貨物海上保険の入札仕様書|保険条件を見積原価と付保依頼へ落とす読み方

海外向け機材や物品の入札では、仕様書や輸送条件書に貨物海上保険の条件が示され、被保険者、保険金額、ICC条件、戦争・ストライキ、付保期間、区間、求償権、証券の形式と部数、提出時期を締切前に抜き出すと、応札価格へ含める保険料と、証券の発行・提出日程を見積もれます。まず現行の包括契約(Open Policy)と照合し、付帯済みか、追加確認か、個別手配かに分けて判断します。

Summaryこの記事のポイント

  • 入札仕様書と輸送条件書から、被保険者・保険金額・ICC条件・戦争・ストライキ・付保期間・区間・求償権・証券形式・部数・提出時期を一枚に抜き出す。
  • 抜き出した条件を現行Open Policyと照合し、付帯済み・追加確認・個別手配の三区分に分けて、保険料と手配主体を切り分ける。
  • ICC条件だけでなく戦争・ストライキや荷揚げ後の付保期間延長が引受確認と保険料を動かすため、条件別に保険会社へ質問する。
  • 質疑・応札・契約・船積確定・付保依頼・証券発行・提出を案件の実日付で逆算し、正本部数と電子原本の扱いを発注者へ確認する。

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入札仕様書から貨物海上保険の条件を抜き出す

入札仕様書の貨物海上保険条件は、輸送条件書や特記仕様、附属書に分散して書かれます。まず被保険者、保険金額とその算式、ICC条件、戦争・ストライキ約款、付保期間、付保区間、第三者への求償権、証券の様式・部数、提出時期の九項目を、原文の文言のまま一枚に写し取ります。「ICC(A)」という一語だけを見て終わらせず、金額算式と期間、書類指定まで同じ精度で拾うことが、保険料と証券発行の見通しを立てる出発点になります。

JICAは2025年5月15日、機構本部で実施する本邦機材調達案件について、貨物海上保険を受注者が任意の保険会社で付保し、その保険料を競争に含める方針を公表しました。あわせて輸送条件書を変更し「貨物海上保険にかかる通知」の様式を追加しています。これはJICAの対象調達に限られる変更ですが、発注者側の保険条件が手配主体と応札原価を同時に動かす具体例として、仕様書を読む視点を示します。他の官公庁や民間調達へそのまま当てはめず、案件ごとの入札説明書を優先します。

次の表は、仕様書の文言を保険会社への質問と、原価・日程への影響へ変換する対応を整理したものです。JICA現行雛型の記載を例として置き、実際は案件資料の文言を優先します。

仕様欄から付保依頼への変換例
条件仕様書の文言例保険会社への質問原価・日程への影響
被保険者発注者を被保険者とする現行証券で第三者を被保険者に指定できるか証券記載と引受確認
保険金額機材費と梱包・輸送費の合計100%この算式で付保できるか保険料の算定基礎
ICC条件ICC(A)現行Open Policyの標準条件か条件差があれば保険料
戦争・ストライキ戦争保険、ストライキ保険を必須別約款として付帯・引受できるか追加保険料と引受確認
付保期間荷揚げ後一定期間まで担保通常期間からの延長が要るか延長保険料と条件
証券・書類Policy正2部・写1部、Debit Note正2部紙原本の部数と発行日数、電子原本の扱い発行・送付日程

この表を各条件の文言で埋めたら、まず保険会社へ渡す質問リストを作り、次に保険料と証券発行日程のどこが動くかを見積担当と共有します。

既存の包括契約で満たせる条件を分ける

抜き出した条件は、現行のOpen Policyで自動的に付帯済みのもの、保険会社への確認で足りるもの、個別に手配し直すものの三つに分かれます。ICC(A)が標準の包括契約なら条件自体は付帯済みでも、被保険者を発注者に変える指定、荷揚げ後の期間延長、戦争・ストライキの引受は別枠の確認になりがちです。この切り分けを先に済ませると、応札価格へ載せる保険料の内訳と、締切までに動かす手配が具体的になります。

差分を見るときは、包括契約の証券条文と案件の指定を項目ごとに突き合わせます。被保険者、ICC条件、戦争・ストライキ、付保区間、付保期間、保険金額の算式、証券とDebit Noteの様式を並べ、どこが同じでどこが違うかを一行ずつ記録します。同じに見える項目でも、区間の起点終点や期間の起算日がずれれば追加確認へ落ちます。

次の差分表は、自社の現行証券の内容を記入し、案件指定との差を区分する入力用の枠です。数値は自社証券と案件資料から転記し、空欄のまま判断しないでください。

現行Open Policyと案件条件の差分(記入用)
確認項目案件の指定現行Open Policyの内容(記入)区分
被保険者付帯済/追加確認/個別手配
ICC条件付帯済/追加確認/個別手配
戦争・ストライキ付帯済/追加確認/個別手配
付保区間付帯済/追加確認/個別手配
付保期間付帯済/追加確認/個別手配
保険金額の算式付帯済/追加確認/個別手配
証券・Debit Note様式付帯済/追加確認/個別手配

区分が「追加確認」「個別手配」に付いた行だけを保険会社と発注者への質問へ回すと、対応の抜けと二重手配を避けられます。

ICC条件・戦争ストライキ・付保期間を見積へ反映する

ICC(A)(B)(C)は担保範囲の広さがちがう別々の約款で、協会戦争約款と協会ストライキ約款はさらに別に付帯します。仕様書がICC(A)に加えて戦争・ストライキを求めるなら、担保条件と保険料はそれぞれ独立に動きます。付保期間も、通常の包括契約が想定する期間より長い荷揚げ後の担保を求められると、延長の引受と追加保険料が見積へ乗ります。

ICC(A)(B)(C)の担保範囲のちがいを整理してから条件を読むと、包括契約の標準条件と案件指定の差を判断しやすくなります。三条件の担保対象の差はICC(A)(B)(C)の違いを解説した記事で確認できます。

JICA「輸送条件書(船積渡し)」雛型(2026年7月16日確認)では、船積み完了または輸送業者への引渡時点から保険が適用され、終期は輸送方法ごとに定められています。海上輸送は仕向港での荷揚げ後90日、航空輸送は仕向空港での荷揚げ後30日、海上輸送と内陸輸送の組み合わせは陸揚港での荷揚げ後120日、航空輸送と内陸輸送の組み合わせは仕向空港での荷揚げ後60日までを担保する記載です。これはJICA雛型の数値例で、全入札や全保険契約の標準期間ではありません。案件資料の文言と、自社の包括契約が想定する期間を突き合わせて延長の要否を確認します。

保険金額についても、同じ雛型は機材費と梱包・輸送費の合計の100%と示します。CIF価格に一定率を上乗せする一般的な説明と混同せず、案件の算式をそのまま保険会社へ伝えます。この100%はJICA雛型の出典付きの条件であり、費目の取り方が案件でちがえば保険金額も動きます。

戦争・ストライキ約款については、仕向国、航路、船積予定日を示し、応札前に付帯可否と追加保険料の目安を保険会社へ確認します。ICC(A)が付帯済みでも戦争・ストライキが自動で含まれるとは限らないため、別建てで見積もります。

被保険者・求償権・証券原本の指定を確認する

契約当事者の指定は、保険料そのものより先に引受可否を左右します。JICA雛型では発注者を被保険者、受注者を保険契約代行者とし、保険求償は発注者が行う役割分担が示されます。これはJICA雛型の条件で他の発注者へ一般化はできませんが、被保険者を第三者に置く指定は、自社の包括契約で対応できるかを最初に確かめる項目です。

第三者への求償権については、JICA雛型は「第三者求償権放棄特約を認める」と記載しています。これは放棄特約を認めるという発注者側の許容であって、必須条件と読み替えるものではありません。特約を付すか付さないかで引受と保険料が変わるため、案件文言をそのまま保険会社へ示して確認します。

証券やDebit Noteの正本要件、宛名や記載事項の指定は、発行様式の細部で提出可否が分かれます。証券の宛名や契約当事者の書き方については保険証券の宛名と契約者・被保険者の関係を整理した記事が参考になります。

書類の部数は、JICA雛型ではMarine Cargo Policyが正2部・写1部、Debit Noteが正2部と指定され、原本がPDFのときは正本の提出を求めない注記が付きます。紙原本の発行部数と発行日数、電子原本を正本として認めるかは、保険会社と発注者の双方へ確認します。これらの部数もJICA雛型の指定で、案件資料の部数や電子提出条件が優先します。

証券まわりの指定を漏らさないため、次を発行前に照合します。

  • 被保険者・保険契約者の記載名と、案件の指定が一致しているか。
  • 求償権放棄特約を付すか付さないか、案件文言に沿っているか。
  • Policyの正本・写しの部数と、Debit Noteの部数。
  • 電子原本を正本として認めるか、紙原本の送付が要るか。

保険証券の提出期限を入札日程から逆算する

証券の提出期限は、入札日程と輸送日程が確定して初めて逆算できます。質疑期限、応札締切、契約締結、輸送方法と船積日の確定、付保依頼、証券発行、証券提出を案件の実日付で並べ、後ろから前へ日程を引きます。固定の発行日数を当てはめるのではなく、保険会社の発行実務を案件ごとに確認して埋める方が、締切割れを防げます。

証券へ反映する最終条件は、輸送方法、船積日、区間、貨物明細、保険金額、条件をそろえて確定します。船積日が動けば付保期間の起算も動くため、輸送確定と付保依頼の順序を崩さないことが日程管理の肝になります。

次のタイムラインは、案件の実日付を記入して逆算する枠です。営業日数はあらかじめ置かず、各段階の日付と担当、渡す資料、完了条件を書き込みます。

入札から証券提出までの日程(記入用)
段階案件日付(記入)担当渡す資料完了条件
質疑期限営業・調達入札説明書・輸送条件書保険条件の疑問を質疑
応札締切経理・保険担当保険料見積原価へ保険料を反映
契約締結法務被保険者・求償権の確認契約責任の確定
輸送方法・船積日確定物流航路・輸送方法・船積日付保区間・期間の確定
付保依頼保険担当貨物明細・保険金額・条件引受確認
証券発行保険担当発行様式・部数Policy・Debit Note発行
証券提出営業・調達正本・写し発注者が受領

この表を実日付で埋めると、証券発行が締切に間に合うかを早い段階で判断でき、間に合わない見込みなら、質疑で電子原本の扱いや提出期限を確認する動きへ移れます。

なお、JICA雛型では航空輸送のとき、出発予定日の14営業日前までに一部の書類を提出する記載がありますが、これは特定書類の提出時点であって保険証券そのものの提出期限ではありません。証券の発行日数や提出期限へ転用せず、案件の指定を個別に確認します。

保険会社へ渡す案件資料を一つにまとめる

ここまでで抜き出した条件と差分、日程は、保険会社が引受可否と保険料、証券発行日程を判断する材料になります。入札説明書、輸送条件書、貨物明細、現行のOpen Policyと証券、指定様式、質疑・応札・船積・提出の日程は、それぞれどの回答に結び付くかを押さえておくと、確認の往復を減らせます。そろっている項目から順に照合を始めれば、追加で要る情報も進めながら特定できます。

Nayutaへの相談は、条件の整理が途中の段階から始められます。現行の包括契約で満たせる条件と、追加確認や個別手配が要る条件の切り分けから、付保依頼と証券提出の日程確認まで、そのまま一続きで対応します。

入札の保険条件は案件ごとに指定がちがい、どこから確認するか迷いやすいところです。案件の状況を伺いながら、確認の順序をNayutaが一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。

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よくある質問

入札仕様書のどこに貨物保険の条件が書かれていますか

輸送条件書や特記仕様、附属書に分かれていることがあるため、配布資料を横断して確認します。被保険者、保険金額、ICC条件、戦争・ストライキ、付保期間、区間、求償権、証券様式・部数、提出時期を、原文のまま一枚に写し取ってください。附属書は案件ごとにちがうため、雛型ではなく配布された案件資料を根拠にします。

ICC(A)指定なら既存のOpen Policyで足りますか

ICC(A)が標準の包括契約でも、条件だけで足りるとは限りません。被保険者を発注者に変える指定、荷揚げ後の期間延長、戦争・ストライキの付帯、証券様式の指定が加わると、引受確認や追加保険料、証券発行日程が動きます。差分を項目ごとに照合してから判断してください。

戦争・ストライキ条件は別に見積もりますか

協会戦争約款と協会ストライキ約款はICCとは別の約款で、別建てで付帯します。ICC(A)が付いていても自動で含まれるとは限らないため、付帯可否と追加保険料を保険会社へ確認し、応札原価に分けて見込みます。仕向国、航路、船積予定日も示して保険会社へ確認してください。

保険金額100%は全入札の標準ですか

いいえ。機材費と梱包・輸送費の合計100%という算式はJICA雛型(2026年7月16日確認)の条件で、全入札の標準ではありません。CIFに一定率を上乗せする一般的な説明とも混同せず、案件が指定する費目と算式をそのまま保険会社へ伝えてください。

保険証券の原本は何部必要で、PDF原本はどう扱いますか

JICA雛型ではMarine Cargo Policyが正2部・写1部、Debit Noteが正2部で、原本がPDFのときは正本の提出を求めない注記が付きます。これは当該雛型の指定で、案件資料の部数や電子提出条件が優先します。紙原本の発行部数と日数、電子原本を正本と認めるかを保険会社と発注者へ確認してください。

証券発行は締切に間に合いますか

固定の発行日数は置けません。付保依頼に要る輸送方法・船積日・貨物明細・保険金額・条件がそろってから発行できるため、輸送確定から提出期限までを案件の実日付で逆算します。間に合わない見込みなら、質疑で電子原本の扱いや提出時期を早めに確認しておくと安全です。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年7月16日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年7月16日

本記事は情報提供を目的とし、補償・引受・保険料・保険金の支払は商品・約款・契約条件・個別の事情によって決まります。入札への適合性や契約・法務・会計・税務の判断は、発注者や各分野の専門家への確認が要る内容を含みます。