容額は判決で認容された損害賠償額の概数です。事実関係・判断の詳細は各判決文によります。
1つの契約で、ここまでカバーできます
一般的な業務災害補償保険で補償を組み合わせた場合の設計例です。基本の補償に加え、オプションや特約でどこまで広げるかを、業種と予算に合わせて選びます。
| 備えたいリスク | 補償の位置づけ | 補償の内容(一般的な例) |
|---|---|---|
| 業務中の労災事故(ケガ) | 基本補償 | 死亡・後遺障害・入院・手術・通院に対し、契約で定めた保険金を政府労災とは別に支払い |
| 労災認定された精神障害・脳心疾患 | 基本補償〜オプション | 政府労災に認定された精神障害や脳・心臓疾患、それに起因する死亡(自殺を含む)を補償対象とする設計が一般的 |
| 休業による収入減 | オプション | 休業補償特約により、政府労災の8割を超える部分の生活補填を設計可能 |
| 会社への損害賠償請求(労災事故) | セット推奨 | 使用者賠償責任の補償:安全配慮義務違反などによる賠償金・訴訟費用をカバー |
| パワハラ・セクハラ・不当解雇 | 特約 | 雇用慣行賠償責任の特約:雇用トラブルによる損害賠償金・訴訟費用をカバー |
| 業務外の病気・ケガ(福利厚生) | オプション | 商品によっては業務外の傷病まで対象を広げ、福利厚生制度として設計可能 |
※ 補償の名称・範囲・セット方法は引受保険会社・商品により異なります。上表は一般的な構成の例であり、特定の商品の内容を示すものではありません。
加入する4つのメリット
Unnamed Basis
無記名式:従業員の入れ替わりに手続き不要
多くの商品は従業員を記名せず包括して契約でき、パート・アルバイトを含む全従業員が自動的に対象になります。採用や退職のたびに届け出る必要がなく、管理の手間がかかりません。
Tax Deductible
保険料は原則、全額損金に算入できる
法人が負担する業務災害補償保険の保険料は、一般に全額を損金に算入できます(個別の税務上の取扱いは、税理士等の専門家にご確認ください)。福利厚生の拡充を、税負担を抑えながら進められます。
Prompt Payment
政府労災の認定を待たずに支払われる設計が一般的
ケガの補償については、政府労災の認定と連動せず、引受保険会社の審査により支払われる商品が一般的です。事故直後の見舞金や当面の生活資金など、スピードが求められる場面で機能します(支払要件は商品により異なります)。
CCA Rating
建設業では経審の加点・元請の要件対応にもなる
建設業では、法定外労働災害補償制度への加入が経営事項審査(経審)の加点評価の対象になるほか、元請から現場入場の条件として任意労災の加入を求められる例があります。詳しくは建設業のお客さまへをご覧ください。
詳しく調べる
Coverage
補償内容
従業員への上乗せ補償、使用者賠償、雇用慣行賠償の3層構造と、補償されない主な場合を整理します。
Premium
保険料の考え方
保険料はどう決まるのか。無記名式の算出方式と、保険料を抑える設計の工夫を解説します。
Construction
建設業のお客さまへ
経審の加点、元請の現場入場要件、一人親方・下請の扱いなど、建設業に固有の論点をまとめました。
Compare
選び方・見直しのポイント
無記名式か記名式か、精神障害への対応、共済との違いなど、検討で見るべき軸を整理します。
Self Check
3分セルフ診断
10の質問に答えるだけで、貴社の労災リスクへの備えの現在地をその場で確認できます。
Glossary
用語集
法定外補償、給付基礎日額、無記名式など、検討中に出てくる用語を短く解説します。
商品を売り込む前に、設計を整える窓口です
労災上乗せ保険は、補償金額・特約・対象者の組み合わせで中身が大きく変わる保険です。当デスクは、災害補償規定や既存契約との整合を確認したうえで、貴社の業種・規模・優先順位に合わせた設計を、理由とともにご提案します。
- 規定と実態に合わせた設計提案。災害補償規定・就業規則・雇用形態の実態をうかがい、補償金額と特約の要否を1つずつ整理してご説明します。推奨理由は書面でお示しします。
- 「入らない」という結論も含めてご提案。既存契約や共済で足りている場合は、その旨をお伝えします。重複への掛け捨てはお勧めしません。
- 全国対応・オンライン完結。資料請求からお見積もり、ご契約手続きまで、メール・オンラインで完結できます。
貴社の備えは万全ですか? 3分で分かるセルフ診断
災害補償規定の有無、休業時の補填、ハラスメント対応など10の質問で、労災リスクへの備えの現在地を確認できます。結果はその場で表示されます。
ご相談からお見積もりまで
Step 01
フォーム送信
資料請求・お見積もり・ご相談のいずれかを選び、業種・従業員数など分かる範囲でご記入ください。入力は約1分です。
Step 02
内容確認・ヒアリング
担当者が内容を確認し、お見積もりに必要な事項をメールでおうかがいします。
Step 03
お見積もりのご提示
補償範囲と保険料の設計案を、推奨理由とあわせてご説明します。判断材料を整理してお渡しします。
Step 04
ご検討・お手続き
社内でのご検討に必要な資料をお渡しし、ご契約の場合はお手続きをご案内します。
資料請求・お見積もりに費用はかかりません。ご提示後にお断りいただいても差し支えありません。営業時間内のご依頼には、当日中に担当者よりご連絡いたします。
よくある質問(抜粋)
政府労災と労災上乗せ保険は、両方から受け取れますか?
一般的な業務災害補償保険(労災上乗せ保険)は、政府労災の給付とは別に、契約で定めた保険金をお支払いする仕組みです。政府労災の給付があることを理由に保険金が減額されない設計が一般的ですが、使用者賠償責任の補償など一部の補償は政府労災の給付等を差し引いて損害額を計算します。詳細は商品ごとに異なりますので、お見積もり時にご確認いただけます。
パート・アルバイトも補償の対象になりますか?
多くの業務災害補償保険は、従業員を記名せずに包括して補償する「無記名式」で契約でき、パート・アルバイトを含む全従業員を対象にできます。商品によっては派遣社員や下請負人まで対象を広げられるものもあります。雇用形態ごとの扱いは商品により異なるため、お見積もり時に整理してご案内します。
保険料はどのくらいかかりますか?
保険料は、業種、売上高または賃金総額、補償の範囲(法定外補償の金額、使用者賠償の限度額、特約の有無)などに応じて個別に算出されます。従業員数の増減を都度届け出ない無記名式では、売上高などをもとに計算する方式が一般的です。業種と規模が分かれば無料でお見積もりを作成しますので、実額はお見積もりでご確認ください。
本ページは業務災害補償保険(労災上乗せ保険)の一般的な仕組みを説明したものであり、特定の保険商品の内容を記載したものではありません。補償の内容・名称・免責事由・引受の可否は引受保険会社・商品・契約条件により異なります。詳細はお見積もり時にお渡しする各引受保険会社のパンフレットおよびご契約のしおり・約款をご確認ください。当サイトの解説は、労災上乗せ保険(業務災害補償保険)の一般的な仕組みに関する情報提供です。引受保険会社・商品の詳細は、お見積もり・ご提案の際にご案内します。引受保険会社はお見積もりの際にご案内します。取扱代理店:那由他保険テクノロジーズ株式会社