飲食店に必要な保険6種類|食中毒・火災・休業への備え

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結論|飲食店は「火災・賠償・休業・人」の4方向で分けて備える

飲食店の保険は「火災保険に入っているから大丈夫」では足りません。厨房火災による設備・内装・在庫の損害、食中毒や異物混入による賠償、来客の転倒、従業員のケガ、営業停止中の固定費、予約・決済システムの停止まで、損失の出どころは分かれています。まずは火災・賠償・休業・人の4方向にリスクを分解し、どの損失をどの保険で見るかを一覧で押さえることが出発点です。

飲食店で起きる事故は、ひとつの出来事が複数の損失を同時に発生させます。たとえば厨房火災なら、焼損した設備の修理費(財物)と、営業を止めている間の粗利益減少や家賃・人件費(休業損失)が同時に走ります。食中毒なら、被害を受けたお客さまへの賠償と、行政による営業停止に伴う休業損失が並行します。だからこそ、保険名を横に並べて覚えるのではなく、「誰への・どんな損失か」で分けて設計すると、抜けと重複が見えてきます。

もうひとつ、契約前に知っておきたいのが、保険金は事故が起きれば自動的に振り込まれるものではない、という点です。保険金の請求では、被保険者である店側が、事故が起きた事実・損害の内容と金額・事故と損害の因果関係・発生した時期・そして免責事由に当たらないことを、自分で説明し裏づける立場に置かれます。同じ火災・同じ食中毒でも、証券のどの欄に、いくらの金額で、どんな特約を付けていたかによって、出る保険金は変わります。「入っていたのに思ったほど出なかった」の多くは、この設計と立証の準備の差から生まれます。

この記事での「4方向」とは:火災=店舗財物・在庫の復旧、賠償=第三者(来客・貸主)への損害賠償、休業=営業停止中の粗利益と固定費、人=従業員のケガや労災上乗せ。この4つにサイバー(予約・決済停止)を加えて点検します。補償の対象範囲・免責・支払可否は、商品・約款・契約条件により異なります。

Summaryこの記事のポイント

  • 飲食店の保険は「火災・賠償・休業・人」に予約・決済停止を加えた損失主体で分けると、必要な6種類が整理できます。
  • 食中毒・異物混入は賠償(PL/生産物賠償)と営業停止に伴う休業損失を分けて確認します。ひとつの保険でまとめて出るわけではありません。
  • 火災後に残るのは修理費だけでなく、営業停止中の粗利益・家賃・人件費です。休業補償を付けていなければ対象外になることがあります。
  • 保険金は自動では出ず、店側が事故・損害・金額・因果関係・免責非該当を説明する必要があります。免責金額・支払限度額・通知義務・証拠保全で結論が変わります。
  • 開業時・複数店舗展開時は、賃貸借契約・固定資産台帳・店舗別売上・衛生記録・勤務表を先にそろえておくと、保険金額の過不足を判断しやすくなります。

公的統計で見る飲食店の食中毒と火災リスク

「起きたらどれくらいの規模になるか」を、公的統計で確認しておきます。件数と損害額の大きさは、備えるべき損失の桁を判断する材料になります。飲食店の場合、食中毒と火災はいずれも発生頻度が低くない一方、一度起きると賠償・財物・休業が同時に走るため、自己資金だけで抱えるには重い性質を持ちます。

厚生労働省「食中毒統計資料(令和7年食中毒発生状況)」によると、2025年の食中毒は全国で1,172事件・患者24,727人・死者2人でした。うち原因施設が飲食店だったものは658事件・患者11,724人で、原因施設が判明した事件の66.8%を占めます。この割合の高さは、賠償と営業停止の両面を想定した備えが飲食店の実務課題であることを示しています。(出典:厚生労働省「食中毒統計資料」)

総務省消防庁「令和7年(1月~12月)における火災の状況(概数)について」(令和8年5月28日公表)によると、2025年の総出火件数は40,783件、うち建物火災は22,345件、火災による損害額は1,053億9,503万円でした。全国でこれだけの火災と損害が発生している以上、店舗財物の復旧費だけでなく、営業停止中の固定費まで見込んでおく必要があります。(出典:総務省消防庁「消防統計(火災統計)」)

この2つの統計は、飲食店が保険で移すべき損失の「桁」を示しています。食中毒は複数の来客が同時に被害を受けやすく、一件あたりの賠償・見舞・営業停止が積み上がります。火災は損害額の総量が大きく、内装・厨房設備を原状回復するだけでも数百万円から千万円単位になりやすい業種です。頻度は低くても、発生時の一撃が資金繰りを直撃する損失は、自己資金で抱えるより保険で移すほうが経済合理的だと判断しやすくなります。

飲食店に必要な保険6種類を同じ軸で比べる

下表は、飲食店が検討対象にしやすい6種類の保険を、主なリスク・対象になる損失・確認資料の同じ軸で比べる表です。補償範囲は商品・約款により異なります。

飲食店に必要な保険6種類を、主なリスク・対象損失・確認資料で比べる
保険主なリスク対象になる損失確認資料
火災保険/店舗総合保険火災、水災、設備・什器の損害建物・内装・厨房設備・什器・商品の復旧費固定資産台帳、購入明細、賃貸借契約
PL保険/生産物賠償責任保険食中毒、異物混入提供後の飲食物が原因の対人・対物賠償衛生管理記録、仕入伝票、苦情・診断書
施設賠償責任保険来客の転倒、設備不備施設の管理不備による第三者への対人・対物賠償設備点検記録、事故報告、事故写真
休業補償/利益補償火災・食中毒等による営業停止営業停止中の粗利益減少と継続する固定費月次売上、粗利益率、家賃・人件費資料
業務災害補償保険従業員のケガ、労災の上乗せ政府労災に上乗せする補償・使用者賠償勤務表、雇用形態一覧、事故状況メモ
サイバー保険予約・決済・顧客情報の停止や漏えいPOS・予約・キャッシュレス停止に伴う損害・費用利用システム一覧、決済・予約の契約内容

この表は「6種類すべてに入る」ためのものではなく、自店のリスクに対してどの損失をどの資料で説明するかを早く決めるための整理です。同じ「賠償」でも、食中毒(PL)と来客の転倒(施設賠償)では証券上の対象が違う点に注意してください。

表の右端に「確認資料」を置いているのには理由があります。保険金請求では、被った損害を店側が数字で説明できるかどうかが結論を左右します。内装や厨房設備の損害なら固定資産台帳と購入明細、休業損失なら月次売上と粗利益率、食中毒の賠償なら衛生管理記録と診断書といったように、あらかじめ損害を裏づける資料の所在を決めておくことが、事故時の交渉を早めます。逆に、これらが手元にないと、補償を付けていても損害額を主張しきれず、限度額の範囲内でも支払いが実額に届かないことがあります。どの資料で何を説明するかは、契約設計と同じくらい重要です。

食中毒・異物混入はPLと営業停止を分けて見る

飲食店で特に意識したいのが、食中毒や異物混入です。ここは「賠償」と「営業停止による休業損失」が同時に走るため、ひとつの保険でまとめて出ると考えると抜けが生じます。

提供した飲食物が原因でお客さまが健康被害を受け、店側が損害賠償責任を負った場合は、PL保険(生産物賠償責任保険)などで備えるのが一般的です。一方、店舗の設備不備でお客さまがケガをした場合は施設賠償責任保険の領域で、対象が異なります。「賠償」とひとくくりにせず、原因が飲食物なのか施設なのかで証券欄を分けて確認してください。

ここで実務上の落とし穴になりやすいのが、賠償保険は「店に法律上の賠償責任があること」を前提に動くという点です。お客さまの体調不良が自店の飲食物に起因すること、つまり因果関係を、店側が説明できなければ、保険での対応も進みにくくなります。保健所の調査、医師の診断書、症状の発生時期と喫食履歴の突き合わせ、検便や検食の記録といった証拠が、後から因果関係を裏づける材料になります。検食(提供した食品の一部を一定期間保存する運用)や仕入伝票、加熱・温度管理の記録を平時から残しているかどうかで、事故後の立証の難易度は大きく変わります。証拠が乏しいまま示談だけ先行させると、保険会社との調整で不利になることもあるため、事故を認識した時点での証拠保全と、契約に定められた通知(事故の連絡)を早めに行うことが実務の要になります。

さらに、食中毒の発生に伴う行政処分・営業停止・休業損失は、賠償とは別に確認が必要です。保健所による営業停止中は売上が止まりますが、この間の粗利益減少や固定費は休業補償・利益補償を付けていなければ対象外となる場合があります。加えて、休業補償には「対象となる事故」が定められており、火災など財物損害を伴う事故のみを対象とする設計だと、財物の損壊を伴わない食中毒の行政処分による休業が対象に含まれないことがあります。食中毒や感染症を起因とする営業停止まで見込むなら、その事由が休業補償の対象事故に入っているかを、証券と約款で個別に確認する必要があります。どこまでが対象になるかは商品・特約・約款により異なるため、名前が似ていても中身は同じではありません。事故時に賠償額や因果関係、休業期間を説明できるよう、平時から衛生管理記録・仕入伝票・提供記録を残しておくことが役立ちます。賠償の全体像は「施設賠償責任保険とは?補償範囲と必要な業種・保険料の考え方」も参考になります。

来客転倒・借家人賠償・店舗財物は証券欄が違う

「来客のケガはすべて施設賠償で出る」と考えがちですが、実際は原因や対象物によって動く証券欄が異なります。飲食店では、次の3つを分けて確認します。

  • 施設賠償責任保険(対第三者):床の段差や設備不備で来客が転倒しケガをし、店側が賠償責任を負った場合の対人・対物賠償。対象は「第三者への賠償」です。
  • 借家人賠償責任(対貸主):借りている店舗を火災・水濡れなどで損壊させ、貸主への原状回復・賠償が必要になった場合の備え。賃貸借契約で加入を求められることがあります。
  • 店舗財物(自社の財産):内装・厨房設備・什器・商品・屋外設備(看板等)など、自店の財産そのものの損害。火災保険・店舗総合保険の対象で、賠償とは別枠です。

同じ火災でも、「貸主への賠償」は借家人賠償、「自店の内装・設備の復旧」は店舗財物と、証券上の欄が分かれます。特に内装・厨房設備・什器は評価額の設定が重要で、実際の復旧費より低い保険金額だと、事故時に不足が残ることがあります。

この財物の金額設定には、もう一段の落とし穴があります。ひとつは、評価の基準が「時価」か「再調達価額(同等のものを新たに用意するのに必要な額)」かで、受け取れる金額が変わる点です。時価ベースでは経年による減価が差し引かれるため、古い厨房設備ほど支払額が復旧の実費より小さくなりがちです。もうひとつは、保険金額を実際の価値より低く設定していると、損害の一部しか支払われない「一部保険」となり、比例して削られる(比例てん補)扱いになる契約がある点です。つまり、金額を低く抑えれば保険料は下がりますが、事故のときに自己負担が大きく残る設計になり得ます。固定資産台帳や購入明細をもとに、対象物と金額を欄ごとに確認し、時価か再調達価額か、免責金額(自己負担額)はいくらか、屋外の看板や空調室外機まで対象に含まれているかまで、証券の記載で押さえておくことが有効です。

火災後に残る固定費と再開費用をどう見るか

厨房火災が起きると、焼損した設備の修理見積、内装復旧、廃棄した冷蔵在庫、仮営業やデリバリー切替の費用、そして営業停止中も払い続ける家賃・人件費が同時に発生します。ここで大切なのは、「物を直すお金」と「止まっている間の損失を埋めるお金」を分けて考えることです。

火災保険(店舗総合保険)は、建物・内装・厨房設備・什器・商品などの財物損害を補償するのが基本です。しかし、火災や食中毒で店を閉めている間の売上減少(粗利益の減少)や、家賃・人件費などの固定費は、休業補償・利益補償を付けていなければ対象外となる場合があります。休業補償の対象事故、てん補期間(補償される期間)、粗利益の算定方法は商品・特約により異なるため、証券と約款で確認してください。

休業損失の見積もりでは、てん補期間の考え方が特に効いてきます。てん補期間は多くの場合、事故発生から復旧までに通常必要と見込まれる期間を上限として設計され、店側が意図せず再開を遅らせた分まで無制限に支払われるわけではありません。飲食店の復旧は、設備の発注から据付、内装工事、保健所の再検査、場合によっては消防や設備の再確認まで工程が積み重なり、想定より長引きやすい業種です。てん補期間が実際の復旧期間より短ければ、後半の休業損失は自己負担として残ります。逆に、休業期間や失われた粗利益は、店側が過去の売上・粗利益率をもとに説明する必要があるため、直近の月次売上や客数の記録がないと、算定の根拠を示しにくくなります。「止まっている期間×失われる粗利益+残る固定費」という規模感に加えて、その期間と金額を数字で裏づけられるかまでを、契約前に点検しておくと安心です。詳しくは「休業損失を補償する保険とは?火災保険だけでは足りない理由」も参考になります。

開業時・複数店舗展開時に先にそろえる資料

開業や多店舗展開のタイミングでは、保険金額を「なんとなく」で決めず、次の資料を先にそろえて過不足を判断します。

  • 賃貸借契約:借家人賠償など、契約で求められる保険の有無と条件を確認します。
  • 固定資産台帳・購入明細:内装・厨房設備・什器を適切な評価額で補償できているかを見ます。
  • 店舗別の売上・粗利益率:休業損失の算定基礎になります。多店舗では店舗ごとに条件が違うため、一覧で分けます。
  • 衛生管理記録:食中毒発生時の説明資料になり、平時からの整備が事故対応を左右します。
  • 勤務表・雇用形態一覧:アルバイト・パートを含む労災上乗せや使用者賠償の検討に使います。

開業時に迷いやすいのが、保険金額をどこに置くかです。売上見込みから逆算しがちですが、事故で効いてくるのは「止まっても出ていくお金」と「元に戻すのに要るお金」です。内装・厨房設備の再取得費、廃棄する在庫、家賃・人件費・リース料といった固定費、そして再開までの想定期間を先に並べ、そこから財物と休業の保険金額を決めると、過不足が見えやすくなります。開業直後は自己資金の余力が小さく、事故の一撃を吸収しにくい時期でもあるため、頻度は低くても発生時の損失が大きい火災・食中毒・休業を優先的に押さえる考え方が合理的です。

複数店舗を展開する場合、本部一括の包括契約でも、店舗ごとに売上・設備・在庫・賃貸条件・休業時の代替営業の可否が異なります。ある店舗の設備を基準に金額をそろえると、規模の大きい店舗で財物や休業の金額が不足し、小さい店舗では過剰になることがあります。包括契約は事務の一本化や条件の統一という利点がある一方、店舗ごとの実態に金額が合っているかは別問題です。店舗別に保険金額と休業期間を確認し、一括契約と個別契約のどちらが適切かを判断してください。予約・決済システムの停止(サイバー)については、利用しているPOS・予約・キャッシュレスの契約内容を整理し、停止時にどの損害を保険で見るかを別途確認します。全体像の整理は「法人向け損害保険の種類一覧」が参考になります。

事故別に「どの保険が動くか」を並べて確認する

下表は、飲食店で起きやすい事故ごとに、主に動く保険・見る損失・準備資料を並べたマトリクスです。同じ事故で複数の保険が同時に動く点に注目してください。

事故別に、主に動く保険と見る損失・準備資料を並べる
事故・トラブル主に動く保険見る損失準備資料
食中毒・異物混入PL/生産物賠償+休業補償来客への賠償+営業停止中の粗利益減少衛生管理記録、仕入伝票、月次売上
火災・水災火災保険/店舗総合+休業補償+借家人賠償財物復旧+休業損失+貸主への賠償固定資産台帳、修理見積、賃貸借契約
来客の転倒・対物損壊施設賠償責任保険第三者への対人・対物賠償事故報告、事故写真、設備点検記録
従業員のケガ(労災)業務災害補償保険(労災上乗せ・使用者賠償)政府労災の上乗せ、賠償責任勤務表、雇用形態一覧、事故状況メモ
予約・決済システム停止サイバー保険停止・漏えいに伴う損害・復旧費用利用システム一覧、決済・予約の契約

ひとつの事故で複数の保険が動くため、「どれか1本入っていれば安心」とは言えません。事故別に、どの損失を自社で持ち、どの損失を保険で移すかを決めておくと、証券の過不足が見えます。

このマトリクスは、事故が起きたときにどの証券から損害を請求するかの見取り図にもなります。火災で財物・休業・借家人賠償が同時に動くケースでは、財物損害は固定資産台帳と修理見積、休業損失は月次売上、貸主への賠償は賃貸借契約と、それぞれ別の資料で別の相手に説明する構図になります。どの損失をどの証券で・どの資料で立証するかを事前に割り当てておくと、事故直後の混乱の中でも請求の抜けを防ぎやすくなります。逆にこの対応づけがないと、加入している補償を使い切れないまま示談や復旧が進んでしまうことがあります。

よくある誤解|火災保険だけ・PLだけ・本部一括だけ

飲食店の保険では、次のような思い込みが対象外の見落としにつながります。いずれも契約内容によっては当てはまりません。

  • 火災保険に入っていれば食中毒も補償される:食中毒の賠償はPL(生産物賠償)の領域で、火災保険の財物補償とは別枠です。
  • 食中毒の休業損失は自動的に支払われる:休業補償・利益補償を付けていなければ、営業停止中の損失が対象外になることがあります。対象事故に食中毒が含まれるかも確認が必要です。
  • アルバイトのケガは政府労災だけで十分:上乗せの業務災害補償や、安全配慮義務違反による使用者賠償は別途の検討対象です。
  • 来客のケガはすべて施設賠償で支払われる:原因が飲食物なら施設賠償ではなくPLの領域になるなど、原因で動く保険が変わります。
  • 本部一括の証券だけでよい:店舗ごとに売上・設備・賃貸条件が違うため、店舗別の保険金額と休業期間の確認が必要です。

これらの誤解に共通するのは、「保険に入っている」ことと「その損失が実際に支払われる」ことを同じものだと考えてしまう点です。実際には、対象となる事故か、免責事由に当たらないか、支払限度額の範囲内か、契約に定められた通知や書類提出の義務を果たしているか、といった条件を一つずつ満たして初めて支払いに至ります。たとえば通知が遅れて損害の拡大や事実確認が困難になった場合や、証拠が残っていない場合には、対応が制限されることもあります。いずれのケースも、証券・約款で対象事故・免責・てん補期間・支払限度額・通知義務を確認することが欠かせません。実際の支払可否は約款および引受保険会社の判断によります。こうした約款の読み解きと自店のリスクの突き合わせは、経営者だけで完結させると見落としが生まれやすい領域で、契約前に第三者の視点で棚卸しする合理性があります。点検の進め方は「法人保険見直しチェックリスト」が参考になります。

設計で確認する項目と相談の進め方

証券の過不足は、財物の損害と休業損失を説明できる情報に照らして診断します。実務では、次の項目を順に確認していきます。

  • 店舗賃貸借契約(借家人賠償の要否・条件を確認するため)
  • 現在加入している保険証券(重複・不足を洗い出すため)
  • 固定資産台帳・購入明細(内装・厨房設備・什器の評価額を確認するため)
  • 直近12か月の月次売上・客数・粗利益率(休業損失の算定基礎)
  • 家賃・人件費・リース料など、休業中も残る固定費
  • 食材・酒類・備品の棚卸表と仕入先一覧
  • 衛生管理記録、過去の事故・クレーム履歴

これらをもとに、「どの損失を自社で持ち、どの損失を保険で移すか」を店舗財物・賠償・休業損失の順に棚卸しします。補償の重複・不足を整理し、火災・賠償・休業・人の4方向で過不足を確認します。ここまで見てきたように、飲食店の保険は「どの証券のどの欄に、いくらの金額で、どんな特約と免責で入っているか」で結論が変わり、事故時には店側が損害と因果関係を数字で説明する立場に立ちます。加入の有無だけでなく、金額の妥当性・対象事故・免責・限度額・立証資料までを一度に点検することは、複数の商品・約款をまたぐため手間がかかりますが、そこを整理しておくことが、いざというときに補償を使い切れるかどうかを分けます。当社の無料の保険策定支援では、この棚卸しを保険代理店の視点で一緒に行い、証券と約款、自店の売上・設備・賃貸条件を突き合わせて過不足を可視化します。どこから手をつけるか決まっていない段階でも、お話をうかがいながら論点を一緒に整理しますので、気になる点からお気軽にご相談ください。

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よくある質問

飲食店に必要な保険は何種類ですか?

本記事では、火災保険(店舗総合)、PL/生産物賠償責任保険、施設賠償責任保険、休業補償/利益補償、業務災害補償保険、サイバー保険の6種類に分けて整理しています。ただし6種類すべてに入ることが目的ではなく、火災・賠償・休業・人に予約・決済停止を加えた損失主体で、自店に必要な補償を判断することが大切です。

食中毒はPL保険と火災保険のどちらで備えますか?

提供した飲食物が原因でお客さまが健康被害を受け、店側が賠償責任を負った場合は、PL保険(生産物賠償責任保険)などで備えるのが一般的です。火災保険は建物・設備・什器などの財物損害が中心で、食中毒の賠償は対象外です。また、営業停止に伴う休業損失は賠償とは別に、休業補償などの確認が必要です。対象範囲は商品・約款により異なります。

火災保険だけで休業中の売上減少まで補償されますか?

火災保険(店舗総合保険)が建物・設備・什器などの財物損害だけを対象にしている場合、営業停止中の売上減少(粗利益の減少)や家賃・人件費などの固定費は対象外となることがあります。休業補償・利益補償の有無、てん補期間、粗利益の算定方法を証券と約款で確認してください。

保険金は事故が起きれば自動的に支払われますか?

自動では支払われません。店側が、事故が起きた事実・損害の内容と金額・事故と損害の因果関係・発生時期・免責事由に当たらないことを説明し、書類で裏づける立場に立ちます。加えて、契約に定められた事故の通知を早めに行い、証拠を保全しておくことが円滑な請求につながります。同じ事故でも、証券の対象事故・免責・支払限度額によって支払額は変わります。

開業時はどの保険金額を優先して決めればよいですか?

内装・厨房設備・什器の復旧費、在庫、家賃・人件費などの固定費、再開までの想定期間を先に置くと過不足が見えます。売上見込みだけでなく、営業が止まっても支払いが続く費用を並べることがポイントです。固定資産台帳・賃貸借契約・月次売上を用意しておくと、保険金額を判断しやすくなります。

複数店舗は本部一括の証券だけでよいですか?

店舗ごとに売上・設備・在庫・賃貸条件・休業時の代替営業の可否が異なるため、一覧表で分けて確認します。本部一括の包括契約でも、店舗別の保険金額と休業期間を確認し、一括契約と個別契約のどちらが適切かを判断することが大切です。

来客の転倒と食中毒は同じ保険で備えられますか?

同じではありません。店舗の設備不備や管理上の問題で来客がケガをし賠償責任を負った場合は施設賠償責任保険の領域、提供した飲食物が原因の場合はPL(生産物賠償)の領域で、証券上の対象が異なります。原因が施設なのか飲食物なのかで動く保険が変わるため、分けて確認してください。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年7月3日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年7月7日

本記事は公開時点の一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品・金融商品の勧誘を目的としたものではありません。補償の対象範囲・免責・支払可否は、商品・契約内容および引受保険会社の約款・判断によります。税務・社会保険・法務の取扱いは、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。