事業継続力強化計画の対象企業とは|自社の該当性を確認する手順

「事業継続力強化計画は大企業や製造業のためのもので、うちは対象外では」と感じている中小事業者は少なくありません。しかし中小企業庁は、本制度を中小企業者等が策定する防災・減災の事前対策計画を国が認定する仕組みと説明しており、想定より対象は広く設計されています。この記事は、自社が対象企業に該当するかを早合点せずに確認するための判断軸と、認定を実益につなげるために申請前に見ておくべき論点を、公的資料に沿って整理します。

Summaryこの記事のポイント

  • 対象企業の確認は、資本金・従業員数だけでなく、業種区分や個人事業主の要件も見ます。
  • 自社が対象でも、税制や補助金など個別制度の対象になるとは限りません。
  • 対象確認の次は、認定を取ること自体ではなく、有事に事業を続けられる状態づくりを目的に置きます。
  • 該当性の確認は、会社概要・従業員数・設備投資予定・保険証券を材料に進めると判断が速くなります。

制度概要・申請手順・認定件数は、中小企業庁の制度ページ申請方法ページ地域別認定件数一覧を参照しています。復旧資金の統計は関東経済産業局のリスクファイナンス資料、保険の実態は日本損害保険協会の中小企業調査に基づきます(2026年7月時点)。

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事業継続力強化計画の対象企業とは

中小企業庁は、事業継続力強化計画を「中小企業者等が策定する防災・減災の事前対策計画」として認定する制度だと説明しています。つまり対象の中心は中小企業者等であり、規模の大小そのものではなく、自社が中小企業者等に当たるかどうかが出発点になります。この一点を押さえずに「うちは小さいから」「製造業ではないから」と対象外と決めてしまう例は、当社の相談現場でもよく見られます。

制度は広く使われています。中小企業庁「地域別認定件数一覧」(2026年7月17日更新)によれば、2026年6月末時点の累計認定件数は100,864件に達しています。認定件数の多さは制度の普及を示す事実ですが、自社が対象になるかは別途、自社の区分で確認する必要があります。「件数が多い=自社も自動的に該当」という読み方はできません。

まず確認すべきは「認定の多い・少ない」ではなく、自社が中小企業者等の定義に入るかどうかです。以下では、その定義を自社に当てはめる具体的な軸を見ていきます。

自社が対象になり得るかを判断する三つの軸

該当性を早合点しないために、最低限おさえたい軸は次の三つです。いずれも「対象外だと思い込んでいたが確認すると該当した」という取り違えが起きやすい箇所です。

1. 業種と規模の区分

中小企業者等に該当するかの基準は業種ごとに定められているため、同じ従業員数でも業種区分によって判断が変わることがあります。個人事業主や小規模な事業者であることだけを理由に対象から外れるわけではありません。まずは自社の業種区分を確認し、そのうえで中小企業者等に当たるかを見極めます。

2. 単独型か連携型かという申請形態

自社単独で事前対策を計画するのか、取引先や地域の他社と共同で取り組むのかによって、申請の形態が分かれます。自社だけを見て「連携先がないから対象外」と考えるのは早計で、単独型という選択肢があります。連携先の有無は該当・非該当を分ける要素ではありません。

3. 守るべき対象拠点

複数の拠点や設備を持つ場合、すべてを一度に対象化する必要はありません。事業停止の影響が大きい拠点や、代替が効きにくい機能を軸に、守る対象を具体化していきます。この「どこを守るか」の設定が、後の計画の実効性を左右します。

「うちには関係ない」と早合点する前に

対象外と感じる理由の多くは、制度を「大企業の防災投資」や「製造業のBCP」と結びつけているためです。しかし本制度は、自然災害だけでなく、設備の停止や供給の途絶など、事業を止め得るさまざまな事象への事前対策を対象としています。サービス業・小売業・建設業など幅広い業種が想定されており、業種を理由に一律で外れると考えるのは実態と合いません。制度の位置づけやBCPとの違いを踏まえたうえで、自社の該当性を判断してください。

なぜ「認定を取ること」自体を目的にしてはいけないのか

対象確認の次に、多くの事業者が「では書類を用意しよう」と一足飛びに進みがちです。しかし認定はゴールではなく、いざというときに事業を続けられる状態をつくるための手段です。ここで見落とされやすいのが、災害時の資金と保険をめぐる情報の非対称です。

保険金は、契約があれば自動的に振り込まれるものではありません。請求の場面では、対象となる事故か、対象となる損害か、金額はいくらか、原因との因果関係や発生時期はどうかを示す書類を、被保険者側から提出することが求められます。損害の状況を示す記録や、被害と原因のつながりを裏づける資料がなければ、支払の判断は進みません。補償の範囲や免責の考え方は商品・約款により異なるため、詳しくは日本損害保険協会「企業のための保険ナビ」もあわせて確認してください。ここが、保険を扱う側と契約者側で情報量が最も開きやすい部分です。

事業継続力強化計画づくりは、この「有事に自ら説明できる状態」を平時から整える機会になります。守るべき拠点・機能・資金を棚卸しし、災害時に何を記録すべきかを先に決めておくことが、認定という形式を超えた実益につながります。計画を「作って終わり」にせず、保険金請求時に根拠として示せる資料にしておく——この視点を持てるかどうかが、認定を目的化する場合との分かれ目です。実際の記載レベルは計画の書き方の解説で具体化できます。

単独型と連携型、どちらで申請するか

申請形態は該当性の判断と直結します。次の表で自社の状況に近い方を確認してください。どちらか一方が優れているわけではなく、事業停止の要因がどこにあるかで選び分けます。

比較の観点単独型連携型
基本の考え方自社単独で事前対策を計画する他社と連携して共同で計画する
向いている状況自社内の設備・人員・資金の備えが中心取引先や地域との相互依存が事業停止の要因になり得る
着手のしやすさ社内調整が中心で着手しやすい連携先との合意形成が必要になる
先に確認したい点対象拠点と守る機能の優先順位連携先の役割分担と情報共有の範囲

申請の進め方は、申請方法とgBizIDの解説で手順を追って確認できます。

認定を目指す経済的な合理性

対象になり得ると分かったとき、次に問われるのは「手間をかける意味があるか」です。ここは形式論ではなく、資金の観点で考えると輪郭がはっきりします。

関東経済産業局は、復興時に役立った対策の約8割が資金面の対策だった一方で、半数以上の事業者が災害発生時の対策資金を十分に把握していないと紹介しています。備えの中心が資金であるにもかかわらず、その資金の全体像を掴めていない事業者が多いという構図です。計画づくりは、必要資金の規模と手段(自己資金・借入・保険など)を洗い出す作業そのものであり、この情報の空白を埋める効果があります。

制度面では、中小企業防災・減災投資促進税制など認定に付随し得る優遇措置も案内されています。ただし適用可否・内容は対象設備・取得時期・認定時期などの要件や制度改正により変わり、本記事で効果を保証するものではありません。税務上の取り扱いは税理士など専門家への確認が前提です。対象設備の投資を予定しているなら、要件の当てはまりを個別に確認する価値のある論点として押さえておいてください。

申請前の確認手順とチェックリスト

該当性・形態・経済合理性を確認したら、実務の手順に落とします。中小企業庁は原則電子申請としており、電子申請にはgBizIDプライムの取得が必要です。取得や審査には一定の期間を要し、標準処理期間として約45日が案内されていますが、申請の時期や内容により前後し得ます。計画の実施期間は最大3年で、満了後に続ける場合は新たな計画として申請し、2回目以降は実施状況報告書も論点になります。必要な時期から逆算して準備を始めてください。

相談や申請の前に、次の項目を手元で整理しておくと論点がぶれません。

  • 自社が中小企業者等に当たるか(業種区分・規模)を確認したか
  • 単独型か連携型か、申請目的を言語化したか
  • 守るべき対象拠点と、その優先順位を洗い出したか
  • 想定するリスク(自然災害・設備停止・供給停止など)を挙げたか
  • 災害時に必要な資金の規模と、その調達手段を把握しているか
  • 保険で備える範囲と、請求時に必要になる記録・保険証券を確認したか
  • gBizIDプライムの取得状況と、認定希望時期からの逆算スケジュールを見込んだか

期間の考え方は認定までの期間と逆算手順の記事、更新の流れは再申請と実施報告の記事で補えます。

那由他保険テクノロジーズによる対象拠点と財物・休業補償の照合支援

チェックリストまで進むと、制度側の資料では確認できず、自社の契約条件に当たらないと答えが出ない論点が残ります。多くの場合は次の三つです。第一に、計画で「守る」と決めた拠点・設備が、現在の保険証券で実際に付保対象になっているか。第二に、災害時に必要と見積もった資金のうち、保険で移転できている部分と、自己資金・借入で賄う部分の境目がどこにあるか。第三に、有事に保険金請求の根拠として示す記録を、平時のどの書類で代替できるか。ここが未確認のまま認定だけを取ると、計画と契約が別々のものになります。

那由他保険テクノロジーズは、法人のリスク診断と補償ギャップ分析を行っています。この記事の論点では、計画に書き出す対象拠点・重要設備の一覧と、保険証券および契約内容の明細を並べ、次の項目を突き合わせます。

  • 証券記載の物件所在地と、建物・設備・什器・在庫それぞれの付保対象が、優先順位を付けた拠点と一致しているか
  • 保険金額と再調達価額の差、免責金額、支払限度額(縮小てん補や支払限度日数の設定を含む)
  • 想定リスクとして挙げた地震・水災・風災・設備停止などが担保されているか、除外条項と特約付帯の状況
  • 休業損失(利益・営業継続費用)の補償有無、約定復旧期間、対象となる事業中断の原因範囲
  • 事故発生時の通知期限と提出が求められる書類、保険証券・付保証明の保管場所、契約更改月と社内の契約管理担当者

この照合により、補償が重複している契約と、計画上は守る対象なのに補償が及んでいない拠点・機能が分かれます。診断の結果は、次回の更改月までに確認する論点として、拠点・補償項目ごとに整理してご説明します。補償の過不足がどう解消されるかを確約するものではなく、現状と計画のずれを可視化する診断・比較の支援としてお受けします。約款上の解釈や個別の付保条件で判断が割れる項目は、引受保険会社への照会事項として書き出し、回答が出るまでの扱いも明記します。

結果として、当面は契約を変更せず自己資金と借入で賄うという判断もあり得ます。設備投資に伴う税制優遇の適用可否は税理士、計画そのものの認定審査は中小企業庁および申請システムの領域であり、当社が代わって判断するものではありません。対象該当性の確認と並行して契約側の論点を詰めたい場合は、守るべき拠点や現在の補償がまだ整理できていない段階から、那由他保険テクノロジーズが状況をうかがって一緒に洗い出しますので、まずはお気軽にご相談ください。

那由他保険テクノロジーズは、対象該当性の整理から、重要業務・復旧資金・保険証券・gBizIDの確認、申請後の修正対応まで、費用無料でご一緒します。「対象になり得るか」の見極めと、有事に保険金請求資料として説明できる計画づくりを、保険実務の視点で支援します。無料支援の範囲もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q1. 小規模企業や個人事業主でも対象になりますか?

A. 事業継続力強化計画は中小企業者等が策定する事前対策計画として認定される制度で、規模が小さいことだけを理由に対象から外れるものではありません。個人事業主を含め、自社が中小企業者等に当たるかを業種ごとの基準で確認することが出発点になります。

Q2. 業種によって対象になるか変わりますか?

A. 中小企業者等に該当するかの基準は業種ごとに定められているため、同じ従業員数でも業種により判断が変わることがあります。製造業やサービス業など自社の業種区分を確認したうえで該当性を見極めてください。

Q3. 単独型と連携型はどちらで申請すべきですか?

A. 自社単独の事前対策を計画するなら単独型、サプライチェーンや地域の他社と共同で取り組むなら連携型が基本です。取引先との相互依存が事業停止の要因になり得る場合は連携型の検討余地があり、目的に応じて選び分けます。

Q4. 認定を受ければ保険金は自動的に支払われますか?

A. 認定と保険金の支払は別の仕組みです。保険金の請求では、対象となる事故か、対象となる損害か、金額はいくらか、原因との因果関係や発生時期を示す書類の提出が求められます。平時に計画と記録を整えておくことが、その手続を支えます。

Q5. 拠点が複数ある場合、対象拠点はどう考えますか?

A. 事業停止の影響が大きい拠点や、代替が効きにくい設備・機能のある拠点を軸に、守るべき対象を具体化します。すべてを一度に対象化する必要はなく、優先度の高い拠点から計画に落とすのが現実的です。

Q6. 申請から認定まではどのくらいかかりますか?

A. 中小企業庁は原則電子申請とし、電子申請にはgBizIDプライムが必要です。標準処理期間として約45日が案内されていますが、申請の時期や内容により前後し得ます。取得と申請の期間を見込み、必要な時期から逆算して準備することが大切です。

Q7. 無料の策定支援では何を確認できますか?

A. 無料の策定支援では、対象企業に該当するかの整理、単独型・連携型の選び分け、対象拠点の考え方に加え、災害時の資金と保険の観点を含めた申請前の論点整理を扱います。自社が対象になり得るかの確認から着手できます。

参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年8月3日

執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年8月3日

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度要件、補助金、税制、融資、補償範囲、保険金支払、保険料、引受可否は、最新の公表情報、約款、契約条件、個別事情により変わります。法務・税務・労務・会計の判断は、必要に応じて専門家へご確認ください。