
法人保険や生命保険の契約者・被保険者・受取人は、それぞれ「契約して保険料を払う人」「保険の対象になる人」「保険金を受け取る人」を指します。三者を誰にするかで、死亡保険金にかかる税が所得税・相続税・贈与税のどれになるかが分かれ、法人契約では受取人を会社にするか役員の遺族にするかで、資金の受取主体も経理処理の前提も変わります。まず自分の契約がどの組み合わせかを、保険証券の記載で確かめることが出発点になります。
以降では、契約形態ごとに課税の区分がどう分かれるか、法人契約で受取人を会社と遺族のどちらに置くかで何が変わるかを、確認すべき証券欄と社内資料にひもづけて整理します。税務上の最終的な扱いは契約条件や保険料負担の実態で変わるため、具体的な結論は国税庁の区分を踏まえ、個別の税務確認を前提にしてください。
Summaryこの記事のポイント
- 契約者・被保険者・受取人は役割が別で、同一人物とは限りません。最初に証券でどの組み合わせかを確認します。
- 個人の生命保険では、三者の組み合わせで死亡保険金に所得税・相続税・贈与税のどれが課されるかが分かれます。判定は国税庁の区分と個別の税務確認が前提です。
- 法人契約では受取人を会社にするか役員の遺族にするかで、資金の受取主体と経理処理の前提、担当部門が変わります。
- 受取人の指定は約款上のフィールドで、この一行が実際の支払先と税務区分を左右します。証券と社内規程を突き合わせて意図とのずれを点検します。
まずはこの区別を、手元の証券の「契約者」「被保険者」「保険金受取人(死亡保険金受取人)」の欄と照らして確かめます。
生命保険協会「生命保険事業概況」の保険種類別契約高(2025年度)によると、2025年度末の個人保険の保有契約は195,818,212件、2025年度の新契約は12,565,335件です(2026年7月時点、出典)。この件数は法人保険だけを示すものではありませんが、契約者・被保険者・受取人という三欄が多くの契約で実務上の入口になることは分かります。
同じ統計では、2025年度末の参考区分として医療保険は46,006,016件、がん保険は25,436,859件の保有契約があります(2026年7月時点、出典)。死亡保険金だけでなく、入院・疾病・がんに関する給付でも、誰が契約し、誰が対象になり、誰が受け取るかで資金の流れが変わります。だから最初に見るべきなのは、商品の名前ではなく証券の三欄です。
保険証券の診断・見直しのご相談を受け付けています
初回のご相談・現契約の診断は無料です
三者の違いと、証券のどこを見れば分かるか
三者の関係を一文で言えば、契約者は契約を結んで保険料を負担する人、被保険者は保険の対象となる人、受取人は保険金を受け取る人で、この三者は必ずしも同じ人物ではありません。定義そのものは生命保険・損害保険で共通しますが、法人契約では会社が契約者になるのが中心で、被保険者を経営者や役員に置く点が個人契約と違います。
| 立場 | 役割 | 法人契約での典型例 |
|---|---|---|
| 契約者 | 保険会社と契約を結び、保険料を負担する。契約内容の変更や解約の権利を持つ。 | 会社(法人) |
| 被保険者 | 保険の対象となる人。この人の死亡や入院などが保険金支払の事由になる。 | 経営者・役員・従業員 |
| 受取人 | 保険金を受け取る立場。誰を指定するかで資金の流れが決まる。 | 会社、または役員の遺族 |
この三者は、保険証券の表面に並んで記載されています。「契約者」「被保険者」「保険金受取人(死亡保険金受取人)」という欄がそれぞれあり、法人契約では契約者欄が会社名、被保険者欄が役員個人名、受取人欄が会社名または遺族名になっているのが一般的です。手元の証券でまずこの三欄を読み、加入時に想定していた立場の置き方と一致しているかを確かめます。保険制度の基本的な考え方は、金融庁の保険についてでも整理されています。
税務の区分を考えるときは、証券の契約者欄の名義そのものより、「誰が実際に保険料を負担したか」が判断のもとになる点が実務上のポイントです。口座振替の引落口座が誰の名義か、給与天引きか法人口座かといった保険料負担の実態も、証券と払込方法の記録であわせて確認しておくと、後段の税務区分の当たりがつけやすくなります。
契約形態で課される税が所得税・相続税・贈与税に分かれる
個人の生命保険で死亡保険金を受け取るとき、保険料を負担した人と受け取る人の関係によって、かかる税の種類が変わります。下表は国税庁が示す一般的な区分で、保険料を全額一人が負担した前提のものです。契約者欄の名義と保険料負担者が同じであれば、契約者・被保険者・受取人の組み合わせでそのまま読めます。
| 契約者(保険料の負担者) | 被保険者 | 受取人 | 課される税の区分 |
|---|---|---|---|
| 本人(例:夫) | 本人(夫) | 相続人(例:妻・子) | 相続税 |
| 本人(例:妻) | 配偶者(夫) | 本人(妻) | 所得税(一時所得) |
| 本人(例:夫) | 配偶者(妻) | 上記以外の第三者(例:子) | 贈与税 |
この区分は国税庁のNo.1750 死亡保険金を受け取ったときを土台にしています。相続税の対象になる形はNo.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金、贈与税の対象になる形はNo.4417 贈与税の対象になる生命保険金で整理されています。表はあくまで一般的な整理で、実際の課税は保険料負担の実態や特約の内容で結論が動くため、自分の契約がどの区分に当たるかは個別に税務の専門家へ確認するのが前提です。証券の三者と保険料の負担実態を並べれば、どの区分の話になりそうかまでは自社で当たりをつけられます。
法人契約は受取人を会社と遺族のどちらにするかで扱いが変わる
法人契約では契約者が会社であることが多く、被保険者と受取人の組み合わせで目的が分かれます。同じ「会社が契約者」でも、受取人を会社に置くか役員の遺族に置くかで、資金が誰に渡るか、経理処理をどう組むか、社内でどの部門が動くかが変わります。設定の意図が曖昧なまま契約していると、支払の場面で想定した資金の使い方ができないことがあります。
受取人を会社にする場合
受取人を会社にすると、保険金は法人の資金として入ります。事業保障資金や役員退職金の原資、借入金の返済などを意図する設計が中心です。受け取った資金の使い道は株主総会の決議や退職金規程と結びつくため、社内ルールとあわせて整理します。支払の実務では経理・総務が証券と規程を突き合わせて処理するので、どの部門がどの証券を管理しているかを先に把握しておくと、支払事由が起きたときに動きが滞りません。
受取人を役員の遺族にする場合
被保険者である役員の遺族を受取人にすると、保険金は遺族へ直接渡ります。弔慰金や死亡退職金として整理する設計が考えられますが、規程の整備状況や金額の妥当性が論点になります。法人が支払う保険料の経理処理は、保険種類や契約時期で扱いが分かれるため、国税庁のNo.5364 定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いなどを踏まえた確認が前提になります。遺族受取の設計では、受取人欄に記載した遺族の氏名・続柄が現在の家族関係と合っているかも、あわせて点検しておきたいところです。
| 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 主な確認観点 |
|---|---|---|---|
| 会社 | 経営者・役員 | 会社 | 事業保障・退職金原資としての目的整合、社内規程との関係 |
| 会社 | 役員 | 役員の遺族 | 弔慰金・死亡退職金規程の有無、金額の妥当性 |
| 会社 | 従業員 | 会社/従業員の遺族 | 福利厚生制度としての位置づけ、対象者の範囲 |
役員を被保険者にする保険の役割を整理したいときは、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の選び方もあわせて確認すると、保障の目的別に立場の置き方を検討しやすくなります。
受取人欄の一行が支払先と税務区分を左右する
受取人欄は約款上のフィールドで、そこに記載された人や法人が実際の支払先になります。証券のこの一行が、税がどの区分になるか、資金を誰がどう使えるかまで決めます。だからこそ、証券の記載を規程や加入目的と突き合わせる確認が効きます。一般論だけでは自社や自分の組み合わせと結びつかず、判断に迷いが残るためです。
証券を数多く確認してきた代理店の立場で言えば、受取人欄の記載と、社内で共有されている「この保険は何のため」という加入の意図がずれている法人契約は珍しくありません。加入時の担当者が退職していたり、事業承継で役員構成が変わったのに証券の一行だけが当時のまま残っていたりするケースです。こうしたずれは、証券を一枚ずつ読むだけでは気づきにくく、規程や加入目的と並べて初めて見えてきます。ここが、商品の一般説明では埋まらない実務の境界です。
受取人設計を確認する経済的な意味は、保障の目的(事業保障・退職金・遺族保障)に対して受取人がずれていると、想定した資金使途が実現できなかったり、負担者と受取人の関係しだいで税の区分が変わったりする点にあります。設計が目的とそろっているかを書面で確かめておくことが、保険を想定どおりに機能させる運用上の合理性につながります。
対象外・注意が必要なケース
次のようなケースでは、一般的な区分や想定と扱いがずれることがあります。自分の契約が当てはまるかどうか分からない段階でも、お話をうかがいながらどこが論点になるかを一緒に整理していきます。
- 契約者の名義と実際の保険料負担者が違うとき(名義だけ契約者で負担は別人)は、税の区分が想定と変わることがあります。
- 契約者貸付や解約返戻金など、死亡保険金以外の受け取りは別の税務区分で確認します。
- 入院・手術などの特約給付金は、死亡保険金の税務とは切り分けて扱いを確認します。
- 法人が受け取る保険金は益金算入など経理処理が別途必要で、個人の課税区分とは別の整理になります。
- 相続税の非課税枠は相続人が受け取る死亡保険金に限られ、所得税や贈与税の区分、法人受取には適用されません。
これらはいずれも、証券の一行だけを見ても判断がつきにくく、保険料の払込記録や社内規程、家族・役員の現状とあわせないと結論が定まりません。境界に近い契約ほど、証券・規程・払込実態の三点をそろえて個別に確認する価値が高くなります。
三者の設定を点検するときに見る情報と資料
三者の設定を見直すとき、また新規に検討するときは、次の点を見ていきます。社内に散らばりがちな情報ほど、検討を進めながら一つずつ確かめていく対象になります。
- 現在加入している保険の保険証券(契約者・被保険者・受取人の記載を確認)
- 各契約の加入目的(事業保障、退職金原資、福利厚生、遺族保障など)が共有されているか
- 役員退職金規程・弔慰金規程・慶弔見舞金規程などの社内規程の有無と内容
- 被保険者となっている役員・従業員の現在の在任・在籍状況
- 過去に契約者・受取人の変更を行った履歴があるか
- 保険料の払込方法・引落口座と、保険金支払時に資金を何に充てる想定かの社内合意
次の資料は、現状を正確につかむための照合材料です。どの資料から何が読み取れるかを押さえておくと、証券の記載と社内で共有されている加入目的のずれを見つけやすくなります。
| 資料 | 確認できること |
|---|---|
| 保険証券(全契約分) | 契約者・被保険者・受取人・保険種類・保障内容 |
| 保険設計書・契約のしおり | 契約時に想定した目的・保障の前提 |
| 役員退職金規程・弔慰金規程 | 受取人設定と社内制度の整合 |
| 直近の決算書 | 事業保障に必要な資金規模の目安 |
複数の法人契約の重複や不足まで洗い出したいときは、法人保険見直しチェックリストの手順を使うと、証券と規程の突き合わせを一度に進めやすくなります。
名義・受取人の変更を検討するときの注意
事業承継や役員の交代、保障目的の変化に応じて、契約者・受取人の変更を検討する場面があります。変更の手続き自体は可能なことが多い一方、変更によって経理処理や税の区分、資金の流れの前提が動くことがあります。「変更すれば有利になる」と一律に言えるものではなく、契約条件・保険種類・タイミングで結論が変わります。
変更を検討するときは、変更の前後でどの立場が誰になるのか、その結果として受取主体や社内規程との整合、保険料負担者と受取人の関係がどう変わるのかを書面で確かめます。変更後の証券がどの税務区分に当たるかは個別確認が前提です。判断に迷う段階で税務の専門家と保険の担当者に相談し、証券と規程は確認を進めながらあわせて見ていくのが確実です。
自分・自社の条件で確認するために
ここまでを整理すると、確認の順序は、①証券で三者の組み合わせを読む、②保険料の負担実態を払込記録で確かめる、③加入目的と社内規程を突き合わせる、④税務区分は国税庁の区分を踏まえて個別に確認する、の四つに集約できます。契約者・被保険者・受取人の違いは概念としては単純ですが、どの目的のために誰をどの立場に置くかで、税務と実務の意味が大きく変わります。一般論で決めず、自分や自社の証券・規程・契約条件・運用実態を突き合わせて検討することが、保険を想定どおりに機能させる近道です。
那由他保険テクノロジーズでは、三者の設定の意図と現状のずれや、税務区分の確認が要る論点がどこにあるかを、お話をうかがいながら一緒に整理していきます。受取人をどう置くか、その契約を何のために続けているのかが社内で定まっていない段階でも構いません。設定の見直しや新規検討をお考えの場合は、下のボタンからお問い合わせください。
よくある質問
契約者と被保険者は同じ人でなければいけませんか。
同一である必要はありません。法人契約では契約者が会社、被保険者が経営者や役員というように別になるのが一般的です。誰をどの立場に置くかは、保障の目的に応じて設計します。
契約形態によって課される税の種類が変わるのはなぜですか。
死亡保険金の税務は、保険料を負担した人と受け取る人の関係で区分されるためです。負担者と受取人が同じなら所得税、被保険者が負担者で相続人が受け取るなら相続税、三者が別なら贈与税という整理が一般的です。実際の扱いは保険料負担の実態で動くので、国税庁の区分を踏まえ税務の専門家に確認してください。
保険金受取人を会社にするか遺族にするかは、どう決めればよいですか。
保障の目的によって変わります。事業保障や退職金原資を意図するなら会社、遺族への弔慰金や死亡退職金を意図するなら遺族を受取人にする設計が考えられます。社内規程との整合もあるため、証券と規程を見て個別に検討することをおすすめします。
死亡保険金の相続税の非課税枠は、どの契約でも使えますか。
使えるとは限りません。500万円に法定相続人の数を掛けた非課税限度額は、相続人が受け取る死亡保険金が相続税の対象になる場合に適用されます。所得税や贈与税の区分、法人が受取人の場合は対象外です。自分の契約が該当するかは国税庁のNo.4114を踏まえて確認してください。
受取人を途中で変更することはできますか。
契約条件にもよりますが、変更が可能なことは多くあります。ただし変更により経理処理や税の区分、資金の流れの前提が変わることがあり、有利か不利かは契約条件やタイミングで変わります。変更を考えた段階でお声がけいただければ、何を確かめる必要があるかから一緒に整理します。
何から相談すればよいですか。
決まった順番はありません。誰をどの立場に置きたいのか、その契約を何のために続けているのかが社内で定まっていない、という段階からで構いません。お話をうかがいながら、契約者・被保険者・受取人の並びが加入目的とそろっているか、社内規程との整合や税の区分でどこが論点になるかを一緒に切り分けていきます。
参考一次情報・公的資料
- 生命保険協会「生命保険事業概況」
- 国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」
- 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
- 国税庁「No.4417 贈与税の対象になる生命保険金」
- 国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い」
- 金融庁「保険について」
- 日本損害保険協会「企業のための保険ナビ」
情報確認日:2026年7月3日
執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年7月3日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。補償・引受・保険料・保険金支払の可否は商品・約款・契約条件・個別事情により、法務・税務・労務・会計の取り扱いは専門家への確認が必要になり得ます。