ICC(A)(B)(C)の違いを比較|外航貨物保険の補償条件の選び方

外航貨物保険の補償条件ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)は、カバーするリスクの範囲が異なります。ICC(A)は免責事由を除く偶然な損害を広く補償するオールリスク型、ICC(B)は列挙された事故に地震・落雷・波ざらいなどの自然災害系を加えた条件、ICC(C)は火災・爆発・座礁・沈没・衝突など重大事故に絞った条件です。ただしICC(A)でも梱包不備・遅延・貨物固有の劣化・戦争・ストライキは対象外になりやすく、広ければ安心とは限りません。さらに、条件を上げても保険金が自動で支払われるわけではなく、事故・損害・金額・因果関係・発生時期・免責非該当を被保険者側が資料で説明する必要があります。最適な条件は貨物特性・輸送区間・売買条件(インコタームズ)・過去の損害実績で変わり、画一的な正解はありません。

Summaryこの記事のポイント

  • ICC(A)(B)(C)の補償範囲と免責を、代表的なリスク別の比較表で整理し、選定の判断軸を示します。
  • ICC(A)でも対象外になりやすい損害(梱包不備・遅延・貨物固有の性質・戦争/ストライキ)を明確にします。
  • 保険金は自動で支払われず、被保険者側が事故・損害額・因果関係・免責非該当を説明する必要がある点と、その準備物を具体化します。
  • 売買条件(インコタームズ)と保険手配義務・危険移転・保険金額の関係を、同じ表で確認します。

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先に押さえる定義──ICCとは協会貨物約款の補償条件

ICC(Institute Cargo Clauses/協会貨物約款)とは、ロンドンの保険市場で策定された国際的な貨物保険の標準約款で、外航貨物保険の補償範囲は主にこのICCに基づき(A)(B)(C)の3段階で設定される。

日本国内で販売される外航貨物保険の多くもICCの条件を採用しており、見積書や保険証券には「ICC(A)」などと明記されます。3条件はいずれも「輸送中の偶然な事故による貨物の損害」を対象にしますが、どの事故原因まで拾うかが異なります。ICC(A)は「除外事由に該当しない限り広く補償する」という発想(オールリスク型)で組み立てられ、ICC(B)とICC(C)は「約款に列挙された事故原因」を中心に補償する発想です。したがって、条件名だけを見て「Aは安心・Cは不安」と決めるのではなく、自社貨物がどんな原因で壊れやすいかを起点に読み替えることが選定の出発点になります。

もう一つ、契約前に切り分けておきたいのが「補償が始まる区間」と「危険が移転する時点」の違いです。ICCの条件は補償する事故原因を定めるもので、いつからいつまでの区間を保険が担うか、誰が保険を手配するかは、後述する売買条件(インコタームズ)と契約内容で決まります。両者を混同すると、条件を上げても肝心の区間が空く、という不足が起きやすくなります。加えて、補償の考え方(A・B・C)と、担保区間、保険金額(付保金額)、特約の3つは別々に決める要素です。ここを一枚の見積書の中で混同したまま契約すると、事故時に「条件は良かったのに区間や金額が足りなかった」という形で不足が表面化します。

外航貨物保険を検討する前提として、輸送そのものの規模感も押さえておきましょう。

1億9,133万TEU

日本海事センター「世界のコンテナ荷動き量の推移」(2026年5月更新)によると、2025年の世界の地域間コンテナ荷動き量は1億9,133万TEU(20フィートコンテナ換算)でした。出典:日本海事センター「世界のコンテナ荷動き量の推移」。荷動きが大きいほど積替え・荷役の回数も増え、年に数回の輸送でも1回の落下や水濡れが納期・再製造費に直結します。

輸出9兆5,116億円

財務省貿易統計(2026年5月速報)によると、日本の輸出額は9兆5,116億円、輸入額は9兆8,902億円でした。出典:財務省貿易統計(2026年5月分速報)。取引額が大きいほど、保険手配者・危険移転・証拠保全の線引きを売買契約ごとに文書で残す価値が高まります。

ICC(A)(B)(C)は何が違うのか──3条件の補償の考え方

まず3条件を、補償の考え方と保険料の傾向で俯瞰します。実際の支払可否は個別の約款・引受条件・事故状況によって決まるため、以下は一般的な傾向を示すものです。

ICC(A)(B)(C)の補償の考え方と傾向
条件補償の考え方概要保険料の傾向
ICC(A)オールリスク(除外事由以外を広く補償)約款に列挙された免責事由に該当しない限り、原則として偶然な損害を幅広くカバー高い
ICC(B)列挙リスク+自然災害系火災・爆発・座礁などに加え、地震・噴火・落雷・波ざらいなど自然災害に起因する損害をカバー
ICC(C)列挙リスク(限定的)火災・爆発・座礁・沈没・衝突・避難港での荷卸中の全損など、重大事故に限定してカバー低い

ICC(A)とICC(B)(C)の最も大きな構造的な違いは、立証の起点にもあります。ICC(A)は「免責事由に当たらない偶然な損害」を広く拾うため、被保険者はまず輸送中に偶然の事故で損害が生じたことを一応示せば足り、対象外だと主張する側(保険会社)が免責事由の該当を持ち出す形になりやすい条件です。一方ICC(B)(C)は「約款に列挙された事故原因」でしか支払わないため、被保険者は損害が列挙事故(火災・座礁・衝突など)に起因することまで踏み込んで示す必要が出てきます。同じ「盗難でない水濡れ」でも、どの条件で契約しているかで説明の入口が変わる、という点は見積段階では見えにくい差です。

いずれの条件でも、戦争・ストライキによる損害は基本的に免責で、必要に応じて別途「協会戦争約款(Institute War Clauses)」「協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses)」を付帯します。また、貨物固有の性質による損害(自然消耗・蒸発・腐敗など)や、荷送人の故意・過失による損害も共通の免責事由です。この「3条件に共通する免責」は、条件を上げても消えない点に注意してください。

リスク別に見るICC(A)(B)(C)の選び方

条件選定を速くするには、「どの事故原因を、どの条件が拾うか」を原因単位で並べるのが有効です。以下は代表的なリスクについて各条件のカバー傾向を整理した比較表です。○=一般的にカバー対象、×=一般的にカバー対象外を示し、実際の範囲は保険会社の約款や個別の引受条件で異なります。

リスク・損害原因別のICC(A)(B)(C)カバー傾向
リスク・損害原因ICC(A)ICC(B)ICC(C)
火災・爆発
船舶の座礁・沈没・転覆
輸送用具の衝突・脱線
避難港での貨物の荷卸し
共同海損・救助料
地震・噴火・落雷×
波ざらい(高波による甲板上の損害)×
海水・湖水・河川水の輸送用具等への浸入×
雨水・淡水による濡れ損(RFWD)×(要特約)×(要特約)
盗難・抜荷・不着××
積込み・荷卸し中の落下による1梱包の全損×
荷役中の破損(1梱包の全損に至らないもの)××
汗濡れ(船倉内の結露)××
他の貨物との接触汚損××
戦争・内乱×(別途付帯)×(別途付帯)×(別途付帯)
ストライキ×(別途付帯)×(別途付帯)×(別途付帯)
貨物固有の瑕疵・自然消耗×××
荷送人の不適切な梱包×××

ICC(A)が選ばれやすい貨物

ICC(A)は免責事由に列挙されない偶然な損害を広く拾うため、精密機械・電子部品・食品・医薬品など、輸送中の破損・汚損・盗難リスクが高い貨物で選ばれる傾向があります。表のとおり、盗難・荷役中の破損・汗濡れ・接触汚損はICC(A)でのみカバー対象になりやすく、これらが起きやすい高額・壊れやすい貨物ではICC(B)(C)との差が大きく効いてきます。精密機器や温度管理を伴う貨物では、条件に加えて貨物特性に応じた特約の要否も併せて検討します(関連:精密機器の輸送保険冷凍・温度管理貨物の外航保険)。

ICC(B)(C)が検討される貨物と、条件を下げる経済合理性の見方

ICC(B)やICC(C)は保険料がICC(A)より抑えられるため、鉄鋼・原材料・木材など、盗難リスクや小損害のリスクが比較的低い堅牢な貨物で検討されることがあります。ただし補償範囲が狭い分、想定外の損害が自社負担になります。たとえばICC(B)・(C)では雨水による濡れ損が担保されず、追加特約が必要になるため、雨季のアジア向け輸送では注意が必要です。ICC(B)でも、盗難や、1梱包の全損に至らない荷役中の破損は対象外です。

条件を下げる判断は、「保険料が安いから」ではなく、下げることで自社に戻ってくる損害の期待値と保険料の差額を並べて考えるのが実務的です。具体的には、①1回の輸送単位の貨物価額、②その貨物で現実に起こりうる損害原因(表で×になる原因のうち、自社ルートで実際に発生しうるもの)、③発生した場合の実損(修理費だけでなく再製造費・代替品の緊急調達費・納期遅延に伴う顧客対応費)、④年間の輸送回数、を掛け合わせて、条件を下げて浮く保険料と比較します。条件差の保険料が小さく、1回の実損が貨物価額の大部分に及ぶ貨物では、保険料を数万円節約したことで数百万円の自己負担を抱える、という非対称な結果になりやすい点に注意が必要です。逆に、単価が低く堅牢で、過去に列挙外の損害がほぼ出ていない貨物であれば、条件を下げる合理性が立ちます。この見極めには過去3〜5年の損害データが要になるため、条件を下げる相談ほど手元の事故履歴が効いてきます。

CIF・CIP・FOB・CFR・FCAでは誰が保険を手配するか

条件名を決める前に、売買契約書のインコタームズ(Incoterms 2020)を確認します。インコタームズによって、危険(リスク)が売主から買主へ移る時点と、保険手配の義務者が変わるためです。とくに費用負担と危険移転は一致しないため、CFRやFOBでは船積み前後に補償の空白が残りやすくなります(関連:FOB・CFR船積み前リスク)。

主なインコタームズと保険手配・危険移転
インコタームズ危険移転の目安保険手配義務保険条件の指定
CIF(Cost, Insurance and Freight)本船に積み込まれた時点売主が手配ICC(C)以上が義務(より広い条件は契約次第)
CIP(Carriage and Insurance Paid To)運送人へ引き渡した時点売主が手配ICC(A)が義務(Incoterms 2020で変更)
FOB(Free On Board)本船に積み込まれた時点手配義務なし買主が自主的に手配
CFR(Cost and Freight)本船に積み込まれた時点手配義務なし(運賃のみ売主負担)買主が自主的に手配
FCA(Free Carrier)運送人へ引き渡した時点手配義務なし買主が自主的に手配

CIF条件では売主にICC(C)以上の手配義務がありますが、買主としてはその補償範囲で自社貨物のリスクに足りるかを確認する必要があります。売主が最低条件のICC(C)で手配していれば、雨水・盗難・荷役破損などは空くため、買主側で補完的なカバーを検討することも選択肢です。一方、FOBやCFRでは売主に保険手配義務がないため、買主が自社でリスクに見合った条件を選び、船積み前区間も含めて空白が出ないように手配します。CIPはIncoterms 2020で売主のデフォルト手配条件がICC(A)に引き上げられた点も、CIFとの重要な違いです。

もう一段細かい落とし穴が、保険金額(付保金額)と通貨です。CIF・CIP契約で売主が付保する保険金額は、慣行上「CIF/CIP価額の110%」が最低ラインとされます。この10%上乗せは買主の希望利益や諸掛りを見込んだもので、逆に言えばそれを超える利益や国内の追加費用までは、この最低金額では届きません。買主として自社の損益を守りたい場合、売主任せの110%で足りるのか、それとも自社で上乗せの手当てをするのかを、契約段階で決めておく必要があります。さらに、売主手配の保険証券が想定と違う通貨・条件・免責歩合で組まれていることもあり、事故が起きてから証券の中身を初めて読む、という事態は避けたいところです。誰が・どの条件で・いくら付保しているかは、売買契約と保険証券を突き合わせて事前に確認するのが実務の勘所で、ここは保険を日常的に扱う代理店の視点が入ると抜けを拾いやすい領域です。

保険金は自動では支払われない──請求時に被保険者が説明すること

見落とされがちですが、外航貨物保険の保険金は、事故が起きれば自動で振り込まれるものではありません。損害が保険でカバーされるものだと判断され、金額が確定するまでには、被保険者(多くは荷主)側が一定の事実を資料で説明する過程があります。具体的には、保険をかけた貨物そのものに、保険が担保する区間・期間の中で、偶然かつ外来の事故によって損害が生じ、その損害額がいくらで、しかも免責事由には当たらない――という筋道を、書類でつなぐことが求められます。ICC(A)のオールリスクであっても、この説明が不要になるわけではなく、「対象外だと言われにくい」だけで、事故性と損害額の説明は残ります。

保険金請求で説明が必要になる主な事項と、それを支える資料
説明が必要な事項内容説明を支える主な資料
保険の目的への損害保険をかけた貨物そのものに損害が生じたこと保険証券、インボイス、パッキングリスト、貨物写真
偶然かつ外来の事故性自然消耗や固有の瑕疵ではなく、輸送中の外的な事故による損害であること事故状況の記録、サーベイレポート、運送人への損害通知書
保険期間・区間内での発生保険が担保する区間・期間の中で損害が起きたことB/L・AWB、輸送記録、到着時の検数・検品記録
損害額修理・再製造・廃棄などにかかる金額修理見積書、損害明細書、再調達価格の資料
免責事由に当たらないこと梱包不備・遅延・貨物固有の性質など、免責に該当しないこと梱包仕様書、出荷前検査記録、温度・湿度ログ

ここで効いてくるのが、免責の主張は保険会社側からも出てくる、という点です。たとえば水濡れ損害で、保険会社が「梱包が輸送に耐えるものでなかった」と見れば、梱包不備の免責が論点になります。このとき、梱包が適切だったこと、または損害が梱包以外の外的事故で生じたことを説明する材料は、荷主が出荷時に残した梱包仕様書や出荷前写真から出てきます。つまり、補償対象か免責か、金額がいくらか、通知が間に合っているか――結論を左右する材料の多くは、事故の前後に荷主側で作られる記録に依存します。「加入していれば大丈夫」ではなく「加入していて、かつ説明できる記録がそろっているか」で結果が変わるのが実際のところです。

さらに保険契約には、事故を知ったら遅滞なく保険会社へ通知する義務(通知義務)が定められているのが一般的で、通知や証拠保全が遅れると、損害の状況や因果関係の確認が難しくなり、その後の手続に影響することがあります。どの資料を、いつ、どの順番で残すかは、加入時点で決めておけるものです。証券の条件そのものだけでなく、事故時の立証まで見据えて設計を相談できるかどうかで、いざというときの回収可能性は変わってきます。

事故発生時に先に残す資料と初動の流れ

輸送事故では、復旧を急ぐほど証拠が消えます。損害を発見したら、修理・廃棄より先に「状態の保全」と「通知」を置くことが、保険会社・運送人・売買相手への説明を同じ資料でそろえる近道です。損害品を保険会社への連絡前に処分・修理すると、損害状況の確認が難しくなり、その後の手続に影響する場合があります。

輸送事故の初動タイムライン
順番行動目的
1修理・廃棄を止め、外装・封印・水濡れ・温度表示・コンテナ番号を撮影する事故時点の状態を残す
2保険会社または代理店へ速やかに連絡し、サーベイ(鑑定)の要否を確認する処分・修理前の承認を得る
3運送人・フォワーダーへ書面で損害通知(Letter of Protest)を出す運送人への求償権を守る
4保険証券、B/L(またはAWB)、インボイス、パッキングリスト、損害写真を集める損害額と因果関係を説明する
5損害明細書・修理見積書を、修理・再製造・廃棄で分けて保存する損害額を後から再現できるようにする

一般的に必要とされる書類は、保険証券(Insurance Policy/Certificate)、船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)、コマーシャルインボイス、パッキングリスト、損害明細書・修理見積書、損害写真(到着時の外装・開梱後の状態)、運送人への損害通知書、保険会社手配の鑑定人によるサーベイレポートです。どれも「後から集める」より「初動でそろえる」ほうが確実に残ります。特に、運送人への損害通知を怠ると、保険会社が保険金支払後に運送人へ求償する権利(代位求償)にも影響しうるため、貨物保険への通知と運送人への通知は別物として、両方を早い段階で行うのが安全です。

個別契約と包括予定保険(Open Policy)をどう使い分けるか

輸送のたびに1件ずつ契約する個別契約に対し、包括予定保険(Open Policy)は一定期間の輸送をまとめてカバーする契約形態です。定期的に輸送がある法人では、都度契約の手間を省きつつ申告漏れを防げます。

包括予定保険と個別契約の使い分け
観点包括予定保険(Open Policy)個別契約
対象一定期間の輸送を包括的にカバー単発・個別の輸送ごと
向く企業年間を通じて定期的に輸送がある法人不定期輸送・単発プロジェクト輸送
手間都度契約が不要(申告ベースで運用)輸送のたびに見積・契約が必要
準備しておくと良い資料年間の輸送計画、過去3〜5年の損害データ個別の貨物内容・輸送区間・条件

どちらが適するかは、年間の輸送頻度・金額と、過去の損害実績をもとに判断します。包括予定保険を検討する場合は、年間輸送計画と損害データがそろっていると、条件設定や保険料率の相談がスムーズです。運用面では、包括予定保険は「輸送を漏れなく申告する」ことが前提の契約であり、申告のルール(都度申告か定期申告か)や、担保する仕向地・品目の範囲を最初に詰めておくことが、後の「申告漏れで空いていた」という不足を防ぎます。輸送量が季節で大きく振れる企業では、想定を超える輸送が発生したときの取り扱いも含めて設計しておくと安心です。

類似する保険との違い

外航貨物保険は、名称の似た保険と混同されやすいため、対象と守る主体で整理します。

外航貨物保険と類似保険の違い
保険の種類対象主な違い
外航貨物保険国際輸送中の貨物ICC条件に基づく。海上・航空・複合輸送に対応
内航貨物保険国内輸送中の貨物国内輸送が対象。約款・条件体系が異なる
運送業者貨物賠償責任保険運送業者の賠償責任運送業者が加入するもので、荷主が加入するものではない。限度額が設定されることが多い
動産総合保険動産全般輸送中に限らず保管中も含む。カバー範囲の設計が異なる

運送業者の賠償責任には限度額が設定されていることが多く、貨物の全額が補償されるとは限りません。加えて、運送人の責任は法令や運送約款で減免・限定されている場面があり、事故があっても荷主が実損の全額を運送人から回収できるとは限らないのが実情です。荷主として自社の貨物を守るには、運送人の賠償責任をあてにするのではなく、自ら外航貨物保険に加入して自社の損益を直接カバーするのが一般的です。運送・貨物リスク全体の見取り図は運送業・貨物リスクの保険一覧もあわせてご確認ください。

外航貨物保険の条件を決めるためのチェックリスト

貨物特性に合った条件を選ぶときは、以下の情報が判断の分かれ目になります。貨物名だけでは判断が止まるため、売買条件・輸送区間・貨物価額・梱包・過去事故を同じ線の上でつなげて見ていくのが読み解きの基本です。どこから手をつけるか、いま把握できている範囲でどこまで決められるかは、ご相談の中で那由他保険テクノロジーズが一緒に整理します。

  1. 貨物の内容:品目・品番・単価・数量・梱包形態
  2. 輸送ルート:出発地(港・空港)→到着地、経由地の有無
  3. 輸送手段:海上(コンテナ/在来船)・航空・複合輸送の別
  4. 売買条件(インコタームズ):CIF/FOB/CIP/FCA など。地名と採用版が分かるもの
  5. 年間の輸送頻度と金額:年間保険金額の概算(包括契約検討の参考)
  6. 過去の損害実績:過去3〜5年の事故履歴・保険金請求履歴
  7. 現在の保険条件:加入中の保険証券のコピーまたは条件一覧
  8. 特約・付帯条件の希望:戦争・ストライキ約款の要否、特定の免責事項の有無

とくに包括予定保険(Open Policy)を検討する場合は、年間の輸送計画と過去の損害の傾向が、条件設定と保険料率を左右する材料になります。条件の選定は、補償の考え方だけでなく、担保区間・保険金額・特約・事故時の立証まで含めて設計する作業です。那由他保険テクノロジーズでは、いま分かっている貨物や輸送の状況をうかがいながら、どの材料をどの順番で確認していくか、どこが判断の分かれ目になるかを一緒に整理していきますので、検討の入口の段階からご相談ください。

那由他保険テクノロジーズによるICC条件・担保区間・付保金額の比較設計支援

チェックリストの項目をそろえても、会社ごとに残る実務が三つあります。第一に、CIF・CIP契約で売主が手配した保険証券(Insurance Certificate)の条件欄がICC(C)なのかICC(A)なのか、付保金額がCIF/CIP価額の110%止まりか、通貨と免責歩合(Excess/Franchise)が自社の損益に見合うかの確認です。第二に、ICC(A)から(B)(C)へ下げたときに浮く保険料と、比較表で対象外になる原因(盗難・抜荷、荷役中の破損、雨水・淡水による濡れ損、汗濡れ)が自社ルートで実際に起きた場合の実損との突き合わせです。第三に、包括予定保険(Open Policy)の申告方法と、担保する仕向地・品目・輸送手段の範囲、および倉庫間(Warehouse to Warehouse)担保の始期・終期が、実際の輸送工程と一致しているかの確認です。

那由他保険テクノロジーズでは、物流・貨物領域のリスク構造分析と補償ギャップ分析、保険プログラムの設計と調達支援、保険料コスト削減余地の分析を行っています。この記事の論点では、売買契約書のインコタームズ条項(規則名・地名・採用版)と、現在加入中の保険証券・保険証明書の条件欄、保険金額、通貨、免責歩合、担保区間、付帯している協会戦争約款・協会ストライキ約款を並べて照合します。あわせて、B/L・AWBに記載された実際の輸送区間、過去3〜5年の事故履歴と保険金請求記録、梱包仕様書と出荷前検査記録を突き合わせ、条件(A・B・C)/担保区間/保険金額/特約のどこに不足が出ているのか、どの原因が現在の条件では自社負担になるのかを分けて整理します。

整理の結果は、社内で決めることと外部へ照会することに切り分けてお渡しします。保険会社へ確認するのは、列挙外の原因に対する引受可否、戦争・ストライキ約款の付帯条件と対象地域、包括予定保険の申告ルールと想定超過分の取扱いです。売主・フォワーダーへ確認するのは、誰がどの条件でいくら付保しているか、110%を超える希望利益や国内諸掛りを買主側で手当てする必要があるかです。社内では、貿易実務・購買・経理の担当者間で、1回の輸送で自己負担できる実損額と、事故時に誰が撮影・損害通知(Letter of Protest)・書類収集を担うかを決めていただきます。条件を変えず現行契約を維持する、あるいは保険ではなく梱包仕様や輸送手段の見直しで対応するという判断も、比較の結果として提示します。

なお、実際の支払可否と支払額は各社の約款・引受条件・個別の事故状況によって決まり、条件変更によって保険料が下がることや補償が確実に足りることをお約束するものではありません。売買契約書そのものの解釈や関税・税務の取扱いは、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家へご確認ください。ご相談は、輸送している貨物と気になっている点をうかがうところから始めます。保険証券・保険証明書の条件欄、売買契約書のインコタームズ条項、直近1年の輸送実績(区間・回数・貨物価額)、過去3〜5年の事故履歴といった照合の材料は、どれをどこから確認するかを含めて那由他保険テクノロジーズが一緒に進めますので、論点が固まっていない段階でもそのままお声がけください。

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よくある質問(FAQ)

ICC(A)(B)(C)のうち、どれを選べばよいですか?

貨物の種類・価値・輸送ルート・売買条件(インコタームズ)によって適切な条件は異なります。高額品や破損しやすい貨物にはICC(A)が選ばれることが多く、原材料やバルク貨物ではICC(B)やICC(C)が検討されることもあります。条件を下げる場合は、浮く保険料と、対象外になる損害を自社で負担した場合の実損を並べて判断します。具体的な選定は、輸送している貨物と気になっている点を伝えるところから、保険代理店に相談されることをおすすめします。

ICC(A)のオールリスクとは、すべての損害がカバーされるということですか?

いいえ。ICC(A)は免責事由に列挙された損害を除き、偶然な損害を幅広くカバーする条件です。貨物自体の性質による損害(腐敗・自然消耗・酸化)、梱包不備に起因する損害、遅延による逸失利益、被保険者の故意による損害、戦争・ストライキによる損害などは対象外です。また対象内の損害でも、事故性や損害額は被保険者側が資料で説明する必要があります。

保険金は事故が起きれば自動的に支払われますか?

自動では支払われません。被保険者側が、保険をかけた貨物に、担保区間・期間の中で、偶然かつ外来の事故によって損害が生じ、その損害額がいくらで、免責事由に当たらないことを、保険証券・B/L・インボイス・損害写真・修理見積書などの資料で説明する必要があります。梱包不備などの免責は保険会社側から主張されることもあり、それに対する説明材料も出荷時の記録に依存します。

CIF条件で輸入する場合、買主側で別途保険を手配する必要はありますか?

CIF条件では売主にICC(C)以上の保険手配義務がありますが、その補償範囲と保険金額が自社の貨物リスクに対して十分かは確認が必要です。売主の付保は慣行上CIF価額の110%が最低ラインで、条件も最低限にとどまる場合があり、雨水・盗難・荷役中破損などが空くこともあります。補完的な保険が必要かどうかは、売買契約と売主手配の保険の内容をどこから確認するかを含めて、保険代理店にご相談ください。

包括予定保険(Open Policy)と個別契約の違いは何ですか?

包括予定保険は一定期間の輸送を包括的にカバーする契約で、輸送のたびに個別契約する手間が省け、申告漏れも防ぎやすくなります。年間を通じて定期的に輸送がある法人に適しています。一方、不定期の輸送や単発のプロジェクト輸送には個別契約が選ばれることがあります。年間の輸送頻度・金額と過去の損害実績をもとに、どちらの契約形態が適切か検討してください。

戦争やストライキによる損害はどうすればカバーできますか?

ICC(A)(B)(C)いずれの条件でも、戦争・ストライキによる損害は基本的に免責です。これらをカバーするには、別途「協会戦争約款(Institute War Clauses)」「協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses)」を付帯する必要があります。輸送先の地政学的リスクを踏まえ、付帯の要否を保険代理店と検討してください。

損害が発生した場合、まず何をすればよいですか?

まず修理・廃棄を止めて損害の状態を撮影し、保険会社または保険代理店に速やかに連絡してください。同時に、運送人に対して書面で損害通知(Letter of Protest)を行います。保険会社の指示を受ける前に損害品を廃棄・修理すると、損害状況の確認が難しくなり、その後の手続に影響する場合があります。保険証券・B/L・インボイス・損害明細も早い段階で集めておきます。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年7月3日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年7月3日

本記事は一般的な情報提供であり、特定商品の補償内容・引受可否・保険料・保険金支払を約束するものではありません。実際の取扱いは商品、約款、契約条件、事故状況、個別事情により変わります。法務・税務・会計の判断は、必要に応じて専門家へご確認ください。