スタートアップが保険組成相談前に準備すべき資料|プロダクトKPI・CS・事故データ

スタートアップが保険組成・付帯保険・保証事業を保険会社や代理店と検討するとき、引受の入口で見られるのは会社概要でもピッチ資料でもありません。保険会社が引受を判断するために先に確認するのは、プロダクトKPI(リスクの母数)、CS・事故インシデントデータ(頻度と強度)、契約上の責任範囲、情報セキュリティ体制の4領域です。引受の検討は、会社紹介の厚さではなく、これらがどこまで見えているかで前に進みます。何が記録できていて何がこれからかを率直に共有できれば、検討はその時点から具体的に動かせます。本記事では、成長フェーズ別の資料粒度、検討時に確認する項目、よくある失敗までを一次情報とともに整理します。

Summaryこの記事のポイント

  • 保険組成相談で最初に求められるのは会社概要ではなく、プロダクトKPI・CS体制・事故データ・契約責任の4領域である。
  • 引受・見積は書類で止まる。成長性の物語ではなく、リスクの母数・頻度・強度・契約責任・証拠保全を出せるかで前進する。
  • 組成して終わりではない。事故時に保険金は自動では出ず、被保険者側が損害と因果関係を立証する。日々の記録は将来の証拠保全を兼ねる。
  • 成長フェーズ(シード〜シリーズB以降)ごとに、最低限出す資料と次に作る資料の粒度が異なる。
  • チェックリストで整理した内容は、そのまま社内での引受対応や事故対応の共通資料(データパック)として使える。

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保険組成相談が「対象になるケース」と「対象外になりやすいケース」

相談に進む前に、自社のプロダクトが引受検討の対象になり得るかを見極めましょう。以下は一般的な傾向であり、実際の引受可否は個別の契約条件・約款・保険会社の判断に依存します。対象外に見えても、記録体制やリスク軽減策の整備状況によっては相談可能です。

保険組成相談の対象/対象外の傾向(判定表)
区分具体例傾向と次のアクション
対象になりやすいSaaS・EC・シェアリングエコノミーなど、ユーザー間取引やデータ処理のリスクが定量化できるプロダクト取引データやKPIが蓄積され、事故頻度・損害額の推定が可能。整理が途中の段階から相談で詰められる。
対象になりやすいフィンテック・ヘルステックなど、規制対応が求められ、リスク移転ニーズが明確なサービス契約責任や法的リスクが整理され、保険設計の論点が絞りやすい。規制論点の認識状況を添える。
対象外になりやすいローンチ前で、ユーザーデータ・取引実績がゼロのプロダクトリスク評価に必要な定量データが不足。事業計画上の想定母数の置き方から一緒に整理できる。
対象外になりやすい事故・クレーム記録が未整備で、損害の頻度・規模が不明なサービス保険料の算出根拠が立てられない。CSログからの遡及集計と記録体制の整備が先。
要個別相談暗号資産関連・高リスク投資商品など、引受制限のある領域保険会社ごとに引受方針が異なる。現時点の状況を伺いながら引受方針を先に確認できる。

ポイントは、対象外=相談不可ではないことです。多くのスタートアップは、対象になりやすい領域にいながら、データが未整備なために対象外に見えてしまっているだけです。何がどこまで整理できているか分からない段階でも、那由他保険テクノロジーズが現状を伺いながら一緒に棚卸ししていきますので、まずはお気軽にご相談ください。相談の中で、どの数値はすぐ出せて、どの数値は集計に一週間かかるのかを一緒に見取り図にしていくと、その場で次の設計議論へ進めます。

なぜ「プロダクトKPI・CS・事故データ・契約責任」が必要なのか

保険組成相談では、保険会社や代理店がリスクの母数・頻度・強度・責任範囲・運用統制を評価します。ここに引受・見積の非対称性があります。会社の成長ストーリーをどれだけ語っても、リスクを数値で示せなければ料率も免責も設計できません。逆に、事故が多い事業でも、頻度・平均損害額・再発防止策が定量化されていれば設計は前に進みます。つまり見られているのは良い会社かどうかではなく、リスクを説明できる会社かです。一般的な企業概要(会社登記、決算書)に加えて、次の4領域が引受資料として機能します。

初回相談で確認される4領域(引受資料の分解)
領域代表資料保険会社が見る理由
プロダクトKPIMAU/DAU、取引件数、GMV、ARPU、解約率リスクの母数と最大損害規模の当たりを付ける
CS・事故インシデント問い合わせ、事故、返品・返金、障害、補償要望、平均損害額事故の頻度と強度、損害拡大防止能力を測る
契約責任利用規約、SLA、責任制限、免責、賠償上限保険で移すべき責任範囲を特定する
情報セキュリティ・統制権限管理、ログ、バックアップ、インシデント対応、証拠保全再発防止と保険金支払判断の材料を確認する

この4領域を会社概要の後ろではなく前に置くのが、実りある初回相談の基本設計です。もう一つ押さえておきたいのは、これらの資料が引受のためだけの書類ではないという点です。同じKPIや事故台帳、ログは、将来実際に事故が起きたとき、損害額や因果関係を裏づける証拠としても機能します。以下で各領域の出し方を具体化します。

プロダクトKPIで見る「母数」と「最大損害」

プロダクトKPIは、リスクの母数と規模を把握するための基礎データです。保険会社はこれらの数値から、想定される保険金支払額の規模感を試算します。準備しておきたい代表的な指標は次のとおりです。

  • 母数系:MAU/DAU、登録ユーザー数、アクティブ契約数。事故が起きうる分母を示します。
  • 取引系:取引件数、GMV(流通取引総額)、平均取引単価、ARPU。1件あたりの想定損害額の当たりに使われます。
  • 継続系:解約率(チャーン)、更新率、LTV。契約期間とリスクエクスポージャーの長さを示します。

数値そのものだけでなく、直近6〜12か月の月次推移と、増減の背景(季節性、キャンペーン、機能追加)を添えると、リスクの母数がどう動くかが伝わります。投資家向けデューデリジェンス資料のKPI部分は転用できますが、成長性を強調する構成になっているため、最大でどれだけの取引・金額がリスクにさらされるかという観点で再編集が必要です。

特に見落とされがちなのが最大損害の考え方です。平均取引単価が小さくても、まれに高額取引が混ざる、あるいは1件の障害が多数ユーザーへ同時に波及する設計だと、最大損害は平均から大きく乖離します。取引単価の分布(上位数%の取引がどの程度の金額か)や、同時被害が起きうる構造(一斉配信、共通基盤への依存など)を添えると、保険会社は支払限度額や免責金額の設計に踏み込みやすくなります。平均値だけを提出すると、テール側のリスクが読めず、かえって保守的な料率や厳しめの免責が設定されることもあるため、分布と最大値の両方を示すのが得策です。

CSと事故・インシデントデータで見る「頻度」と「強度」

CS(カスタマーサポート)体制と事故・インシデントデータは、リスクの頻度と強度、そして損害拡大防止能力を示します。ここが保険料率の算出根拠に直結します。

まずCS体制では、事故・トラブル発生時の初期対応フロー、エスカレーション基準、対応チームの人数・SLAを整理します。CS体制が整備されているほど、損害の早期封じ込めが期待でき、リスク評価でプラスに働く傾向があります。あわせて、事故発生から解決までの平均日数や一次対応までの時間も添えると、損害拡大防止の実力が定量で伝わります。同じ事故でも、初期対応が早いほど二次被害や賠償額を抑えられるため、リスク評価で有利に働くことがあります。

次に事故・インシデントデータでは、過去の事故件数、クレーム内容、損害額の実績を、同じフォーマットで集計します。CS問い合わせ、返品・返金、システム障害、補償要望、平均損害額を一つの台帳に揃えると、頻度(何件起きたか)と強度(1件あたりいくらか)の両方が見えます。件数が少なくても、記録が存在すること自体がリスク評価上のプラスになります。以下は台帳の最小項目例です。

事故・インシデント台帳の最小項目例
項目内容使われ方
発生日・区分事故/クレーム/障害/返金の別頻度と季節性の把握
損害額・対象金額実損、返金額、想定賠償額平均損害額・最大損害の推定
原因・一次窓口ユーザー起因/システム起因、CS受付か免責・責任範囲の切り分け
対応結果・再発防止解決内容、実施した対策損害拡大防止能力の評価

この台帳は、料率算出の材料であると同時に、将来の保険金請求で、いつ・何が・いくらの損害を生んだかを説明する一次資料にもなります。事故区分と原因の切り分けを最初から揃えておくと、後述する免責・責任範囲の判断がぶれにくくなります。逆に、集計値だけを持ち、元の受付ログや金額の根拠を残していないと、支払いの局面で損害の裏づけが取れず不利になりかねません。

契約責任と情報セキュリティをどう出すか

利用規約やSLAに定めた責任範囲・免責条項・賠償上限は、保険でカバーすべきリスクの外縁を決めます。契約書上の責任と実際の運用に乖離があると保険設計に影響するため、法務担当と連携して主要な責任条項の所在を押さえておくと、証券との突合が進みます。M&Aやデューデリジェンスの局面でも、この契約責任と保証残高の整理は効きます。自社が負う責任の上限を規約でどう設定しているか、そしてその上限を超える部分を保険で移すのか自己負担にするのかは、まだ言語化できていない段階から那由他保険テクノロジーズが一緒に整理していきますので、まずはお気軽にご相談ください。

IT・EC・SaaS系のプロダクトでは、情報漏えい・サイバー攻撃・サービス停止・委託先障害が保険設計の重要な要素になります。その必要性は公表統計からも裏付けられます。警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、ランサムウェア被害の報告件数は226件で、そのうち中小企業が143件を占めます。規模の小さい事業者ほど被害の当事者になり得ることが読み取れます。

さらに同じ警察庁統計では、フィッシング報告件数が2,454,297件に達しており、顧客情報や決済導線を扱うSaaS・ECにとって、情報セキュリティ資料はあれば良いではなく引受判断の前提になりつつあります。

情報セキュリティ資料は、IPA「情報セキュリティ10大脅威」IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を入口に、自社に該当する脅威と対策状況(アクセス権限、ログ、バックアップ、インシデント対応、顧客通知の手順)を整理します。事故の一次情報はCSが持つことが多いため、セキュリティ担当だけで完結させず、CSと突き合わせて証拠保全の流れを説明できるようにしておくと、リスク評価がスムーズに進みます。

保険金は自動では出ない:早い段階から始める立証と証拠保全

保険を組成して提供を始めた後、実際に事故やトラブルが起きたとき、保険金は自動では支払われません。損害保険の実務では、保険金を請求する側(被保険者やユーザー)が、事故が実際に発生したこと、損害の範囲と金額、事故と損害の因果関係、それが保険期間内に起きたこと、約款上の免責事由に該当しないことを、資料で説明する必要があります。証明の材料がなければ、契約上は対象でも支払いまで進まない、あるいは金額が大きく削られることがあります。ここは、会社概要をどれだけ厚くしても代替できない部分です。

ここに、保険代理店だからこそ指摘しておきたい非対称性があります。相談段階で保険会社が見るKPIや事故台帳、CSログ、アクセスログは、料率を決めるためだけの資料ではありません。それらは将来、保険金請求が発生したときに損害と因果関係を裏づける証拠そのものになります。検討の過程で整えていく記録体制は、引受を通すための材料であると同時に、将来の支払いを守るための証拠保全でもあります。この二重の意味を理解しているかどうかで、資料の作り込み方と保管の仕方が変わります。

特に注意したいのが通知義務と免責、支払限度額です。多くの約款は、事故を知ったら遅滞なく保険会社へ通知することを求めており、通知が遅れると保険金が削減されたり支払われなかったりすることがあります。また、補償対象外の事由(重過失、既知の不具合の放置、対象外の業務など)や、1事故あたり・保険期間あたりの支払限度額の設定によって、同じ事故でも受け取れる金額は大きく変わります。組込型保険や付帯保険としてユーザーに提供する場合は、どこまでが対象でどこからが免責かをユーザー向けの説明にも落とし込む必要があり、相談段階で論点として持っておくと、後の設計がぶれません。

したがって、実際に効いてくるのは、事故が起きたときに誰が・いつ・何を根拠に損害を説明できるかを示せる状態です。CSが一次情報を持ち、セキュリティ担当がログを保全し、法務が契約上の責任範囲を押さえる、この連携の流れを一枚で説明できると、引受のリスク評価も、将来の保険金支払いも、両方が滑らかになります。逆に、ここが属人的なままだと、事故のたびに証拠を探し回ることになり、支払いの局面で不利になりかねません。

成長フェーズ別:準備資料の粒度と優先度

スタートアップの成長フェーズによって、保有するデータの量と質は大きく異なります。下表を参考に、自社のフェーズで最低限出す資料と次に作る資料を切り分けてください。すべてを完璧に揃える必要はなく、揃っている範囲を明示することが重要です。

成長フェーズ別の資料粒度
フェーズプロダクトKPICS体制事故データ契約責任
シード〜プレシリーズA ユーザー数・取引件数の月次推移。少ない場合は事業計画上の想定値と根拠 対応フローの概要(属人的でも可) 発生件数と内容の一覧(件数が少なくても記録があることが重要) 利用規約の責任条項・免責条項の抜粋
シリーズA 月次KPIダッシュボード(MAU、取引件数、GMV、解約率) CS組織図、エスカレーションフロー、対応SLA 四半期ごとの事故・クレーム集計、損害額の実績 利用規約+SLA+主要取引先契約の責任条項
シリーズB以降 上記に加え、セグメント別KPI、LTV、コホート分析 CS品質指標(CSAT、初回解決率)、BCP体制 年次事故報告書、損害額トレンド、再発防止策の実施状況 契約責任マトリクス(サービス別・取引先別)、法務レビュー済み

資金調達との関連では、投資家向けに作成したデューデリジェンス資料の一部(事業KPI、リスク分析)を保険組成相談に転用できます。ただし前述のとおり、リスクの定量化という観点での再編集が前提です。フェーズが早いほど、まだ無いデータを悲観する必要はなく、いつ・どの粒度でそのデータが揃う見込みかを添えるだけで、保険会社は段階的な設計を検討しやすくなります。無理に数字を作り込むより、現状の解像度を正確に伝えるほうが、結果的に相談は前に進みます。

保険組成の検討時に確認する資料チェックリスト

以下は、保険組成・付帯保険・保証事業の設計で確認する資料を、そのまま添付資料名として使える形で整理したものです。確認できる項目が増えるほど、料率や引受条件の検討を具体的に進められます。

  1. プロダクト概要資料:サービスの仕組み、ユーザーフロー、主要機能(ピッチ資料の簡易版でも可)。
  2. プロダクトKPIレポート:MAU/DAU、取引件数、GMV、解約率、ARPUの月次推移(直近6〜12か月)。
  3. CS体制資料:対応フロー図、エスカレーション基準、対応チームの人数・体制、対応SLA。
  4. 事故・インシデント台帳:発生日、区分、内容、損害額、対応結果。件数が少なくても記録があること自体が重要。
  5. 利用規約・SLA抜粋:責任範囲、免責条項、賠償上限の記載箇所。
  6. 契約責任の整理資料:主要取引先・パートナーとの責任分担の概要。
  7. 情報セキュリティ対策の概要:IPAガイドライン等を参照した対策状況の整理。
  8. 事業計画・収益モデルの概要:保険付帯による収益仮説やUX向上の想定効果(方向性でよい)。
  9. 資金調達状況:現在のラウンド、調達額、主要投資家(規模感の参考情報)。
  10. 規制対応状況の整理:業法・個人情報保護法等の対応概要。金融庁「保険募集管理態勢」に関わる論点があれば整理。

何がどこまで整理できているか分からない段階でも、那由他保険テクノロジーズが現状を伺いながら一緒に整理し、次に確認すべき点と検討の進め方をお示しします。なお、保険の担い手の裾野は広がっており、金融庁「少額短期保険業者登録一覧」では登録業者数が122者とされています。ただし選択肢が増えても、個別検討を前に進めるのは市場統計ではなく自社の事業実態ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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資料準備でよくある失敗と対策

失敗1:会社概要だけで相談に臨む

保険会社がリスク評価で見ているのは、会社登記や決算書に表れる会社の姿よりも、プロダクトKPIが示すリスクの母数と、事故データが示す頻度・強度です。ここが社内でまだ整理できていない段階でも、那由他保険テクノロジーズが一緒に洗い出しながら引受の前提を組み立てますので、まずはお気軽にご相談ください。会社の良さではなく、リスクの母数と頻度から話し始めるのが近道です。

失敗2:事故データを「ゼロ」と報告する

事故やクレームが本当にゼロの場合と、記録が未整備でゼロに見える場合では、評価がまったく異なります。記録体制がないのであれば、CSチームのサポートチケットやチャットログから遡及的に集計し、記録ベースではN件と正直に伝えることが信頼構築につながります。ゼロという数字より、記録できているという事実が評価されます。

失敗3:契約上の責任範囲を把握していない

利用規約の免責条項や賠償上限は、保険でカバーすべき範囲を決める重要な論点です。社内でまだ確認できていない段階でも、那由他保険テクノロジーズが確認の進め方から一緒に整理していきますので、まずはお気軽にご相談ください。付帯保険と保証の責任分担の違いは付帯保険と保証の違いも参考になります。

失敗4:将来の保険金請求を想定せず記録を残していない

相談を引受を通すためだけのイベントと捉えると、当座の集計だけ作って元データを保管しない運用になりがちです。しかし前述のとおり、事故時に損害と因果関係を立証するのは被保険者側です。障害ログ、CSのやり取り、返金の記録、原因調査のメモは、保険期間中は削除せず保全する前提で設計しておきましょう。どのデータをどこにいつまで残すかは、決まっていない段階から那由他保険テクノロジーズと一緒に整理できます。引受審査でも将来の支払いでも、同じ記録が効いてきます。

付帯保険・保証事業・組込型保険の違いと検討論点

保険組成の相談では、自社サービスにどの形で保険・保証を組み込むかが論点になります。代表的なスキームの比較は次のとおりです。各スキームの適用可否は金融庁「保険に関する情報」や個別の規制要件を踏まえた検討が必要です。

付帯保険・保証事業・組込型保険の比較
スキーム概要検討すべき論点
付帯保険既存サービスに保険を付帯し、ユーザーに提供する形態保険募集該当性の法的整理、ユーザーへの説明義務、コスト負担の設計
保証事業自社で保証サービスを提供する形態(保険引受ではない)引当金の積み方、保険業法との関係整理、バックファイナンスの有無
組込型保険(エンベデッド)購入・利用フローに保険加入を組み込む形態API連携の技術要件、UX設計、保険会社との契約形態

いずれも一長一短があり、事業モデルや規制環境に応じた選択が必要です。詳細は付帯保険の組み込み方保証事業でトップラインを伸ばす方法保証事業のバックファイナンスもあわせて参考にしてください。

スキーム選択は、料率や引当だけでなく経済合理性で判断する論点です。自社だけで複数の保険会社や引受先を個別に回ると、各社ごとに資料要件が異なり、書類の往復だけで数週間から数か月を要することがあります。母数・頻度・強度・契約責任を一度整理したデータパックを作り、それを軸に複数の引受候補へ同じ条件で当てられる状態にしておくと、比較の土俵が揃い、意思決定が速くなります。保険組成の策定支援に相談する合理性は、この整理と横断比較の手間を外に出せる点にあります。何がどこまで整理できているか分からない段階でも、那由他保険テクノロジーズが棚卸しから一緒に進めますので、まずはお気軽にご相談ください。費用の扱いもその場で確認できます。ただし、どのスキームが最終的に選べるか、引受が通るか、提供開始がいつになるかは個別事情によるため、相談段階で確約されるものではありません。

初回相談を実りあるものにする3つのポイント

ポイント1:収益仮説を持って臨む

保険を付けたいという漠然とした相談よりも、月間N件の取引に対し保険付帯でコンバージョン率X%向上を仮説として持っている、という具体性があると、保険会社も商品設計のイメージを持ちやすくなります。ただし、売上向上やARPU改善を確約するものではなく、あくまで仮説として共有する姿勢が重要です。関連する費用論点は約定履行費用保険も参考になります。

ポイント2:規制論点を整理しておく

保険募集に該当するか、保険募集管理態勢への対応が必要かといった規制論点は、初回相談で必ず話題になります。自社で結論を出す必要はありませんが、この点は論点として認識していると伝えられる状態にしておくと相談が効率的に進みます。規制要件の判断は個別の法的検討が必要です。

ポイント3:データの限界を正直に伝える

スタートアップである以上、データが完全に揃っていることは稀です。この指標は取得できているが、この部分はまだ未整備、と正直に伝えることで、保険会社も現実的な提案を検討できます。強がるより、限界の開示が信頼につながります。加えて、未整備の項目について、いつまでに・どの粒度で揃える予定かを添えると、段階的な設計や暫定条件での検討に進みやすくなります。

よくある質問(FAQ)

シード期でデータが少なくても保険組成の相談はできますか?

相談自体は可能です。ただし取引実績や事故データが少ない段階では、具体的な保険商品の設計や保険料の試算に進めないことがあります。何がどこまで整理できているか分からない段階でも、現状を伺いながら那由他保険テクノロジーズが一緒に整理し、次に確認すべき点や検討のタイミングをお示しします。

事故やクレームの記録がまったくない場合はどうすればよいですか?

記録が未整備の場合は、CSチームのサポートチケットやチャットログから遡及的に集計することを検討してください。記録がゼロであること自体が問題ではなく、記録体制がないことがリスク評価上のマイナスになります。記録が何もない段階でも、どこから記録を始めるかを那由他保険テクノロジーズが一緒に設計しますので、まずはお気軽にご相談ください。

保険組成の相談は、投資家向けの説明とどこが違いますか?

投資家向けの説明は成長性やマーケットサイズが中心になりますが、保険組成の相談ではリスクの定量化・損害の頻度と規模・責任範囲の明確化が論点になります。この読み替えは、いまの状況を伺いながら那由他保険テクノロジーズが一緒に進めていきますので、まずはお気軽にご相談ください。

相談から保険商品の提供開始までどのようなステップがありますか?

一般的には、初回相談→リスク評価→商品設計→引受審査→契約締結→システム連携→提供開始、というステップを経ます。各ステップの所要期間は案件の複雑性や保険会社の審査状況によって大きく異なるため、初回相談時にスケジュール感を確認することをおすすめします。提供開始時期を保証するものではありません。

保険組成と保証事業のどちらを選ぶべきですか?

事業モデル、リスクの性質、規制環境、コスト構造によって異なります。保険組成は保険会社がリスクを引き受けるため自社の財務負担は限定的ですが、商品設計の自由度に制約があります。保証事業は自社でリスクを負う分、柔軟な設計が可能ですが、引当金の積み方や保険業法との関係整理が必要です。初回相談時に両方を検討したいと伝えると、自社に適したスキームの提案を受けやすくなります。

情報セキュリティの体制が整理できていなくても相談できますか?

できます。IT・EC系のプロダクトでは、情報漏えいやサイバー攻撃に関するリスクが保険設計の重要な要素になりますが、対策状況が固まっていない段階から那由他保険テクノロジーズが現状を伺いながら一緒に論点を洗い出します。IPA「情報セキュリティ10大脅威」や「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、その後の整理を進める際の参考になります。CSが持つ一次情報との突き合わせ方も、相談の中で一緒に決めていけます。

保険組成の相談に費用はかかりますか?

一般的に、保険代理店への初回相談自体に費用が発生することは多くありません。ただし、相談先や相談内容の範囲によっては別途費用が発生する場合があります。費用や引受可否、提供開始時期を保証するものではないため、事前に相談先へ確認してください。

那由他保険テクノロジーズによるプロダクトKPI・事故記録と付帯/保証スキーム条件の整理支援

チェックリストまで進めても、会社ごとに残る実務は三つに絞られます。第一に、KPIはプロダクト側、事故・返金の記録はCS側、責任条項は法務側と情報の持ち主が分かれており、母数・頻度・損害規模のどれが欠けているのかを一枚で説明できないこと。第二に、付帯保険・保証・組込型のどれで出すかによって、費用を誰が負担し、どの画面でユーザーへ案内するかが変わり、引受候補へ出す資料の内容も変わること。第三に、利用規約やSLAで自社が負う責任と、保険へ移す範囲の対応関係が未整理のまま相談に入ってしまうことです。

那由他保険テクノロジーズでは、組成型・付帯型保険ソリューションの検討支援として、プロダクトKPIレポートの月次推移、CSの受付記録・返金記録・障害記録、利用規約とSLAの責任制限条項・賠償上限、主要取引先との責任分担、情報セキュリティ対策の整理資料を突き合わせます。そこから、母数(MAU・取引件数・GMV)、頻度(区分別の発生件数)、損害規模(実損額・返金額の実績)、欠損項目(集計期間が足りない指標、原因区分が空欄の記録、金額の根拠が残っていない案件)に分けて一覧化します。そのうえで事業モデル、顧客接点、費用負担、引受条件を並べ、付帯・保証・組込型それぞれで引受候補へ提示できる資料と、照会が必要な事項へ振り分けます。最大損害額や支払限度額・免責金額の水準そのものを当社が算出するのではなく、保険会社が判断するために必要な材料と、まだ出せていない材料を切り分けるところまでを担当します。

調達支援の場面では、複数の引受候補へ同じ条件で当てられるよう、対象、支払限度額、免責、除外事由、通知期限・更新条件の比較軸を揃え、社内で決める項目(費用の負担者、加入導線を置く画面、記録の保管期間)と、保険会社へ照会する項目(該当業種の引受方針、対象外となるサービス類型、事故通知の期限、システム連携の要件)に分けて記録します。誰へ確認するかも具体化し、KPIの定義はプロダクト責任者、事故区分と損害額はCS責任者、責任条項の抜粋と改定可否は法務担当、ログの保全範囲はセキュリティ担当へ割り当てたうえで、未確定のまま残る論点を初回相談の議題として持ち込める形にします。

その結果として読者が持てる判断材料は、いまの記録で引受候補へ出せる範囲、追加取得に何か月かかる指標、付帯・保証・組込型のどれなら自社の顧客接点と費用負担に無理がないかという三点です。記録体制が整っていない段階であれば、保険を急いで組成せず、事故区分と金額根拠の記録から先に整える判断も選択肢になります。なお、保険募集への該当性や業法上の整理、利用規約の改定可否は弁護士等の専門家による検討が必要であり、引受可否・保険料・提供開始時期を保証するものではありません。何がどこまで整理できているか分からない段階でも、現状を伺いながら那由他保険テクノロジーズが一緒に整理していきますので、まずはお気軽にご相談ください。

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参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年8月3日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年8月3日

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険契約、保証スキーム、補償範囲、保険金支払い、引受可否、保険料、相談費用、提供開始時期、法務・税務・会計処理の結果を保証するものではありません。実際の条件は保険会社・商品・約款・契約構造・事故状況・個別事情により異なります。必要に応じて弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士等の専門家にもご確認ください。