法人向け損害保険の種類一覧|中小企業に必要な補償の選び方

法人向け損害保険は、保険の名前だけで追うと複雑に見えます。最初に見るべきなのは、会社のどの損失を守る保険なのかです。この記事では、法人向け損害保険を財物・賠償責任・人・利益/お金・サイバー/情報・車両/物流の6分類で整理し、業種別の優先順位、包括契約と個別契約の使い分け、証券診断で見る資料までつなげます。

Summaryこの記事のポイント

  • 法人向け損害保険は、種類名ではなく「どの損失を守るか」で6分類に分けると整理しやすくなります。
  • 財物・賠償責任・人・利益/お金・サイバー/情報・車両/物流は、守る対象も確認資料も異なります。
  • 業種別早見表は入口にすぎません。実際の優先順位は、証券、約款、売上高、従業員数、車両台帳、事故履歴で変わります。
  • 保険金は自動で支払われるものではなく、事故内容、損害額、因果関係、免責非該当を資料で説明できるかが実務上の分かれ目です。

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法人の損害保険は「6つのリスク分類」で整理すると選びやすい

法人向け損害保険の種類は多く、火災保険、施設賠償責任保険、PL保険、労災上乗せ保険、サイバー保険、自動車保険、貨物保険など、名称だけを並べると全体像がつかみにくくなります。そこで、まずは保険名ではなく、会社の損失がどこで発生するかを6分類で分けます。

リスク分類守る対象主な保険確認する資料
①財物建物、設備、什器、商品在庫火災保険、機械保険、建設工事保険、組立保険固定資産台帳、在庫表、賃貸借契約、設備一覧
②賠償責任第三者への賠償金、争訟費用施設賠償責任保険、PL保険、請負業者賠償責任保険、受託者賠償責任保険、D&O保険、雇用慣行賠償責任保険取引契約書、付保証明の要求、製品仕様書、業務範囲
③人従業員の業務災害、会社への賠償請求労災上乗せ保険、使用者賠償責任保険賃金台帳、従業員数、労災発生記録、就業規則
④利益・お金休業中の利益、固定費、売掛債権休業損失補償、企業費用・利益保険、取引信用保険決算書、月次売上、粗利率、固定費、売掛先一覧
⑤サイバー・情報データ、システム、漏えい対応費用、復旧費用サイバー保険、情報漏えい対応費用の補償情報資産、委託先一覧、セキュリティ体制、ログ保全体制
⑥車両・物流事業用車両、対人・対物事故、積荷、輸送中の損害事業用自動車保険、フリート契約、貨物保険、運送業者貨物賠償責任保険車両台帳、運転者一覧、事故履歴、貨物価額、運送契約

この6分類で整理すると、「保険に入っているか」ではなく「どの損失主体が守られているか」を見られます。たとえば、運送会社では車両事故、積荷、従業員災害、受託物の賠償が同時に関係します。EC事業者では、在庫、PL、サイバー、休業損失が重なります。分類ごとに資料を分けると、証券診断で重複と不足を見つけやすくなります。

法人向け損害保険とは|生命保険との違い

法人向け損害保険とは、事故、災害、賠償責任、システム停止など偶然の出来事によって会社に生じる経済的損害に備える保険です。経営者や従業員の死亡・医療に備える法人向け生命保険とは役割が異なり、損害保険は建物、設備、賠償責任、利益、データ、車両、積荷といった事業の損失主体ごとに設計します。

実務上の大きな違いは、損害保険の多くが1年契約・実損払いである点です。実損払いでは、あらかじめ定めた保険金額や支払限度額を上限に、実際に生じた損害額を資料で確認して支払額を判断します。契約しただけで満額が支払われるわけではありません。事業内容、売上、拠点、車両台数、従業員数が変われば、必要な補償も変わります。毎年の更改は、保険料を確認するだけでなく、事業の変化と証券のズレを直す機会です。

日本損害保険協会「損害保険とは?」では、損害保険の基本的な役割が整理されています。法人で見るときは、この一般的な損害保険の役割を、自社の資産、賠償、従業員、利益、情報、車両・物流へ分解して読むのが出発点になります。

【分類①】財物のリスクに備える保険

日本損害保険協会「種目別統計表(2025年4月〜2026年3月)」によると、火災保険の元受正味保険料は2,181,091百万円、前年比6.1%増です(2026年7月時点で確認。同協会の会員会社を集計した数値で、個人向け契約を含み、法人契約だけを取り出したものではありません)。財物は、法人向け損害保険の中でも多くの会社が最初に接する領域です。

法人向け火災保険(企業財産の保険)

法人向け火災保険は、建物、設備、什器、商品在庫が火災、落雷、破裂・爆発、風災、水災、盗難などで損害を受けた場合に備える保険です。個人向けの火災保険と異なり、法人では「建物」「設備什器」「商品」「内装造作」など、対象を分けて保険金額を設定します。

ここで結論を分けるのが、保険金額を再調達価額で設定しているか、時価で設定しているかです。古い工場や店舗を時価契約のままにしていると、事故後に再建・買替えに必要な資金と保険金額がずれることがあります。さらに、保険金額が実際の価値を下回っていると、一部損害でも比例てん補の対象になり、損害額の全額が支払われない設計になっていることがあります。証券を見るときは、建物、設備、商品ごとの保険金額と評価方法を、固定資産台帳や在庫表と並べて確認します。

賃借オフィスやテナントでは、建物そのものは貸主側の保険領域である一方、内装造作、設備、商品は借主側で備える領域になります。漏水などで貸主や他テナントに損害を与える場合は、財物保険だけでなく借家人賠償や施設賠償も確認します。原状回復義務がある物件では、内装を再構築する費用を見積もらずに保険金額を決めると、退去や営業再開時の資金計画にずれが出ます。

機械保険・工事の保険

機械保険は、生産設備の電気的・機械的事故に備える保険です。建設工事保険や組立保険は、建設中の建物や据付工事中の設備の損害に備えます。火災保険ではカバーしきれない、稼働中の機械故障や工事中の対象物を補う位置づけです。

製造業では、機械の停止が財物損害だけでなく納期遅延や休業損失へつながります。建設業では、工事中の対象物、第三者への損害、作業員の災害が別々の保険に分かれます。財物の分類だけで完結させず、後述する賠償責任、人、利益の分類と合わせて見ることが大切です。

地震・水災は証券上の対象外を先に見る

法人向け火災保険では、地震、噴火、津波による損害が基本補償の対象外となり、特約や別契約の検討が必要になる設計が一般的です。水災も、商品や契約条件によって対象範囲、免責金額、支払限度額が変わります。拠点が浸水想定区域にある会社や、設備の再調達に時間がかかる会社は、財物保険だけでなく、事業継続の資金計画も合わせて確認します。

【分類②】賠償責任のリスクに備える保険

日本損害保険協会「種目別統計表(2025年4月〜2026年3月)」では、賠償責任保険の元受正味保険料は789,313百万円です(2026年7月時点)。賠償責任は、財物のように「自社の物を直す」損害ではなく、第三者への賠償金や争訟費用に備える領域です。

賠償責任保険で見落とされやすいのは、事故後の順番です。事故を知ったら保険会社へ通知し、相手方との示談や賠償額の約束をする前に、契約上の手続きと保険会社の承認要否を確認します。保険金の支払可否は、自社に法律上の賠償責任があること、事故と損害の因果関係、損害額の妥当性、免責条項に当たらないことを資料で説明できるかに左右されます。

施設賠償責任保険

施設賠償責任保険は、事業所の施設管理や業務遂行中のミスで第三者に損害を与えた場合に備える保険です。店舗の看板が落下して通行人が負傷した、従業員が訪問先の備品を壊した、といった事故が典型です。店舗、事務所、倉庫、工場、訪問作業を持つ会社では基礎になることが多い保険です。補償範囲の考え方は施設賠償責任保険の解説記事でも整理しています。

PL保険(生産物賠償責任保険)

PL保険は、製造・販売した製品や提供した飲食物が原因で第三者に損害を与えた場合に備えます。製造業、食品販売、飲食業、ECで物販を行う会社では、製品の欠陥、異物混入、発火、食中毒などが論点になります。通常のPL保険だけではリコール費用が対象外になることがあり、製品回収、通知、廃棄、代替品発送をどこまで持つかは別途確認します。

請負業者賠償責任保険

請負業者賠償責任保険は、工事や作業の遂行中に第三者へ与えた損害に備えます。建設業、設備工事業、ビルメンテナンス業では、元請や発注者から付保証明を求められることがあります。既存契約があっても、現場ごとに要求される限度額や補償範囲を満たしていないと、着工や契約更新の段階で止まることがあります。

受託者賠償責任保険

受託者賠償責任保険は、顧客から預かった物を損傷・紛失した場合に備えます。修理業、倉庫業、クリーニング、運送、イベント運営など、他人の物を預かる業態で重要です。施設賠償だけでは「預かった物そのものの損害」が対象外になることがあり、預かり業務がある会社では証券上の受託物の扱いを確認します。

D&O保険・雇用慣行賠償責任保険

D&O保険は、役員が業務上の判断をめぐって株主、会社、第三者などから損害賠償請求を受けた場合の、役員個人の賠償金や争訟費用に備える保険です。非上場企業でも、M&A、資金調達、事業承継、取引先への説明責任の場面で論点になります。詳しくはD&O保険とはをご覧ください。

雇用慣行賠償責任保険は、ハラスメント、不当解雇、雇用差別などの労務トラブルに備えます。身体の傷害を中心に見る使用者賠償とは異なり、雇用管理上の請求を扱います。人に関するリスクと接続しますが、分類上は「第三者または従業員からの賠償請求」として賠償責任の枠で整理すると分かりやすくなります。

【分類③】人に関するリスクに備える保険

人に関するリスクでは、従業員の業務災害と、会社が負う民事上の責任を分けて見ます。政府労災があるから十分、という整理では足りません。政府労災は公的給付であり、慰謝料や逸失利益を含む民事賠償をすべて置き換えるものではないためです。

労災上乗せ保険(業務災害補償保険)

労災上乗せ保険は、業務中のケガや死亡に対し、政府労災に上乗せして給付する保険です。従業員への福利厚生としての意味と、事故後の会社の初期対応を支える意味があります。建設、運送、製造、介護など、現場作業や移動を伴う業種では優先度が高くなります。

厚生労働省「職場のあんぜんサイト(労働災害統計)」では、労働災害に関する統計が公開されています。自社で見るときは、業種別の災害傾向に加えて、作業内容、外注比率、現場数、夜間作業、車両運転の有無を確認します。

使用者賠償責任保険

使用者賠償責任保険は、業務災害について会社が安全配慮義務違反などを問われ、従業員や遺族から損害賠償請求を受けた場合に備えます。労災上乗せ保険が給付を上乗せする保険であるのに対し、使用者賠償責任保険は会社が負う賠償責任を補う保険です。

重大災害では、賠償金だけでなく、弁護士費用、調査費用、再発防止対応、取引先への説明も発生します。賃金台帳、就業規則、安全衛生管理の記録、事故報告書が整理されていないと、事故後の説明に時間がかかります。人のリスクは「従業員のための補償」と「会社への請求への備え」を分けて設計します。

【分類④】利益・お金のリスクに備える保険

財物保険で建物や設備を直せても、営業が止まっている間の売上減少や固定費は別の問題として残ります。利益・お金の分類では、休業中の利益、固定費、売掛債権を見ます。資金繰りに直結するため、事故後の復旧期間を現実的に見積もることが出発点です。

休業損失の保険(企業費用・利益保険)

休業損失の保険は、火災や設備事故で営業が止まった期間の、失われた利益や継続してかかる固定費に備えます。財物保険が建物や設備を直す費用を見るのに対し、休業損失の保険は止まっている間の損失を見ます。復旧に時間のかかる製造業、店舗ビジネス、宿泊業、物流拠点を持つ会社では重要度が上がります。詳しくは休業損失を補償する保険とは?でも整理しています。

この保険で結論を左右するのは、てん補期間や約定復旧期間の設定です。特注設備の再調達、建物の建て替え、代替拠点の確保に半年以上かかる会社が、短い期間で契約していると、復旧が長引いた分の損失を自社で持つことになります。事故後の請求では、平常時の売上、粗利率、固定費、事故がなければ得られたはずの利益を帳簿で説明します。月次試算表や売上台帳が整っていない会社ほど、立証に時間がかかります。

取引信用保険

取引信用保険は、販売先の倒産や支払不能による売掛債権の貸倒れに備える保険です。大口取引先への依存度が高い卸売業、製造業、商社、BtoBサービスでは、与信管理の一部として検討します。財物や賠償とは異なり、守る対象は物ではなく売掛金です。

取引信用保険では、取引先ごとに引受限度額が設定されることがあります。売上の大半を占める取引先ほど、希望する金額まで保全できるとは限りません。売掛先一覧、与信枠、支払条件、過去の遅延履歴を整理してから相談すると、見積や引受判断が進みやすくなります。

【分類⑤】サイバー・情報のリスクに備える保険

サイバー・情報の分類では、情報漏えい、システム停止、ランサム攻撃、サプライチェーン攻撃、調査・通知・復旧費用を見ます。車両事故や貨物事故とは事故の起点も必要資料も違うため、同じ分類に入れず、独立した分類として扱います。

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威の1位に「ランサム攻撃による被害」、2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が挙げられています(2026年7月時点)。サイバー・情報のリスクは、IT企業だけでなく、委託先やクラウドを使う一般企業にも関係します。

サイバー保険

サイバー保険は、サイバー攻撃や情報漏えいによる事故対応費用、損害賠償、システム停止による利益損害などに備える保険です。調査費用、通知費用、コールセンター費用、見舞金、復旧費用、法律相談費用などが論点になります。対象範囲は商品や契約条件によって変わるため、単に「サイバー保険に入っている」だけでは足りません。

事故後に特に効くのが、ログ保全と初動記録です。いつ、どの経路で、どの範囲の情報が影響を受けたのかを示せないと、調査費用や賠償、事業中断の説明が難しくなります。既知の脆弱性を放置していた、告知したセキュリティ体制と実態が違っていた、といった事情は、免責や支払減額の争点になることがあります。サイバー保険は、保険証券だけでなく、委託先一覧、情報資産台帳、バックアップ、認証設定、事故対応手順とセットで見ます。

【分類⑥】車両・物流のリスクに備える保険

車両・物流の分類では、事業用車両の対人・対物事故、車両損害、積荷、輸送中の損害、運送契約上の賠償を扱います。サイバー・情報とは別の分類です。営業車を数台だけ使う会社でも、従業員が運転する以上、事故対応、等級管理、車両台帳、運転者管理が保険設計に関係します。

日本損害保険協会「種目別統計表(2025年4月〜2026年3月)」では、自動車保険の元受正味保険料は4,695,996百万円、運送保険は86,759百万円です(2026年7月時点)。車両・物流は、サイバー・情報の補足ではなく、法人の損害保険で独立して確認すべき大きな領域です。

事業用自動車保険

事業用自動車保険は、業務で使う車両の対人・対物賠償、車両損害、搭乗者や人身傷害などに備える保険です。自賠責保険は強制保険ですが、業務使用の事故では任意保険の設計が実務上の中心になります。車両台数が一定規模になるとフリート契約となり、事故率や台数管理が保険料に反映されます。

営業車、配送車、社有車、役員車、従業員の持込車では、保険の見方が変わります。特に持込車やレンタカーを業務に使う場合、誰の保険でどこまで守るのかが曖昧になりやすい領域です。車両台帳、運転者一覧、使用目的、過去の事故履歴、ドライブレコーダーや安全運転管理の体制をそろえると、見積や事故対応の論点を整理しやすくなります。

貨物保険・運送業者貨物賠償責任保険

貨物保険や運送業者貨物賠償責任保険は、輸送中の貨物や、運送業務で預かった荷物の損害に備えます。荷主として自社の商品を運ぶのか、運送業者として他人の荷物を預かるのかで、見るべき保険が変わります。自動車保険の対物賠償だけでは、積荷そのものの損害が対象にならないことがあります。

物流リスクを見るときは、貨物価額、輸送ルート、保管場所、温度管理、荷主との契約、免責金額、1事故あたりの支払限度額を確認します。運送・物流業だけでなく、自社配送を持つEC、小売、食品、医療・介護、建設資材を運ぶ会社でも関係します。車両・物流は、車を持つ会社の「付け足し」ではなく、事故時に資金と取引先信用へ直結する分類です。

包括契約と個別契約はどちらで入るべきか

中小企業の実務では、財物、賠償責任、休業損失などを1本にまとめる事業活動包括保険と、リスクごとに個別契約で設計する方法のどちらを選ぶかが論点になります。どちらが常に有利という話ではありません。管理負担、補償の漏れや重複、限度額の柔軟性、事故時の請求しやすさを並べて考えます。

観点包括契約個別契約
管理負担更改日や証券がまとまりやすく、全体像を管理しやすい。契約ごとに更改管理が必要。代理店が分散すると把握しにくい。
漏れ・重複パッケージ内で整理しやすいが、対象外やサブリミットを見落とすことがある。リスクごとに設計しやすいが、同じ補償が二重になることがある。
限度額の柔軟性パッケージの範囲内で調整することが多い。特定リスクだけ限度額や特約を厚くしやすい。
向いている会社リスクが分散している中小企業、管理を簡素化したい会社。製造物、サイバー、車両、貨物など特定リスクが大きい会社。

判断の分かれ目は、自社の損失が特定の分類に偏っているかどうかです。たとえばECでは、在庫、PL、サイバー、休業損失が重なります。運送業では、車両、貨物、人、賠償責任が重なります。包括契約を土台にしつつ、突出した分類だけ個別契約や特約で厚くする設計が合う会社もあります。実際の有利不利は、証券、約款、保険料、限度額、免責金額を同じ条件で並べて比較します。

業種別・優先すべき保険の目安(早見表)

次の表は、6分類を業種別に当てはめるための入口です。◎は優先度が高い領域、○は事業内容により確認したい領域、△は該当する車両や設備がある場合に確認したい領域を示します。実際の設計では、取引契約、拠点、従業員数、車両台数、売上構成、事故履歴で変わります。

業種財物賠償責任利益・お金サイバー・情報車両・物流
建設業◎(請負)◎(工事車両・資材運搬)
製造業◎(PL)○(出荷・配送)
運送・物流◎(受託物・貨物)◎(車両・積荷)
IT・SaaS◎(IT賠償)△(営業車がある場合)
飲食業◎(PL・施設)○(配達・仕入れ)
小売・EC○(配送・在庫移動)
医療・介護◎(施設・専門職)○(送迎車両)
不動産管理◎(施設)△(管理車両がある場合)

表で◎が多いほど保険料を厚くする、という単純な話ではありません。たとえば車両を使う会社でも、全車両を自社保有しているのか、従業員の持込車を使うのか、外部配送に委託しているのかで保険の見方が変わります。早見表で当たりを付けた後、証券と社内資料に戻すことが大切です。

保険料と証券診断で見るべき資料

保険料を決める主な要素

法人向け損害保険の保険料は、業種、売上高、従業員数、建物面積、設備額、車両台数、支払限度額、免責金額、過去の事故歴などで変わります。同じ補償でも、免責金額をどう置くかで保険料と自己負担のバランスが変わります。小さな損害を自社で持ち、大きな損害に限度額を厚くする設計が合う会社もありますが、致命傷になる分類の限度額まで削ると、事故時の自己負担が大きくなります。

保険金の支払は立証で決まる

保険金は、事故を報告すれば自動で満額が振り込まれるものではありません。被保険者側が、事故が起きたこと、損害の内容と金額、事故と損害の因果関係、補償期間内・補償対象の事由であること、免責事由に当たらないことを資料で説明します。被害写真、修理見積、再調達見積、事故報告書、売上台帳、アクセスログ、車両事故報告、貨物価額の資料などが、分類ごとに必要になります。

この点が、保険代理店だから強く伝えるべき非対称性です。加入時に保険料と補償名だけを見ていても、事故後に必要な資料が残っていなければ、支払額や審査期間に影響します。証券診断では、どの保険に入っているかだけでなく、事故が起きたときに何を出せば説明できるかまで確認します。

証券診断でよく見つかる重複と不足

証券を6分類で並べると、重複と不足が見つかりやすくなります。たとえば、包括保険と単体の賠償保険で施設賠償が重なっている、労災上乗せはあるのに使用者賠償がない、ECを始めたのにサイバーとPLが旧来のまま、営業車が増えたのに車両台帳と保険対象が合っていない、といったパターンです。

不足は事故時の自己負担に直結し、重複は保険料の無駄につながります。どちらも証券を時系列で並べ、事業の変化と照らすことで見つけやすくなります。見直しの進め方は法人保険見直しチェックリストも参考になります。

見直しのタイミング

見直しのきっかけは、毎年の更改時だけではありません。売上や従業員数が大きく変わったとき、新規事業や新拠点を始めたとき、車両を増やしたとき、ECやクラウドサービスを始めたとき、M&Aや組織再編があったときは、契約期間中でも内容変更の検討対象になります。詳しくは法人保険の見直しタイミング保険代理店の選び方をご覧ください。

証券診断で見る資料

証券診断や複数社比較では、次の資料をもとに、6分類ごとの重複・不足を確認します。

  • 現行の保険証券、明細、約款、満期案内を全件そろえる。
  • 決算書、売上高、月次売上、粗利率、固定費の資料を用意する。
  • 固定資産台帳、在庫表、設備一覧、拠点一覧を整理する。
  • 賃金台帳、従業員数、就業規則、労災・事故記録を確認する。
  • 取引契約書、付保証明の要求、製品仕様書、業務委託契約を確認する。
  • 車両台帳、運転者一覧、事故履歴、貨物価額、運送契約を整理する。
  • 情報資産、クラウド利用、委託先一覧、ログ保全体制、事故対応手順を確認する。

これらの項目は、保険料の比較だけでなく、事故時にどの資料で保険金請求を説明するかにもつながります。自社だけで判断しにくいのは、複数の分類にまたがる空白です。たとえば、ECの事故は在庫、PL、サイバー、休業損失、配送が同時に関係します。運送業の事故は車両、貨物、人、賠償責任が重なります。6分類で重複・不足・限度額・免責を並べる作業は、お問い合わせのなかで一緒に進める部分です。

那由他保険テクノロジーズによる6分類の証券突合と包括・個別契約の比較支援

前掲の項目を見渡しても、会社ごとに残る実務が三つあります。第一に、包括保険の施設賠償と単体の賠償保険が重なっているのか、労災上乗せはあるのに使用者賠償が抜けているのかは、証券ごとの支払限度額、サブリミット、免責金額、対象外事由を同じ様式に並べ替えないと判別できません。第二に、包括契約と個別契約のどちらが自社に合うかは、保険料の総額だけでは決まらず、突出した分類の限度額を厚くできるかで結論が変わります。第三に、事故時に支払を説明できるかは、証券ではなく社内に残っている記録の側で決まります。

那由他保険テクノロジーズは、法人リスクコンサルティングと保険プログラムの見直しとして、この突合と比較を支援します。現行の保険証券、明細、約款、満期案内を財物・賠償責任・人・利益/お金・サイバー/情報・車両/物流の6分類へ割り当て、被保険者、補償対象、支払限度額とサブリミット、免責金額、対象外事由、通知・更新条件を一枚の比較表にします。そのうえで、財物は保険金額と評価方法(再調達価額か時価か)を決算書の固定資産明細・在庫表・拠点一覧と、賠償は取引契約書や発注者から求められる付保証明の限度額・追加被保険者・期間と、人は労災上乗せの給付設計と使用者賠償の有無・限度額を就業規則と労災記録と、利益はてん補期間と約定復旧期間を固定費・粗利率・設備の再調達リードタイムと、サイバーは告知したセキュリティ体制を委託先一覧とログ保全の実態と、車両・物流は対象車両と積荷の範囲を車両一覧・運転者一覧・使用目的・貨物価額・運送契約と照合します。

この作業で、社内で確定できる項目と、保険会社へ照会しないと確定しない項目が分かれます。社内側は、決算書と固定資産明細・固定費が経理、就業規則と労災記録が総務人事、取引契約書と付保証明の要求水準が営業・購買、委託先とログ保全が情報システム、車両と運転者の現況が車両管理の担当に分かれます。保険会社側へは、サブリミットの内訳、地震・水災の対象範囲と免責金額、リコール費用や受託物が対象になるかどうか、フリート契約の等級と台数変更の扱いを照会事項として整理し、回答が届くまで結論を保留する項目として残します。

比較の結果、免責金額を引き上げて小さな損害を自社で持ち、致命傷になる分類の限度額へ配分し直す案が保険料の削減余地として見えることもあります。反対に、現行契約のまま次の更改まで変更しない方が合理的だと確認できることもあります。那由他保険テクノロジーズが行うのは削減余地の分析と補償条件の比較・設計・調達の支援であり、保険料が下がることや補償が適正化されることを保証するものではありません。保険料の損金算入など税務上の取扱いは税理士に、安全配慮義務や労務トラブルの法的評価は弁護士・社会保険労務士にご確認ください。まだ何も整理できていない段階からで構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。お話をうかがいながら一緒に確かめ、6分類の比較表と保険会社への照会事項の一覧までを作成してお渡しします。

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よくある質問

中小企業がまず入るべき損害保険はどれですか?

多くの業種で入口になるのは、財物と賠償責任です。ただし、従業員災害が大きい業種では人の分類、営業停止が資金繰りに直結する会社では利益・お金の分類、データやクラウドを扱う会社ではサイバー・情報、車両や配送を使う会社では車両・物流も早い段階で確認します。業種別早見表で当たりを付け、証券と社内資料で優先順位を決めます。

自動車保険や貨物保険はサイバー保険と同じ分類ですか?

同じ分類ではありません。サイバー・情報はデータ、システム停止、情報漏えい、調査・通知・復旧費用を見る分類です。車両・物流は、事業用車両、対人・対物事故、積荷、輸送中の損害、運送契約上の賠償を見る分類です。必要資料も異なるため、この記事では6分類のうち別の分類として扱います。

法人の損害保険の保険料は経費になりますか?

事業に関する損害保険の保険料は、損金算入できる場合があります。ただし契約形態、保険の種類、補償対象、積立性の有無などで税務上の取扱いが変わることがあります。税務判断は、契約内容を示したうえで税理士などの専門家に確認してください。

個人事業主でも法人向け損害保険に加入できますか?

個人事業主でも、事業実態や商品条件に合えば加入できる商品があります。店舗、設備、在庫、業務上の賠償、車両、サイバーなど、事業で発生する損失を分類して確認します。加入可否や引受条件は商品・保険会社・事業内容で変わるため、証券や事業資料をもとに個別確認します。

包括保険1本にまとめれば保険料は下がりますか?

管理の手間や補償漏れを減らしやすい一方、保険料が下がるとは限りません。特定の分類に大きな損失が集中する会社では、個別契約で限度額や特約を調整した方が合うこともあります。包括契約と個別契約は、保険料だけでなく限度額、免責金額、対象外、事故時の請求資料まで並べて比較します。

保険の種類が多いほど安心ですか?

種類が多くても、同じ補償が重複していたり、肝心な分類に空白が残っていたりすることがあります。見るべきなのは本数ではなく、6分類ごとに、どの損失をどの証券が守り、どの限度額・免責・対象外が付いているかです。証券診断では、種類の数よりも損失主体ごとの空白を確認します。

見積を早く出すには何を準備すればよいですか?

保険証券、決算書、売上高、固定資産台帳、在庫表、賃金台帳、従業員数、取引契約書、過去の事故記録をそろえます。車両や物流がある会社は、車両台帳、運転者一覧、貨物価額、運送契約も用意します。サイバー・情報の分類では、情報資産、委託先、セキュリティ体制、ログ保全の状況も確認します。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年7月7日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年8月4日

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。特定の保険商品の勧誘を目的としたものではありません。補償内容、引受可否、保険料、保険金の支払可否は、商品内容、約款、契約条件、事故状況、個別事情により異なります。税務・労務・法務・会計に関する判断は、必要に応じて税理士・弁護士・社会保険労務士等の専門家へご確認ください。