
履行保証保険は、受注者が自分の責任で工事請負契約を果たせなかったときに、発注者が被る損害を保険会社がてん補する保険で、公共工事の契約保証に使える方法の一つです。契約保証には契約保証金・金融機関の保証・履行保証保険・公共工事履行保証証券の四つがあり、どれが使えるか、保証金額を請負代金額の何割にするか、いつまでに出すかは、発注者の公告と契約書の指定で決まります。標準約款の率は「十分の〇」と空欄で、国の直轄工事は原則10分の1以上、低入札価格調査を受けた契約や政府調達協定の対象となる大規模工事は10分の3以上です。落札したら、まず締結期限から逆算して間に合う方法を選びます。
Summaryこの記事のポイント
- 履行保証保険は、受注者の契約不履行で発注者が被る損害を保険会社がてん補する保険で、保険証券を発注者に寄託すると契約保証金の納付が免除されます。
- 契約保証の四方法のうち、履行保証保険と金融機関の保証は金銭的保証、公共工事履行保証証券は金銭的保証に加えて役務的保証(代替施工の手配)を含む型があり、発注者の指定で使える方法が決まります。
- 公共工事標準請負契約約款の保証の額は「請負代金額の十分の〇以上」と空欄で、金銭的保証は「一」、役務的保証は「三」が例示です。国土交通省の直轄工事は原則10分の1以上で、低入札価格調査を受けた場合や政府調達協定対象の大規模工事(一般競争入札対象工事)は10分の3以上です(2026年11月時点)。
- 提出期限は請負契約の締結期限から逆算します。保険会社・保証会社の審査と発行に日数がかかるため、落札決定通知を受けたらすぐ着手します。
- 履行保証(契約が果たされないことへの備え)と、工事中の対人・対物事故への備え(請負業者賠償責任保険・工事保険)は別物で、片方だけでは空白が残ります。
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履行保証保険とは|受注者の契約不履行で発注者が被る損害をてん補する保険
履行保証保険とは、工事などの請負契約で受注者が自分の責任により債務を履行できなかった場合に、発注者が被る損害を保険会社がてん補する保険である。契約者(保険料を払う人)は受注者、被保険者(保険金を受け取る人)は発注者で、受注者は保険証券を発注者に寄託し、それをもって契約保証金の納付が免除されます。公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定、令和7年12月2日最終改正)の第4条は、契約保証の方法の一つとして「この契約による債務の不履行により生ずる損害をてん補する履行保証保険契約の締結」を挙げています。
似た言葉に「履行保証」「契約保証」「履行ボンド」があります。履行保証・契約保証は、請負契約が果たされないことへの備え全体を指す広い言葉で、その手段の一つが履行保証保険です。履行ボンドは、保証会社や保険会社が発行する公共工事履行保証証券の通称で、保険ではなく保証の形をとります。発注者の公告で「履行保証保険証券または公共工事履行保証証券」と並記されていることが多いのは、この二つがどちらも現金を預けずに済む手段だからです。
公共工事の契約保証は、発注者が契約保証金の納付またはそれに代わる保証を求める手続きで、全国の公共工事で日常的に行われています。東日本建設業保証「図で見る公共工事の動き(令和7年度版)」によれば、北海道・東日本・西日本の3保証会社を通じた前払金保証統計の2025年度(令和7年度)取扱高は、請負金額ベースで16兆8,495億円、前年度比10.8%増でした。公共機関からの元請受注高も、国土交通省の建設工事受注動態統計調査では2025年(暦年)で約24.14兆円と、前年の約22.76兆円から6.1%増えています。公共工事を受注する会社にとって、契約保証は毎回の案件で向き合う手続きであり、方法の選び方を社内で持っておく価値があります。
契約保証金・銀行等保証・履行保証保険・履行保証証券は何が違うのか
契約保証には主に四つの手段があります。契約保証金(現金や有価証券を発注者へ預ける)、金融機関の保証(銀行等が発注者に対して保証する)、履行保証保険(保険会社が発注者を被保険者として引き受ける保険)、公共工事履行保証証券(保証会社や保険会社が発注者に対して発行する証券)です。いずれも「請負者が契約を果たさなかったときに発注者の損失を埋める」目的は同じですが、手配先・費用負担・自社に戻るお金の性質が異なります。公共工事標準請負契約約款第4条(A)は、この四つを「契約保証金の納付」「契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供」「銀行又は発注者が確実と認める金融機関等の保証」「公共工事履行保証証券による保証」「履行保証保険契約の締結」の五号として列挙し、履行保証証券か履行保証保険を付したときは契約保証金の納付を免除すると定めています。
大きな違いは、支払われたお金が「自社に返還されるもの(保証金の返還)」か「発注者へ支払われるもの(保険金・保証債務の履行)」かという点です。契約保証金は契約が問題なく履行されれば返還されますが、手元資金を拘束します。金融機関の保証や保険・証券は現金を寝かせずに済む一方、保証料・保険料という費用が発生し、与信枠や引受審査の対象になります。どれが自社案件に向くかは、資金繰り・与信枠・工期・発注者の指定によって変わります。
もう一つの軸が、金銭的保証か役務的保証かです。金銭的保証は、受注者の不履行で発注者に生じた損害を金銭で埋めるもので、契約保証金・金融機関の保証・履行保証保険がこれに当たります。役務的保証は、不履行のときに保証人が選んだ代替の施工会社に残工事を完成させる保証で、公共工事履行保証証券にはこの役務的保証を含む型があります。公共工事標準請負契約約款は、金銭的保証を必要とする場合の第4条(A)と、役務的保証を必要とする場合の第4条(B)を分けて用意し、(B)では公共工事履行保証証券(契約不適合を保証する特約付き)だけを認めています。発注者が(B)型を採用している案件では、履行保証保険は選べません。
次の表は、四つの契約保証の方法を、手配先・費用負担・支払や返還の性質・保証の性格・向くケースの同じ軸で並べたものです(2026年11月時点の一般的な整理。詳細は各契約条件によります)。
| 方法 | 手配先 | 費用負担 | 支払・返還の性質 | 保証の性格 | 向くケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 契約保証金 | 発注者へ直接納付 | 現金・有価証券の拘束 | 履行後に自社へ返還 | 金銭的保証 | 手元資金に余裕があり短期の案件 |
| 金融機関の保証(銀行等) | 取引金融機関 | 保証料+与信枠を使用 | 不履行時に発注者へ保証履行 | 金銭的保証 | 金融機関の与信枠を活用したい場合 |
| 履行保証保険 | 損害保険会社 | 保険料 | 不履行時に発注者へ保険金 | 金銭的保証 | 現金も与信枠も使わず費用で対応したい場合 |
| 公共工事履行保証証券 | 保証事業会社・保険会社 | 保証料 | 不履行時に発注者へ保証(役務的保証を含む型あり) | 金銭的保証、または役務的保証を含む | 役務的保証など発注者指定に合わせる場合 |
なお、ここで比べているのは契約が果たされないことへの備えであり、工事中に第三者へけがをさせた・物を壊したといった賠償の備えとは別の保険です。両者の違いは、請負業者賠償責任保険とは何かを整理した記事で確認できます。
保証金額は請負代金額の何割で手配するのか
保証金額の割合は、発注者が契約書で定めます。公共工事標準請負契約約款第4条(A)第3項は「契約保証金の額、保証金額又は保険金額は、請負代金額の十分の〇以上としなければならない」と、率の部分を空欄にしており、注で「〇の部分には、たとえば、一と記入する」と例示しています。役務的保証を使う第4条(B)の注では「たとえば、三」が例示です。つまり約款そのものが10分の1と決めているのではなく、発注者が契約書で率を書き込みます(2026年11月時点)。契約保証金そのものの金額の決まり方、返還の時期、勘定科目と消費税の扱いは、公共工事の契約保証金の金額・返還・経理処理を整理した記事で扱っています。
実際に使われている率の例を挙げると、国土交通省の直轄工事では、工事請負契約書と契約の保証に関する通知(国地契第95号、平成24年3月19日)で、契約担当官等は請負代金額の10分の1以上の金額を保証する契約の保証を落札者に求めるとし、これが原則です。そのうえで、低入札価格調査を受けた者との契約は国土交通省大臣官房地方課長通知(国地契第85号、最終改正令和5年12月27日)により「10分の3以上」に読み替え、政府調達協定の対象となる大規模工事(通知でいう一般競争入札対象工事)も別の通知(国地契第36号)により10分の3以上が置かれています。千葉県の「契約の保証について」は、公共工事履行保証証券・履行保証保険ともに保証金額・保険金額を請負代金額の10分の1以上としています。国の直轄工事の原則や千葉県のように10分の1を基準にする発注者がある一方、低入札価格調査を経た契約、政府調達協定対象の大規模工事、役務的保証では10分の3が置かれることがあるため、「10分の1で足りるはず」と決め込まず、案件ごとに公告・契約書の記載を確認します。
保証金額の設定で押さえる数値は次のとおりです。
| 根拠 | 率 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 公共工事標準請負契約約款 第4条(A)第3項 | 請負代金額の十分の〇以上(注で金銭的保証は「一」を例示) | 発注者が契約書で率を決める前提 |
| 同 第4条(B)第2項 | 請負代金額の十分の〇以上(注で役務的保証は「三」を例示) | 役務的保証を求める案件 |
| 国土交通省直轄工事の工事請負契約書 第4条第3項・契約の保証に関する通知(国地契第95号) | 請負代金額の10分の1以上(原則) | 国の直轄工事の通常の契約 |
| 国地契第85号(低入札価格調査を受けた者との契約) | 請負代金額の10分の3以上に読み替え | 低入札価格調査の対象になった直轄工事 |
| 国地契第36号(一般競争入札対象工事における契約保証金の額) | 請負代金額の10分の3以上 | 政府調達協定の対象となる大規模な直轄工事 |
| 発注者の公告・契約書の指定 | 案件ごとの指定額・率 | 上の基準より指定が優先 |
たとえば請負代金額が1億円で率が10分の1なら、保証金額は1,000万円以上が目安になります。同じ案件で低入札価格調査を受けた場合や、政府調達協定の対象となる大規模工事では、発注者によっては3,000万円以上になり、保険料・保証料も保証金額に応じて変わります。案件によっては損害賠償の予定や違約金の定めと連動する場合や、指定方法により金額の考え方が変わる場合があるため、金額は必ず契約条件で確認してください。
保証金額を決めるときは、請負代金額そのものだけでなく、変更契約による請負代金額の増減も確認します。公共工事標準請負契約約款第4条(A)第6項は、請負代金額の変更があった場合、保証の額が変更後の請負代金額の十分の〇に達するまで発注者は増額を請求でき、受注者は減額を請求できると定めています。工事中に設計変更で請負代金額が増える見込みがある場合、当初の保証金額のままでよいか、増額が必要かを発注者・手配先に確認しておくと、後からの追加手配を避けられます。
落札後、契約保証はいつまでに何を出すのか
契約保証は、落札から請負契約の締結期限までの間に手配し、発注者へ提出します。多くの案件では落札決定通知の受領後、数営業日から2週間程度で契約締結を求められ、その締結時に契約保証の証券・証書または保証金の納付を済ませておく必要があります。千葉県の例では、保証書・証券は工事請負契約書(案)の提出時に提出するとされています。まずは落札した案件の公告と契約書(案)で締結期限を確認し、そこから逆算して、金融機関や保険会社での審査・発行にかかる日数を織り込んで方法を選びます。
提出が締結期限に間に合わないと、契約を結べず、落札の効力そのものに影響する場合があります。特に金融機関の保証や保険会社の証券・証書は、申込みから発行まで審査期間を要するため、契約保証金を現金で納付する場合よりも早い着手が必要です。実際の期限は発注者・案件ごとに異なるため、公告・契約書の記載を必ず優先してください。
逆算の起点は締結期限です。たとえば締結期限が落札決定通知から10営業日後で、保険会社の審査・発行に5営業日程度を見込むなら、社内の方法選定と申込みは通知の受領後2〜3営業日以内に済ませる計算になります。案件が重なる時期や年度末は手配が集中しやすいため、余裕を持った日程で進めてください。入札参加の段階で、どの方法を使うか・保険会社や保証会社の審査を通せるかを先に確かめておくと、落札後に方法選びで時間を使わずに済みます。建設業許可・経営事項審査・入札参加資格から落札後の契約保証までの順序は、公共工事の受注の流れを段階ごとに整理した記事にまとめています。
次の表は、落札から契約締結までに「いつ・何を出すか」の順序を整理したものです(日数は目安。単位は営業日。2026年11月時点の一般的な流れ)。
| 時点 | やること | 出すもの・確認するもの |
|---|---|---|
| 落札決定通知の受領(0日) | 公告・契約書(案)で保証条件を確認 | 保証方法の指定・保証金額(率)・提出期限 |
| 受領後すぐ(1〜3営業日) | 社内で保証方法を選定し手配先へ相談 | 請負代金額・工期・与信枠の情報 |
| 手配着手(3〜7営業日) | 金融機関・保険会社・保証会社へ申込み、審査 | 申込書・契約書(案)・見積内訳など |
| 証券・証書の受領 | 記載内容(工事名・保証金額・期間)を照合 | 発行された証券・証書または納付書 |
| 契約締結期限まで | 発注者へ提出し契約を締結 | 契約保証の証券・証書または保証金 |
履行保証保険の保険料は何で決まるのか
履行保証保険の保険料は、保証の額(保険金額)と保険期間(工期)を基礎に、受注者の信用状態や工事の内容に応じた引受審査を経て保険会社が決めます。保証金額が請負代金額の10分の1から10分の3に上がれば、保険料の基礎になる金額も3倍になります。保険料の水準や料率は保険会社・契約ごとに異なり、公開された一律の相場があるわけではありません。「履行保証保険 保険料 相場」で調べると保証事業会社の保証料率表が見つかりますが、それは公共工事履行保証証券(保証)の料率で、保険会社の履行保証保険の保険料ではありません。見積を取るときは、何の料率を見ているのかを区別してください。
見積を依頼するときに保険会社・代理店へ伝える情報は、発注者名、工事名・工事場所、請負代金額、工期(保険期間)、指定された保証金額の率、低入札価格調査の有無、電子保証証書の要否、契約締結期限です。あわせて会社の決算書類など信用状態を示す資料を求められるのが一般的で、初めて履行保証保険を使う会社や、年間の受注件数が多い会社では、案件ごとの審査ではなく事前に引受の枠を相談しておく方法もあります。入札参加の前に審査を通しておけば、落札後は証券の発行手続きだけで済み、締結期限に追われずに手配できます。
保証料・保険料は、契約保証金の現金拘束や金融機関の与信枠と引き換えに払う費用です。手元資金に余裕があり短期の案件なら契約保証金、与信枠に余裕があるなら金融機関の保証、現金も与信枠も使いたくないなら履行保証保険や履行保証証券という順に比べ、費用だけでなく資金繰りと与信枠への影響を同じ表で見ると判断しやすくなります。
発注者の公告・契約書で確認する保証条件はどこか
確認すべきは、工事名、保証金額(または請負代金額に対する割合)、保証期間、指定された保証方法、そして電子保証証書を受け付けるかどうかです。これらは入札公告・入札説明書と、請負契約書(案)・契約保証に関する特記仕様書に記載されます。証券・証書を発行した後に記載のずれが見つかると再発行に時間がかかるため、発行前後の両方で照合します。
特に取り違えやすいのが、工事名と工期の表記、保証期間の始期・終期、そして発注者名(被保険者・保証の相手方として誰を記載するか)です。電子入札の案件では電子保証証書のみを受け付ける、あるいは書面のみといった指定があるため、提出方法も条件の一部として確認します。公共工事標準請負契約約款第4条(A)第2項は、保険証券の寄託に代えて、保険会社が定め発注者が認めた電磁的方法をとることができ、その場合は証券を寄託したものとみなすと定めています。電子で出せるかどうかは、この「発注者が認めた」措置に当たるかで決まるので、発注者側の案内を確認します。証券・証書の記載事項をどこと突き合わせるかは、建設業の保険加入証明書と付保条項の照合をまとめた記事の考え方が参考になります。
照合は証券・証書の発行前と発行後の二段階で行うのが安全です。発行前は申込内容が公告・契約書と一致しているかを確認し、発行後は実際に印字された工事名・保証金額・保証期間・相手方が正しいかを一字ずつ突き合わせます。誤記があると再発行で締結期限に間に合わなくなるおそれがあるため、発行後の確認を提出直前の作業にしないことが大切です。
公告・契約書で確認する項目の一覧です。提出前に一つずつ照合してください。
- 工事名・工事場所・工期が公告と契約書で一致しているか
- 保証金額(または請負代金額に対する割合)の指定はいくらか。低入札価格調査の対象で率が上がっていないか
- 保証期間の始期・終期はいつか
- 指定された保証方法(契約保証金・金融機関保証・履行保証保険・履行保証証券)はどれか、選択可か。役務的保証(第4条(B)型)の指定ではないか
- 電子保証証書か書面か、提出方法の指定はどうなっているか
- 発注者名・相手方の表記は正確か
- 提出期限(契約締結期限)はいつか
履行保証と工事中の事故への備えはどう分かれるか
履行保証は「契約が果たされないこと」への備えで、工事中に起きた対人・対物の事故への備えとは別です。履行保証保険や公共工事履行保証証券が対象にするのは、請負者の契約不履行によって発注者が被る損失であり、被保険者・保証の相手方は発注者です。一方、工事中に第三者にけがをさせた、隣家の設備を壊したといった賠償は請負業者賠償責任保険が、工事目的物そのものの損壊は建設工事保険(工事保険)が担い、これらを手配していなければ空白のまま残ります。
この境界を混同すると、契約保証を出したことで「工事の事故もカバーされている」と誤解し、賠償や自社工事目的物の損害に備えがないまま着工してしまいます。何を被保険者とし、どの損害が対象で、何が免責かは保険・保証ごとに異なるため、契約不履行への備えと事故への備えは別々に確認する必要があります。建設業で契約保証とあわせて検討する保険の全体像は、建設業に必要な保険を一覧で整理した記事で確認できます。
具体的には、履行保証は工期内に工事が完成しない・契約が解除されたといった不履行の場面で機能し、対象は発注者の損失です。契約保証だけを整えて安心せず、賠償・工事目的物の備えの有無を同時に点検してください。
契約不履行への備えと事故への備えでは、通知の相手や必要になる証拠の集め方も異なります。事故の場合は発生日時・状況・損害の範囲を早期に記録しておくことが後の手続きに影響するため、契約保証の手配とは別に、着工前から事故対応の窓口と手順を決めておくと安心です。
保証方法を選ぶとき社内の誰と何を確認するか
保証方法の選定は、財務・経理・営業(工事)の三者で情報を突き合わせて決めます。財務は与信枠と保証枠の残り、経理は保証料・保険料の負担と支払処理、営業(工事)は工期と提出期限の見通しを持っています。誰か一人の判断で方法を決めると、与信枠の不足や提出遅延が後から表面化するため、落札直後に三者で条件を共有するのが確実です。
確認の受け渡しとして、財務からは金融機関の与信枠・保証枠の空き状況、経理からは費用として計上できる保証料・保険料の見込み、営業からは締結期限と工期・請負代金額を集めます。これらがそろえば、契約保証金で現金を拘束するのか、金融機関保証や保険・証券で費用対応にするのかを、資金繰りと期限の両面から比較できます。判断が分かれる場合は、発注者の指定方法を起点に選択肢を絞り込むと迷いにくくなります。
社内での役割分担を最初に決めておくと、次の落札案件でも同じ手順で動けます。誰が公告・契約書を読み、誰が手配先へ連絡し、誰が証券・証書の記載を照合するかを担当として定めておけば、提出直前の確認漏れや二重手配を防げます。案件ごとに保証方法が変わることもあるため、選定の記録を残しておくと社内での引き継ぎが楽になります。
那由他保険テクノロジーズが公共工事の契約保証と履行保証保険の手配でご支援できること
公告・契約書の指定内容までは自社で確認できても、案件ごとに残るのは、指定された保証方法が自社の与信枠と締結期限に収まるか、低入札価格調査や変更契約で保証金額が増えたときに追加の手配が要るか、履行保証とは別に手配する賠償・工事目的物の補償に空白が残っていないか、の三点です。これらは財務・経理・営業(工事)が持つ情報と既契約の証券を突き合わせないと判断できず、締結期限が迫ってから動くと選べる方法が狭まります。
那由他保険テクノロジーズは、法人のリスク構造分析と保険プログラム設計、補償ギャップ分析、契約条件に沿った保険調達支援を行っています。公共工事の契約保証では、入札参加の前に履行保証保険の引受の見込みと証券発行までの日数を確かめておく事前の相談、落札後に公告・契約書の指定(保証方法・率・保証期間・電子か書面か)と申込内容を照合する確認、変更契約や低入札価格調査で保証金額が変わったときの追加手配の整理、そして請負業者賠償責任保険・工事保険の証券と並べて履行保証では埋まらない部分を洗い出す作業を、担当者と一緒に進めます。保証料・保険料については、契約保証金の現金拘束や金融機関の与信枠への影響と並べて比べられる形に整理しますが、金額が下がることを保証するものではありません。
相談の後には、当該案件で使える保証方法と、それぞれの締結期限までの日数の見込み、申込みに必要な条件、発注者の契約担当課へ照会すべき記載(電子保証証書の可否、保証期間の始期・終期、発注者名の表記)、賠償・工事目的物側で追加や条件変更を検討すべき補償が、社内で判断できる形で手元に残ります。年間で複数案件を受注している場合は、既契約証券の更新月と手続状況もあわせて確認し、手配時期の重なりを事前に把握します。指定が契約保証金のみで手元資金にも余裕がある案件では、保険・保証を新たに手配しない判断も選択肢としてお伝えします。どの方法を選ぶか、どこから着手するかが決まっていない段階で構いませんので、落札した案件の公告と契約書(案)が手元にある時点で、まずはご相談ください。契約条項の法的解釈や保証料・保険料の会計・税務処理は、弁護士・税理士など各分野の専門家にご確認ください。
公共工事の契約保証
落札した案件の締結期限に、履行保証保険の手配は間に合うか
公告・契約書の指定と与信枠・資金繰りを並べ、契約保証金・金融機関保証・履行保証保険・履行保証証券のどれが当該案件に合うかを一緒に整理します。入札参加前の事前相談も受け付けています。
よくある質問
履行保証保険と契約保証金は何が違いますか?
契約保証金は現金や有価証券を発注者へ預ける方法で、契約が問題なく履行されれば自社へ返還されます。履行保証保険は損害保険会社が発注者を被保険者として引き受ける保険で、返還ではなく、請負者の不履行時に発注者へ保険金が支払われます。公共工事標準請負契約約款では、履行保証保険の証券を寄託すると契約保証金の納付が免除されます。現金を拘束したくない場合は保険や証券、金融機関保証が選択肢になりますが、いずれも保険料・保証料や審査が必要です(2026年11月時点)。
履行保証保険と公共工事履行保証証券はどう違いますか?
どちらも現金を拘束せずに発注者へ保証を提供する点は似ていますが、引受先と保証の性格が異なります。履行保証保険は損害保険会社が引き受ける保険で、金銭による保険金支払を基本とする金銭的保証です。公共工事履行保証証券は保証事業会社や保険会社が発行する証券で、金銭保証に加えて役務的保証(代わりの施工会社に残工事を完成させる保証)を含む型が指定されることがあります。公共工事標準請負契約約款で役務的保証を求める第4条(B)型の案件では、公共工事履行保証証券だけが認められ、履行保証保険は使えません。どちらが必要かは発注者の指定によります。
保証金額はいくらにすればよいですか?
公共工事標準請負契約約款は「請負代金額の十分の〇以上」と率を空欄にし、金銭的保証は「一」、役務的保証は「三」を例示しています。実際の率は発注者が契約書で決め、国土交通省の直轄工事は原則10分の1以上で、低入札価格調査を受けた契約や政府調達協定対象の大規模工事(一般競争入札対象工事)は10分の3以上、千葉県は10分の1以上としています(2026年11月時点)。請負代金額・違約金の定め・指定方法によって考え方が変わるため、案件ごとに契約条件で確認してください。
低入札価格調査を受けた場合、契約保証はどうなりますか?
国土交通省の直轄工事では、契約保証の額は原則として請負代金額の10分の1以上ですが、低入札価格調査を受けた者との契約については10分の3以上に読み替える通知(国地契第85号)が出ています。低入札でなくても、政府調達協定の対象となる大規模工事(一般競争入札対象工事)は10分の3以上とされています。地方公共団体でも同様の取扱いを置く発注者があります。保証金額が3倍になれば保険料・保証料の基礎も3倍になるため、調査対象になった時点で手配先に保証金額の変更を伝えてください。実際の率は発注者の公告・契約書で確認します。
電子保証証書は使えますか?
電子保証証書を受け付けるかどうかは発注者ごとに異なります。公共工事標準請負契約約款第4条(A)第2項は、保険証券の寄託に代えて、保険会社が定め発注者が認めた電磁的方法をとれると定めています。電子入札の案件では電子保証証書のみ、別の案件では書面のみといった指定があるため、公告・入札説明書で提出方法を確認してください。指定と異なる形式で用意すると受理されないことがあります。
すべての公共工事で履行保証は必須ですか?
一律に同じ保証方法が必須になるわけではありません。契約保証を求めるかどうか、どの方法を認めるか、率をいくらにするかは発注者・案件ごとに公告・契約書で指定されます。小規模な工事や案件によっては求められない場合もあるため、まず指定内容を確認することが出発点です。
民間工事や工事以外の業務委託でも履行保証保険は使えますか?
履行保証保険は公共工事専用ではなく、民間の工事請負契約や、設計・測量・システム開発などの業務委託契約で発注者から契約保証を求められた場合にも使われることがあります。ただし、引受の可否や条件は保険会社と契約内容によって異なり、公共工事の契約保証のように制度として整っているわけではありません。民間の発注者から保証を求められたときは、契約書で求められている保証の形(金銭的保証か役務的保証か、保証金額と期間)を確認したうえで、保険会社・代理店に引受の可否を相談してください。
提出が締結期限に間に合わないとどうなりますか?
契約保証を締結期限までに提出できないと、請負契約を結べず、落札の効力に影響する場合があります。金融機関の保証や保険会社の証券・証書は発行までに審査期間を要するため、落札決定通知を受けたらすぐに手配へ着手し、期限から逆算して余裕を持って進めてください。入札参加の前に引受の見込みを確かめておくと、落札後の手配が短くなります。
契約保証を出せば工事中の事故も補償されますか?
いいえ。履行保証保険や履行保証証券が対象にするのは請負者の契約不履行による発注者の損失で、工事中の対人・対物事故は対象外です。第三者への賠償には請負業者賠償責任保険を、自社工事目的物の損害には建設工事保険(工事保険)を別に手配する必要があります。
参考一次情報・公的資料
- 国土交通省 建設工事標準請負契約約款について
- 国土交通省 公共工事標準請負契約約款(令和7年12月2日改正・PDF)
- 国土交通省 工事請負契約及び設計業務等委託契約における契約の保証に関する取扱いについて(国地契第95号・PDF)
- 国土交通省 低入札価格調査制度調査対象工事における契約の保証の額について(国地契第85号・PDF)
- 千葉県 契約の保証について
- 国土交通省 公共工事標準請負契約約款 新旧対照表(令和7年12月2日改正・PDF)
- 国土交通省港湾局 工事請負契約等における契約の保証に関する取扱いについて(港管第271号・PDF)
- 国土交通省 建設工事受注動態統計調査 報道発表資料(PDF)
- 東日本建設業保証 図で見る公共工事の動き(令和7年度版・PDF)
情報確認日:2026年11月2日
執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年11月2日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。補償・引受・保険料・保険金の支払は、商品・約款・契約条件および個別事情によって異なります。契約保証や保険の適用可否、金額、提出条件は発注者の公告・契約書の指定が優先します。法務・税務・労務・会計に関わる判断は、必要に応じて各分野の専門家にご確認ください。