飲食店の休業補償保険|火災・食中毒・設備故障の営業停止に備える免責日数とてん補期間

厨房から火が出た、食中毒で営業停止になった、冷蔵設備が壊れて仕込みができない。原因はまったく違っても、店が止まっている間に家賃と社員の給与が出ていき続けるという点は同じです。違うのは「どれくらいの期間止まるか」で、設備故障なら数日、食中毒による営業停止なら数週間、火災の復旧なら数か月と、桁がひとつずつ変わります。

休業損失の設計は、「休業補償を付けるかどうか」で決まりません。停止1日あたりの損失額 × 想定される停止日数で出した金額が、契約に書かれた免責日数・てん補期間・支払限度額の内側に収まっているかどうかで決まります。この順序で見ると、同じ「休業補償あり」の証券でも、短い停止では免責日数が、長い停止ではてん補期間が結論を分けることが見えてきます。

本記事は休業損失に絞って整理します。店舗財物や賠償責任の設計は扱いません。飲食店の保険の全体像は飲食店に必要な保険6種類、実際に事故が起きた後の初動と請求実務は食中毒の保険金請求と営業停止で扱っています。本記事はその中間にある「平時に金額と期間を決める」部分を担当します。

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先に決めるのは補償の有無ではなく「停止1日あたりの損失額」

休業補償の検討が止まりやすいのは、「いくらの補償を付ければいいか」が決まらないからです。この金額は、証券を眺めていても出てきません。自店の損益から先に出す必要があります。

営業を止めても支払いが続くのは、次のような費用です。

  • 店舗の家賃・共益費
  • 社員の給与など、稼働時間に連動しない固定的人件費
  • 社会保険料
  • 厨房設備・POS・空調などのリース料
  • 電気・ガス・水道の基本料金、通信費、システム利用料

一方で、食材原価や、売上に連動して増減する変動費は、営業が止まれば同時に止まります。ここが重要な分岐点です。補償すべき対象は「売上」ではありません。売上をそのまま補償額にすると、休業中は発生しない食材原価まで含んだ過大な設定になります。逆に固定費だけを見て金額を決めると、本来なら稼げていたはずの利益が丸ごと抜け落ちます。

補償の対象になるのは、売上から変動費を引いた粗利益、言い換えれば「休業中も残る固定費」と「失われる営業利益」を足した部分です。そしてこの金額は、次の4項目だけで桁を出せます。

  1. 月商
  2. 粗利益率(変動費を引いた後の率)
  3. 月額の固定費
  4. 想定される休業日数

この4つが手元にあれば、必要補償額の当たりはつきます。証券を開くのはその後です。順序を逆にすると、条件が自店にとって過不足なのかを判断する基準がないまま、書かれている数字を読むだけになってしまいます。

仮数値でたどる必要補償額の逆算(例示)

以下の数値はすべて、計算の形を示すための説明用の仮の数値です。実際の金額・保険料・保険金の支払額を示すものではありません。自店の数字に置き換えてお読みください。

4項目から停止1か月あたりの必要補償額を出す

仮に、次のような1店舗を置きます。

  • 月商:600万円
  • 変動費率:35%(食材原価、売上連動の水道光熱費など)/粗利益率:65%
  • 月額固定費:180万円(家賃60万円、固定的人件費90万円、社会保険料15万円、リース料・基本料金など15万円)

この店の月間粗利益は 600万円 × 65% = 390万円です。そのうち180万円は固定費の支払いに充てられ、残る210万円が営業利益にあたります。

ここで1か月まるごと営業が止まったとします。売上はゼロ、食材原価などの変動費もゼロになりますが、固定費180万円は出ていきます。通常なら得られていた営業利益210万円も失われます。したがって、

停止1か月あたりの損失 = 失われる営業利益 210万円 + 休業中も残る固定費 180万円 = 390万円

となり、これは月間粗利益(600万円 × 65%)と一致します。式の形で書けば次のとおりです。

必要補償額(1か月)= 月商 × 粗利益率 = 失われる営業利益 + 休業中も残る固定費

そして停止1日あたりでは、390万円 ÷ 30日 = 13万円。この「1日13万円」という数字が、以降のすべての判断の基準になります。

この日額は暦日換算です。分母に置いた30日は営業日ではなく暦日で、免責日数やてん補期間も暦日で数える契約が一般的なため、本記事は日額の分母をそちらにそろえています。仮に月26営業日の店で営業日を分母にすると、390万円 ÷ 26日 = 約15万円となり、同じ店でも単位の取り方だけで日額が変わります(いずれも仮の例です)。以降の39万円・182万円・1,170万円も暦日ベースの試算です。自店で計算するときは、日額の分母と、約款が免責日数・てん補期間をどの単位で数える定めになっているかを必ず一致させてください。

なお、保険の世界で言う「粗利益」は、営業利益と経常費(休業中も支出が続く費用)を合計したものとして定義されることが多く、会計上の売上総利益とそのまま一致するとは限りません。どの費目を経常費に含めるかは商品と約款で異なるため、金額の桁を掴むのがこの計算の目的で、最終的な補償額は約款の定義に沿って確定させます。

停止日数を変えると必要額がどう動くか

同じ店でも、止まる長さによって必要な金額はまったく変わります。原因別に想定される長さを当てはめると、次のようになります(いずれも仮の数値です)。

想定停止日数 失われる営業利益 休業中も残る固定費 合計=必要補償額(仮) この長さで効いてくる条件
3日(設備故障・冷蔵設備の修理) 21万円 18万円 39万円 免責日数(待機日数を超えるか)
14日(食中毒による営業停止) 98万円 84万円 182万円 対象事由への該当と免責日数
90日(火災からの復旧) 630万円 540万円 1,170万円 てん補期間と支払限度額

この表の読み方は一つです。短い停止では免責日数が、長い停止ではてん補期間と支払限度額が結論を分けます。3日の設備故障で必要な39万円は、免責日数が3日設定されていれば1円も支払対象になりません。一方90日の火災復旧で必要な1,170万円は、対象事由に該当していても、てん補期間や限度額が届かなければ後半が自己負担として残ります。同じ証券の同じ「休業補償あり」でも、効いてくる条件が原因ごとに違うということです。

この試算が変わる要因

上の計算はあくまで骨格で、次の要因で数字は動きます。

  • 粗利益の算定方法:商品・約款によって、対象となる固定費(経常費)の範囲が異なります。時間給の人件費を含めるか、リース料や役員報酬をどう扱うかで、同じ店でも算出額が変わります。
  • 季節変動:繁忙期に止まるのと閑散期に止まるのとでは、1日あたりの損失額が変わります。年間平均だけでなく、最も痛い時期の日額も見ておくと設定の幅が決めやすくなります。
  • 再開後の回復期間:営業を再開しても、食中毒後などは客足の戻りに時間がかかることがあります。この期間を補償の対象に含めるかは商品によります。
  • 保険料:免責日数を短くする、てん補期間を延ばすといった条件変更は保険料に反映されます。金額は提供者・プラン・引受条件によって異なるため、条件案を並べて比較する形で確認します。

免責日数とてん補期間が実損とずれる場所

逆算した金額が出たら、次はそれを証券の条件に当てていきます。飲食店で実損とのギャップが生まれやすいのは、主に次の3か所です。

免責日数:短期停止が丸ごと自己負担になる

免責日数とは、事故が発生してから補償が開始するまでの待機日数です。たとえば免責日数が3日なら、その3日間の損失は支払の対象になりません。ここで効いてくるのが、飲食店の停止原因の多くが「短い」という点です。

先ほどの仮の店で言えば、冷蔵設備が壊れて3日で復旧した場合、損失39万円はすべて自己負担になります。しかも免責日数は事故のたびに適用されるため、年に何度か短い停止が起きる店では、そのつど同じ自己負担が発生します。免責日数を短く設定すれば保険は使いやすくなりますが、その分は保険料に反映されます。「短い停止は自己資金で吸収し、免責日数は据え置く」という判断も、逆算した金額を見たうえでなら合理的な選択になります。

てん補期間:長期復旧で後半が残る

てん補期間とは、休業損失が保険金の支払対象となる期間の上限で、契約時に日数・月数で約定する項目です。この上限は、事故発生から復旧までに通常必要と見込まれる期間を目安に置かれ、実際の復旧が上限を超えた部分の損失は支払の対象から外れます。つまり、どの長さを約定するかは契約時に自店で決める設計事項です。問題は、飲食店の復旧が長引きやすい構造にあることです。厨房設備の発注から納品、据付、内装工事、保健所の再検査や営業許可の確認、場合によっては消防設備の確認まで、工程が直列で積み重なります。

てん補期間が6か月でも、実際の復旧に9か月かかれば、後半3か月分の損失は自己負担として残ります。仮の店の日額13万円で計算すれば、90日分で1,170万円です。てん補期間は「長ければ長いほどよい」ものではなく、自店の復旧工程から逆算して、どのくらいの期間が現実的かを見積もったうえで決める項目です。

支払限度額との関係

てん補期間の内側であっても、1事故あたり・年間あたりの支払限度額が上限として働きます。逆算した必要額に対して限度額が足りているかは、期間とは別に確認する必要があります。

複数店舗を包括契約でまとめている場合は、その限度額が全店合算で効くのか、店舗ごとに設定されているのかも確認点です。合算方式で、規模の大きい店舗の火災を想定した場合に限度額が届かない、という形の不足は、証券を店舗別に並べて初めて見えます。

逆算した数字を条件に当てる手順

ここまでの3項目を、先に出した日額に当てはめると、自己負担がどこに出るかが整理できます。

  • 自己負担の前側= 停止1日あたりの損失額 × 免責日数
    (例:13万円 × 3日 = 39万円。事故のたびに発生する下限の自己負担)
  • 自己負担の後側= 停止1日あたりの損失額 ×(想定停止日数 − てん補期間)
    (例:想定90日でてん補期間60日なら、13万円 × 30日 = 390万円)
  • 上限側の確認= 必要補償額が支払限度額の範囲内か

この3つを出せば、「保険で移す部分」と「自己資金で吸収する部分」の線引きが数字で書けます。短い停止は前側に、長い停止は後側に自己負担が出る、という形で自店のリスクが整理されていきます。日数と日額の単位がそろっていないと、この3式はそのまま桁がずれる点にも注意してください。

原因事故で変わる停止の長さと対象事由

もう一つ確認が必要なのが、そもそもその原因が休業補償の対象事由に入っているかです。休業補償は独立した商品として存在するとは限らず、火災保険・賠償責任保険・機械保険などに特約として付いていることが多いため、原因ごとに「どの証券で見るか」が変わります。

火災・水濡れなどの物的損害

火災、爆発、落雷、水濡れ、風水災などで建物・内装・厨房設備が損傷し、復旧まで営業できないケースです。ここは切り分けが明確で、物的損害そのものは火災保険(店舗総合保険)、その間の粗利益と固定費は休業補償という構成になります。財物の保険金だけでは、止まっている間の家賃も給与も埋まりません。

この類型は復旧が長期化しやすいため、論点はてん補期間側に寄ります。設備の発注リードタイムや工事期間を踏まえて、期間の上限が現実的かを見ます。

食中毒・異物混入による営業停止

食中毒が発生すると、保健所の指導や行政処分によって営業停止となる場合があります。このとき考えるべき損失は2種類あり、被害を受けた方への賠償責任と、自店が営業できないことによる休業損失は、根拠となる補償が別です。

飲食業向けには、食中毒・特定感染症による営業停止を対象とする補償(名称は商品により異なります)が用意されていることが多い一方、注意したいのは財物損害を伴わない事故が対象事故に入っているかという点です。休業補償が「火災など財物の損壊を伴う事故」を前提に設計されている場合、食中毒による行政処分での休業は対象に含まれないことがあります。ここは商品名や特約名では判断できないため、対象事故の定義を約款で確認します。

また、行政処分に基づく休業と、処分を受けずに自主的に休業した期間とで扱いが分かれ得る点も確認事項です。事故が起きた後の通知・記録・請求の進め方は食中毒の保険金請求と営業停止で扱っています。

設備故障・機械的トラブル

冷蔵・冷凍設備、厨房機器、空調などの故障で営業継続が困難になるケースです。故障そのものは機械保険や動産総合保険、休業損失は休業補償特約で扱われるのが一般的です。

停止期間が短いため論点は免責日数側に寄りますが、もう一つの確認点が経年劣化・摩耗の免責がどこまで適用されるかです。長く使っている厨房機器の故障は、事故なのか経年劣化なのかの線引きが判断を分けます。この境界は約款の文言だけで読み切れないことが多く、引受・支払部門への照会事項になりやすい部分です。

原因別の対比表

原因事故 想定される停止の長さ 主に効く条件 対象事由として確認する記載 関係する証券
火災・水濡れ 数週間〜数か月 てん補期間・支払限度額 対象となる財物損害の範囲、復旧期間の考え方 火災保険/店舗総合保険+休業補償(利益)特約
食中毒・行政処分 数日〜数週間 対象事由への該当・免責日数 財物損害を伴わない事故が対象事故に含まれるか、行政処分の範囲、自主休業の扱い 賠償責任保険(賠償部分)/食中毒・営業停止に関する補償
設備故障 数日 免責日数 経年劣化・摩耗の免責規定と適用境界 機械保険・動産総合保険+休業補償特約
施設側事故による休業 数日〜数か月 対象事由への該当・てん補期間 自店に財物損害がない場合の休業が対象か、施設側の事故を起因とする休業の記載 自店の休業補償/賃貸借契約(保険外の分担)

補償の名称は商品によって異なり、同じ名称でも対象範囲が同一とは限りません。表は確認する場所を並べたもので、支払の可否は個別の約款と事故状況によって判断されます。

テナント入居店舗:契約で処理される部分と保険で移す部分

商業施設やビルに入居している店舗では、もう一段の整理が必要になります。自店に何も起きていないのに営業できない、という状況が発生するためです。

施設側の事故で自店が休業したとき何が起きるか

施設全体の停電、共用部の給排水設備の破損、施設側の火災、館全体の臨時休館。いずれの場合も、自店の厨房も内装も無傷なまま売上だけが止まります。このとき問題になるのが、自店に財物損害がないことです。休業補償が自店の財物損害を起点として設計されていると、この形の休業は対象から外れることがあります。

一方で、家賃や共益費の扱いは賃貸借契約の側で定められている場合があります。つまりこの領域は、保険だけでも契約だけでも埋まらず、両方を並べて初めて空白が見えます。

賃貸借契約・館内規則で確認する分担

契約側で確認しておきたいのは、主に次の3点です。

  • 施設休業時の賃料・共益費の取扱い:営業できない期間の賃料が減額・免除されるのか、発生し続けるのか
  • 免責条項:施設側の設備事故による営業損失について、オーナー・管理会社の責任がどこまで免責されているか
  • 原状回復の負担:自店起因の損壊時に、どこまでを自店が負担する取り決めか

賃料が発生し続ける契約であれば、その分は自店の休業補償で移すべき対象になります。逆に減額される契約なら、必要補償額はその分だけ下がります。契約書を読まないまま補償額を決めると、この差がそのまま過不足になります。

保険と契約の切り分け表

休業の起点 賃貸借契約で処理されうる部分 自店の休業補償で移す部分 重複・空白が出やすい箇所
自店の火災 原状回復の負担範囲、貸主への賠償に関する定め 復旧期間中の粗利益と残る固定費 復旧工事期間と、てん補期間・賃料発生期間のずれ
施設側設備の事故 共用部設備に起因する損失の免責条項、賃料の取扱い 自店に財物損害がない場合の休業損失(対象事由の確認が前提) 自店の財物損害を起点とする設計だと対象外になり得る
施設全体の休業 臨時休館時の賃料・共益費の減免規定 減免されない固定費と失われる営業利益 減免規定がある部分まで補償額に含めると過大になる
自店の食中毒 施設側への影響・報告義務、営業再開の条件 営業停止期間中の粗利益と固定費、被害者への賠償(別枠) 行政処分による休業と自主休業の線引き

複数店舗のときの前提

店舗が複数ある場合、1店舗の休業が全社に与える影響は単純な足し算にはなりません。前提として次の2点が必要補償額と停止期間の見込みを動かします。

  • 本部費用の按分:本部の人件費・システム費・共通の固定費をどの店舗にどう割り付けているかで、1店舗あたりの固定費水準が変わります。
  • 他店へのスタッフ振替の可否:休業店舗のスタッフを近隣店へ振り替えられるなら、人件費の一部は他店の売上に貢献します。振替できない立地であれば、人件費はそのまま損失として残ります。

この2点は証券には書かれておらず、店舗運営の実態からしか出てきません。店舗ごとに条件が違うのに一律の金額を設定していると、規模の大きい店で不足し、小さい店で過剰になります。

那由他保険テクノロジーズが飲食店の休業損失設計でご支援できること

ここまでの逆算と条件確認を自店に当てはめても、最後に次の3点が残ります。

  1. 休業損失の補償が、火災保険・賠償責任保険・機械保険のどの証券に付いていて、食中毒による営業停止や設備故障がどこまで対象事由に入っているか
  2. 免責日数とてん補期間が、自店で想定される停止期間と固定費水準に対して過不足なく設定されているか
  3. テナント入居店舗で施設側の事故により休業したとき、負担が賃貸借契約と保険条件のどちらで手当てされているか

この3点は、記事の仮数値では詰めきれません。証券の文言と自店の実数を並べて初めて確定します。

那由他が行う支援は、事業中断リスクの構造分析と補償ギャップ分析です。現行の火災保険・賠償責任保険・機械保険の証券と約款、月次試算表、店舗別の固定費内訳、賃貸借契約、過去の休業記録を突き合わせ、記事のような仮数値ではなく自店の実数で必要補償額を算出し、現行条件との差額を金額で示します。日額の分母をどの単位で置き、約款が免責日数・てん補期間をどう数えているかもここでそろえます。原因事故別に、どの証券のどの欄で拾われるのか、重複しているのか空白なのかを一覧に落とし込みます。

そのうえで、約款の文言だけでは決まらない項目は照会先を分けて整理します。食中毒・特定感染症による営業停止の対象事由の定義や、設備故障時の経年劣化免責の適用境界は保険会社の引受・支払部門へ。施設休業時の賃料と原状回復の負担はオーナーまたは管理会社へ。停止期間の見込みとスタッフ振替の可否は店舗運営責任者と経理へ。誰に何を聞けば決着するかまで分けておくと、確認が同時並行で進みます。

ご相談の後、手元には次の判断材料が残ります。

  • 原因事故別の「補償される/条件付き/対象外」の対照表
  • 想定停止期間ごとの必要補償額と、現行条件との差額
  • 免責日数の短縮やてん補期間の延長を検討する店舗と、短期の停止は自己資金で吸収して現行条件を据え置く店舗の切り分け

条件を変えることが結論とは限りません。差額を見たうえで、更新時期まで現行のまま据え置くという選択も、判断材料の一つとして提示します。

何も整理できていない段階からで構いません。証券がどこにあるか分からない、店舗別の固定費を出したことがない、テナント契約の免責条項を読んだことがない。そうした状態からでも、お話を伺いながら一緒に整理していきます。

なお、雇用調整助成金など公的制度の適用可否は社会保険労務士、営業停止処分そのものへの対応は保健所および顧問弁護士の領域で、保険での手当てとは切り分けて扱います。保険金の支払可否と金額は事故原因と約款に基づき個別に判断されるため、補償設計や条件比較は結果を保証するものではありません。

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よくある質問

免責日数が数日あると、設備故障の短い休業は補償されないのですか。

免責日数の範囲内で復旧した停止は、支払の対象になりません。たとえば免責日数が3日で、冷蔵設備の故障が3日で復旧した場合、その間の損失は自己負担になります。免責日数は事故のたびに適用されるため、短い停止が繰り返し起きる店舗では、日数を短くする条件変更を検討する価値があります。ただし条件変更は保険料に反映されるため、想定される発生頻度と自己負担額を並べて判断します。

てん補期間はどのくらいに設定すればよいですか。

てん補期間は、休業損失が保険金の支払対象となる期間の上限として契約時に約定する日数・月数です。一律の目安ではなく、自店の復旧工程から逆算します。飲食店は厨房設備の発注・納品・据付、内装工事、保健所の再検査といった工程が直列に積み重なるため、想定より長引きやすい業種です。実際に必要な期間よりてん補期間が短いと、後半の損失が自己負担として残ります。過去の類似事例や設備の調達リードタイムを踏まえて期間を見積もり、その期間分の必要補償額が支払限度額の範囲内かも併せて確認します。

必要な補償額はどう計算しますか。

基本の形は「失われる営業利益 + 休業中も残る固定費」で、これは月商 × 粗利益率とほぼ一致します。月商・粗利益率・月額固定費・想定休業日数の4項目があれば桁は出せます。日額に直すときは分母を暦日で置き、免責日数・てん補期間を数える単位とそろえておくと、後の当てはめでずれません。ただし、保険で言う粗利益の算定方法や、経常費としてどの費目を対象に含めるかは商品・約款によって異なります。まずは自店の数字で概算を出し、最終的な補償額は約款の定義に沿って確定させる、という順序が実務的です。

食中毒による営業停止は休業補償の対象になりますか。

対象とする補償は飲食業向けに用意されていることが多い一方、自動的に含まれるわけではありません。休業補償が火災など財物の損壊を伴う事故を前提に設計されている場合、財物損害を伴わない食中毒の行政処分による休業は対象外になることがあります。約款で「対象となる事故」の定義を確認し、行政処分の範囲がどこまで含まれるかまで見ておく必要があります。

自主的に休業した期間も対象になりますか。

行政処分に基づく休業と、処分を受けずに自主的に休業した期間とで扱いが分かれ得ます。処分要件が定められている場合、自主休業の期間は要件を満たさず対象外になることがあります。実際の判断は約款の記載と、いつどのような指導・処分があったかという事実関係の突き合わせによります。休業の判断をした経緯と行政とのやり取りの記録は、この線引きの説明に使われます。

テナント入居で施設側の事故により休業した場合はどうなりますか。

自店に財物損害がないため、休業補償が自店の財物損害を起点として設計されていると対象外になることがあります。一方で、施設休業時の賃料・共益費の取扱いは賃貸借契約に定めがある場合があります。保険と契約の両方を並べ、契約側で処理される部分と保険で移すべき部分を切り分けると、重複と空白が見えます。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年9月4日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年9月4日

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、記載の数値はすべて計算方法を示すための仮の例示です。補償の対象範囲・免責・保険料・保険金の支払は、商品・約款・契約条件および個別の事情によって決まります。