製品保証・付帯保険の引受交渉で保険会社が見るポイント

自社の製品に保証や修理のサービスを付けて顧客に届けたい。そう考えるメーカーや輸入・販売の会社、保証サービスの運営担当者がまずやっておきたいのは、いきなり保険会社との引受交渉へ進むことではありません。いま構想しているしくみが何にあたるのかを、先に見極めておくことです。製品を作った会社や売った会社が自分の責任として直す保証なのか、別の会社が代わりに修理などのサービスを提供するのか、それとも保険として引き受けてもらう設計なのか。同じ「保証」「付帯」「修理サービス」という言葉でも、誰が責任を負い、何を約束するかによって、その先で必要になる手続きは変わります。

この見極めがついたうえで保険会社へ持ち込む段になると、求められるのは商品アイデアの説明ではありません。どの商品群でどんな事故がどれくらい起き、その原因がどこまで分かっているのかを、自社のデータと公的な統計で示せるかどうかです。追加資料の照会に答える前や条件提示を受け取る前に、事故のデータと原因の分かり具合をどう並べ替えて持ち込むかが、話の入り口になります。まずは公的な統計で見える範囲と、自社でそろえるべき数字とを切り分けておきましょう。

Summaryこの記事のポイント

  • 「保証」「修理」という名前だけで保険にあたるかは決まりません。誰が責任を負い何を約束するかを、金融庁の考え方に照らして先に見分けます。
  • 自社で保険を引き受ける構想なら、少額短期保険業は内閣総理大臣の登録を受け、審査と継続的な監督を伴います。少額・短期でも登録なしに自由に運営できる枠組みではありません。
  • 保険会社は引受交渉で事故の起こりやすさとその前提の説明を求めます。NITEの事故情報では2024年度に発生した製品事故1,781件のうち上位21の製品群が約63%を占めます。
  • 経済産業省の原因区分では、令和5年に受け付けた重大製品事故1,186件のうち製品起因が25.8%、原因不明が37.0%です。確定した件と調査中の件を分けて書き出します。
  • 行政の事故統計は保険料や相場を示しません。販売台数・契約数・修理費・支払実績は、自社で別にそろえます。

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引受交渉で保険会社が最初に見るもの

保険会社が見る点は、大きく三つに分かれます。対象の事故がどれくらいの頻度と規模で起きるかというリスクの実態。補償の範囲・免責・支払限度額が想定するリスクと釣り合っているかという商品設計の整合。そして、募集や事故対応を誰が担うかという運用の体制です。どれか一つが弱いと、追加の照会が入ったり、条件の検討に影響したりすることがあります。

保険会社は、保険事故の発生率が予測に反して変動することを引受リスクとしてとらえ、商品の開発や改廃、事故の発生予測、引受審査に使った分析の結果を検討データとし、そのリスクと測定の手法、置いた主要な前提を書面に残すことを求められています(金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」保険引受リスク管理態勢)。持ち込む事業者の側も同じ言葉でデータと前提を並べておくと、保険会社が検討や追加の照会に使いやすい材料になります。

事故を商品群ごとに分けて見せる

自社の事故や修理の受付を全体の件数だけで示すと、保険会社はリスクがどこに偏っているのかを読み取れません。手がかりになるのが、製品事故の集中を示した公的な統計です。NITE(製品評価技術基盤機構)「2024年度 事故情報解析報告書」は、2024年度に発生した製品事故1,781件のうち、上位21の製品群が約63%、上位5の製品群が約28%を占めると公表しています。この数字は2025年8月31日時点で集計された公式の公表値で、私たちが独自に計算したものではありません。

この数字は、収集された重大・非重大の製品事故を集めたもので、販売台数などの分母を持ちません。だから事故の発生率は計算できず、保証請求や修理受付、保険事故の件数でもありません。リコールが出た商品群は報告が増え、調査中の案件も含みます。原因や結果が変わり得るため、損害率や料率へ読み替えることはできません。それでも、事故が一部の商品群に集中するという公的な事実は、自社のデータを同じ切り口で並べ替える根拠になります。

自社では、商品群・型式ごとに事故と修理の受付件数を分け、件数の多い群には危害の程度(発火、けが、物損など)を書き添えます。事故が集まる商品群から、保険会社へ渡す追加資料や、個別に条件を詰める対象、上位の承認を仰ぐ候補を選び出します。

原因がどこまで分かっているかを記録して示す

事故の原因がどこまで判明しているかは、補償の線引きや追加調査の要否を左右します。経済産業省 製品安全課「製品安全に関する取組について」(2026年4月)は、令和5年に受け付けた重大な製品事故1,186件を、原因の区分ごとに次のように示しています(事故の受付日ベース、令和7年12月末時点の調査結果)。

令和5年受付の重大製品事故1,186件の原因区分(経済産業省)
原因区分件数割合
製品起因306件25.8%
経年劣化48件4.0%
設置・修理不良19件1.6%
誤使用・不注意72件6.1%
偶発的事故等212件17.9%
原因不明439件37.0%
調査不能16件1.3%
非重大製品事故等13件1.1%
調査中61件5.1%

件数の合計は1,186件で、表示した割合の合計99.9%は四捨五入によるものです。この資料は令和5年を「大部分の調査が終了した」年として扱い、調査中は5.1%にとどまります。令和6年の30.3%、令和7年の75.1%と比べて未確定の割合が低いため、原因区分を交渉用のデータ項目へ写す用途では令和5年を使いますが、完全に確定した内訳ではありません。「偶発的事故等」は、製品に起因しないが誤使用とも言い切れないもの、使用者の感受性に関係すると考えられるものを指す資料上の区分です。

これは消費生活用製品安全法にもとづき通知された重大製品事故の行政報告であり、保証請求や修理受付、保険事故、保険金支払の母集団ではありません。原因区分がそのままPL法(製造物責任法)上の責任や契約上の免責、保険金の支払可否に一致するわけではなく、製品起因の25.8%を保険金が支払われる割合、原因不明の37.0%を免責になる割合と読み替えることはできません。前のNITEの数字とは年度も集計の基準も分母も違うため、足し合わせたり、並べて比べたりもしません。

自社では、事故の一件ごとに原因の区分と確定の状況(確定、調査中、原因不明)を記録し、原因が固まっていない案件は状態のまま保険会社へ示します。区分ごとに、補償の対象にしたい事象、免責の候補、追加で調べる資料、個別に照会する事象、上位の承認へ回す事象を仕分けておくと、条件の協議が具体的になります。

保険にあたるかを見分けてから、募集と事故対応を考える

保険会社との交渉に入る前に、まず確かめたいのは、いま構想しているしくみが保険業にあたるのかどうかです。金融庁は、保険業にあたるかを取引の名前ではなく中身で見るという考え方を、質問と回答の形で公表しています(金融庁「保険業該当性に関するQ&A」)。同じ「保証」「修理サービス」でも、誰が責任を負い、どんな約束をするかで扱いは分かれます。

大きな分かれ目は、責任を負う主体です。製品を作った会社や売った会社が、購入者への責任として自ら修理などを提供するしくみは、保険とは別の取引として整理され得ます。一方、その会社とは別の第三者がサービスの提供主体になる場合は、約束の内容や提供のしかた、保険商品との実質的な近さなどを合わせて見て、保険業にあたるかを見ていく流れになります。最終的な責任を自社が負い続けたまま作業だけを外部へ委託するのか、第三者そのものが提供主体になるのかは、分けて書き出しておきます。ただし、メーカー保証や延長保証がいつでも保険業の外になるとも、第三者が関わればいつでも保険になるとも、決めつけることはできません。

お金の出し方でも見え方が変わります。金銭で穴埋めすることを約束する設計や、利用者が金銭と修理のどちらかを選べる設計は、原則として保険業にあたるかどうかの確認が必要とされています。壊れた品の代わりに別の品を渡す代替品も、修理ができないときや経済的な合理性から選ぶのか、修理を前提とせず自由に選べるのかで扱いが変わり得ます。最後は、契約の条項、対価、責任の所在、提供のしかたといった具体的な事実で結論が動くため、設計の段階から保険法務にくわしい専門家や、所管の財務局・金融庁への照会も見込んでおくと安心です。

この見極めの結果、自社で保険を引き受ける方向を考えることになったら、少額・短期の保険だけを扱う少額短期保険業という枠組みがあります。ただし、少額・短期なら誰でも自由に運営できる制度ではありません。引き受ける主体には内閣総理大臣の登録が必要で、登録の審査では契約者の保護や財務の健全性、募集や支払いの体制が見られます(金融庁「少額短期保険業者向けの監督指針」)。登録簿への登録と供託などの届出が済むまでは営業を始められず、登録後も継続して監督を受けます。すでに登録を受けた保険会社や少額短期保険業者と組んで座組みをつくる道と、自社が登録の要件を満たして引受主体になる道は、別のものとして分けて考えます。後者は商品の設計にとどまらず、登録という規制対応そのものになります。

誰が募集や事故対応を担うかは、この見極めのあとに決めます。会員や利用者への案内が、ただの情報提供にとどまるのか、勧誘を目的とした商品の説明や申込みの受付にまで及ぶのかで、扱いは分かれます。後者は保険募集にあたり得るため、募集人の登録や届出、それを支える管理の体制が必要になることがあります(金融庁「保険募集管理態勢」)。会員や利用者への説明を自社の販売担当が行うのか、事故の受付から査定、支払いまでを社内外のどこが担うのかを、面談の前に決めておきます。

料率や相場は行政統計からは出ない

ここまでの行政統計は、事故がどこに集中し、原因がどこまで判明しているかを示します。しかし、保険料そのものは示しません。損害保険料率算出機構は、料率の算出には過去の保険統計と、十分で客観性・精度の高いデータが必要だと説明しています。事故件数の統計だけで、付帯保険の価格や相場を語ることはできません。価格の話に進むには、自社で次の数字をそろえます。

  • 商品群・型式ごとの販売台数と契約数、対象とする期間
  • 事故・修理の受付件数と、それぞれの原因の確定状況
  • 1件あたりの支払額と、想定される最大の損害
  • リコールの有無と、その範囲

これらがそろうと、保険会社は分母、事故の起こりやすさ、1件あたりの損害額、原因の区分といった項目を、自社の数字と突き合わせて見られます。追加で見込まれるリスクをどこまで価格の条件へ織り込むかは、保険会社ごとの審査や商品設計、個別の条件、追加で求められる資料によって変わり、そろえた資料はその検討のための材料になります。

面談前にそろえておく資料とチェック

引受交渉では、口頭の説明より、書面とデータのほうが伝わります。初回の面談や追加照会への回答の前に、持参する資料をそろえておくと、その場で保険会社が検討に使える材料になります。手元では、すでに出せる資料、まだ足りない資料、社内で確認を待っている事項を切り分けておきます。まずは、しくみが保険にあたるかを見分けるための土台を書き出します。

  • 誰が利用者から対価(保証料や利用料)を受け取るのか
  • 修理・交換・金銭の給付という債務を、最終的に誰が負うのか
  • その費用と、件数が増減したときのリスクを、誰が負担するのか
  • 対象となるのは自社が売った製品か、他社が売った製品も含むのか
  • 修理ができないとき、利用者は代替品や金銭を選べる設計か

ここまでの項目は、誰が対価を受け取り、給付の債務や費用、件数が動いたときのリスクを最終的に誰が負うのかという、責任の所在を書き出すものです。次に、事故がどれくらい起きるのか、そして商品の設計を保険会社が読み取れるように、事故のデータと商品設計の資料をそろえます。

  • 商品群・型式別に分けた事故・修理の受付データと、原因の分かり具合
  • 会員・利用者の数、属性、推移、解約の見込み
  • 商品やサービスの利用規約、契約書、約款案
  • 付保の見込み件数と、収支の見通し

あわせて、社内で先に決めておくことがあります。付帯や保証で何のリスクを誰に移すのかを言葉にし、対象となる会員・利用者の規模と属性を数字で出せるようにします。会員や利用者への説明を誰が行うのか、事故の受付から査定、支払いまでを社内外のどこが担うのかも、面談の前に固めておきます。誰が何を説明するかを示した募集の流れと説明資料、事故対応の運用の流れは、書面にしておくと保険会社へ伝わりやすくなります。

これらを持ち込むと、補償の範囲・免責・限度額の優先順位が事業の目的と合っているかを、保険会社と一緒に見比べられます。規約・契約・約款は、案の段階のものも含めて現物をそろえておくと、どこを照会されそうか、何が足りないかを早い段階で特定しやすくなります。資料がそろえば条件が必ず前へ進むわけではありませんが、話の出発点をそろえられます。

那由他保険テクノロジーズが付帯保険の引受準備で支援できること

商品群ごとに事故を並べ替え、原因の確定状況を記録しても、どの事象を補償に含め、どれを免責や個別照会の候補にするかは、自社の証券や契約条件と突き合わせないと決めきれません。事故の受付や修理の記録が部署ごとに散らばっていると、商品群・型式への分解自体が進みません。

那由他保険テクノロジーズでは、対象領域のリスク構造の分析と補償のギャップ分析を通じて、証券・台帳・契約書・事故履歴を論点ごとに並べ、対象・限度・免責・除外・通知や更新の条件を照らし合わせます。そのうえで、行政統計では足りず自社で用意すべき販売台数・契約数・修理費・支払実績がどこか、保険会社へ個別に照会すべき事象はどれかといった、相談で持ち帰れる材料をまとめます。条件が有利になることや保険料が下がること、補償の適正化そのものを約束するものではありません。

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よくある質問

行政の事故統計だけで付帯保険の保険料はわかりますか?

わかりません。損害保険料率算出機構は、料率の算出に過去の保険統計と精度の高いデータが必要だと説明しています。NITEや経済産業省の事故統計は、事故がどの商品群に集中し、原因がどこまで判明しているかを示しますが、販売台数や契約数、支払額の分母を持ちません。保険料や相場は、自社のデータをそろえたうえで保険会社と個別に詰めます。

NITEの統計と経済産業省の統計は合わせて使えますか?

合算や単純な比較はできません。二つは年度も、発生と受付という集計の基準も、母集団も違います。NITEは2024年度に発生した重大・非重大の製品事故、経済産業省は令和5年に受け付けた重大な製品事故を示しており、それぞれ別の目的で使います。

原因が「調査中」や「原因不明」の事故は補償の対象外になりますか?

統計の原因区分が、そのまま補償の可否を決めるわけではありません。保険金の支払いは約款と個別の事実関係で決まり、原因区分はPL法上の責任や契約上の免責と一致しません。原因が固まっていない事象は、状態のまま保険会社へ示し、補償に含めるか、個別に照会するかを詰めます。

商品群別に事故を分けると交渉で何に使えますか?

事故が集中する商品群を示せると、追加で出す資料や、個別に条件を詰める対象、上位の承認を仰ぐ候補を保険会社と絞り込めます。件数だけでなく、発火やけがなど危害の程度も併せて示すと、どの事象を重く見るかの話が具体的になります。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年7月22日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年7月22日

本記事は公開時点の一般的な情報です。補償、引受、保険料、保険金の支払は、個別の商品・約款・契約条件・事故の状況によって異なります。法務・税務・労務・会計に関わる判断は、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。