
M&Aのクロージングを目前に、対象会社のD&O保険証券と株式譲渡契約(SPA)のドラフトを並べている段階では、旧役員が在任中に行った過去の行為(prior acts)への賠償請求を、どの契約が拾えるのかを、費用負担とクロージング条件を確定する前に見極めておく必要があります。
確認の起点になるのは、行為日・支配権変更日・請求または事情を認識した日・通知日という4つの時点を、旧D&O契約・買収後の新契約・SPAという3つの受け皿のどこで扱えるかを一つずつ照合することです。同じ案件でも、対象会社にD&O証券があるか、DDで判明した事情が申告済みかによって、追加手配へ進むか、資料をそろえて追加調査へ戻るかは変わります。
Summaryこの記事のポイント
- D&O保険の多くは請求ベース(クレームズ・メイド)方式で、支配権変更で契約が切り替わると旧役員の過去の行為が補償の空白に落ちることがあるため、まず4つの時点を旧契約・新契約・SPAの3つへ置きます。
- ランオフ・tail・延長報告期間(ERP)は商品・特約ごとの呼称であり、名称だけでは対象行為・対象期間・発動条件・通知期限・被保険者・補償費用は決まりません。会社法上の統一制度でもありません。
- 空白があるという一点だけで追加手配を確定せず、11の条件を一度だけ照合して、追加手配・保留・非購入・追加調査の4つへ分けます。
- 対象会社にD&O証券があるかは規模で推測せず、DDの初期に証券・約款の現物で確認します。
- 非上場・小規模でも、旧役員個人への賠償請求や防御費用のリスクは残るため、証券の有無から確認する場面があります。
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4時点を旧契約・新契約・SPAへ置くと空白が見える
旧役員が在任中に行った行為への賠償請求を、どの契約でどこまで拾えるかは、請求が起きた時点で有効なD&O保険だけでも、その過去の行為(prior acts)を対象に含むかどうかだけでも決まりません。請求時点で有効な契約、旧契約に付す延長報告期間、prior acts・遡及日、支配権変更、既知事情、通知条件といった要素の組み合わせで判断します。多くのD&O保険は請求ベース(クレームズ・メイド)方式で、保険期間中に被保険者へ提起された請求を対象とするため、支配権が移って契約が切り替わったり解約されたりすると、退任した旧役員の過去の行為が補償の空白に落ちることがあります。そこで、行為日、支配権変更日(チェンジ・オブ・コントロール)、請求または事情を認識した日、通知日という4つの時点を切り分け、旧D&O契約・買収後の新契約・SPAの3つの受け皿のどこで扱えるかを照合します。経済産業省が2015年に公表した実務上の検討ポイントでも、原因行為の時点と請求の時点を分けて捉え、組織再編の前後で契約に空白が生じ得ることが説明されています(経済産業省「会社役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント」(2015年))。
ここで、SPAは保険商品ではなく、D&O保険の代替でもありません。SPAは当事者間で損失や費用の配分を定める契約であり、保険で残す部分とSPAで残す部分が重複したり、逆にどちらもカバーしない空白ができたりしないよう、別の受け皿として並べて確認します。次の表は、4つの時点を3つの受け皿のどこで扱えるかを照合するためのものです。
| 時点 | 旧D&O契約での扱い | 買収後の新契約での扱い | SPAでの扱い |
|---|---|---|---|
| 行為日(在任中の原因行為・prior acts) | 遡及日・被保険者の範囲で対象か確認する | 遡及日を過去に置けば拾える場合がある | 補償・特別補償の対象事由か確認する |
| 支配権変更日 | 変更日を境に扱いが分かれる条項の有無を約款・特約で確認する | 変更日以降の行為を引き受ける前提 | 変更前後の責任・費用分担を規定し得る |
| 請求または事情を認識した日 | 保険期間・延長報告期間内の請求か確認する | 新契約の保険期間内の請求か確認する | 補償請求の手続・期限を規定し得る |
| 通知日 | 約款の通知期限内か、通知先はどこか | 新契約の通知条項・期限を確認する | 当事者間の通知・請求手続を確認する |
この表で空白が見えたら、その時点を扱う文書はどれか、通知先はどこか、費用は誰が負担するかを、次の節以降で個別の証券・約款・特約とSPAに戻して確認します。背景として、中小企業庁の2025年版中小企業白書によると、2024年の我が国企業の公表M&A件数は4,700件で過去最多でした(中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第2章第3節)。これは公表案件の総数であり、中小企業だけの件数やランオフの手配率・必要率を示すものではありません。自社の案件で確認が要るかどうかは、件数の多寡ではなく、4つの時点にどの空白があるかで判断します。
ランオフ・tail・ERPを6軸と約款6論点で確認する
ランオフ、tail、延長報告期間(ERP)は、請求ベースのD&O保険で使われる呼称です。いずれも大まかには、保険期間が終わった後も、保険期間の終了前(または遡及日以降)に行われた行為に起因する損害賠償請求について、約款が定める期間内に請求がなされ通知されれば対象とし得る、という考え方を指して使われます。ただし、対象行為、対象期間、発動条件、通知期限、被保険者、補償費用が呼称だけで決まるわけではなく、同じ呼称でも商品・対象版・特約・見積条件により中身は異なります。実際の機能は、次の6つの軸で個別の証券・約款・特約に戻して確認します。たとえば東京海上日動の「D&Oマネジメントパッケージ」2025年1月1日以降始期契約用の案内には「保険期間延長(ランオフカバー)の特則」という記載がありますが、これは当該一商品・当該対象版に限った正式な用例であり、他社・他商品の共通定義ではありません(東京海上日動「D&Oマネジメントパッケージ ご案内」2025年1月1日以降始期契約用)。
次の表は、呼称ではなく6つの軸を、個別の証券・約款・特約・見積条件のどこで確認するかを対応づけるためのものです。被保険者と通知期限の中身は、後述の約款6論点で読みます。
| 確認する軸 | 確認する文書・欄 | 名称だけで断定しないこと |
|---|---|---|
| 対象行為 | 約款の担保条項・遡及日・prior acts | どの行為が対象かは名称では決まらない |
| 対象期間 | 保険期間・延長報告期間・遡及日 | 一律の年数を前提にしない |
| 発動条件 | 支配権変更・解約・満了時の特則 | 自動付帯かは約款・特約で確認する |
| 通知期限 | 通知条項(中身は約款6論点で確認) | 一律の日数を前提にしない |
| 被保険者 | 被保険者の定義(中身は約款6論点で確認) | 退任役員が含まれるかは定義次第 |
| 補償費用 | 支払条項・免責・限度額・追加保険料の見積 | 相場や自動的な増減を断定しない |
この表の読み方は、名称から機能を推測するのではなく、各軸を対象会社の実物の書面へ戻して確認することです。請求ベースの補償や被保険者の範囲といったD&O保険の基礎を先に確認したい場合は、D&O保険とは何かを基礎から整理した記事で全体像を確認できます。
被保険者・prior acts・支配権変更・既知事情・通知・延長期間を分けて読む
補償されるかどうかは「損害があれば払われる」という単純な話ではなく、被保険者、prior acts、支配権変更、既知事情、通知、延長期間という6つの論点ごとの条件で決まります。同じ事故でも、どの論点で引っかかるかによって結論が変わるため、論点を分けて、それぞれどの約款欄を読めば可否が判断できるかを押さえます。次の表は、6論点ごとに確認する約款欄と、契約ごとの分岐を整理したものです。
| 論点 | 確認する約款欄 | 契約ごとの分岐 |
|---|---|---|
| 被保険者 | 被保険者の定義(退任・過去の役員を含むか) | 氏名・在任期間の限定があるか |
| prior acts(過去の行為) | 遡及日・過去の行為の取扱い | 遡及日より前が対象外か、支配権変更日で切れるか |
| 支配権変更 | チェンジ・オブ・コントロール条項 | 変更日以降を引き受けるか、変更日で固定するか |
| 既知事情 | 既知事情・不実告知の除外 | DDで判明した係争・調査が申告済みか |
| 通知 | 通知条項・通知期限 | 兆候を知ってから何日以内に、どこへ通知するか |
| 延長期間 | 延長報告期間(ERP)の特則 | 年数、通知できる範囲、追加保険料の要否 |
これらの論点は独立ではなく、組み合わさって結論を決めます。たとえばChubbの会社役員賠償責任保険普通保険約款は、延長報告期間を保険期間の終了直後からの12か月間と定め、契約を更新しない場合に追加保険料を支払うことで、保険期間終了前に行われた不当な行為に起因する損害賠償請求を対象にできると規定しています。また、保険期間中に合併・買収などの「取引」が行われた場合は、その発効日より前に行われた不当な行為についてのみ適用されるとしています。これは当該約款・適用特約における条件の一例で、他社・他商品に同じ日数や範囲が当てはまるものではありません(Chubb「会社役員賠償責任保険普通保険約款」)。過去の行為が対象と読めても、支配権変更条項で変更日以降が切り離され、さらに既知事情で除外されれば、実際に残る補償は限定的になります。対象会社の約款で各欄がどう書かれているかを一つずつ確認することが、手配判断の前提です。
旧D&O契約と買収後契約の接続を3パターンで比べる
旧役員の過去の行為への補償は、旧D&O契約に延長報告期間を付けて残す方法と、買収後の新契約で遡及日を過去に置いて拾う方法があり、いずれか単独か組み合わせかを案件ごとに検討します。どちらか一方だけでは、支配権変更日の前後で補償が途切れることがあるため、二つの契約をどこで接続するかを時系列で確認します。次の表は、旧契約から買収後契約への接続パターンと、それぞれで確認する空白・重複・通知先を、この記事の整理として並べたものです。個別案件での実現可能性や、実際に保険金が支払われる結果を保証するものではありません。
| パターン | 過去の行為の受け皿 | 確認する空白・重複・通知先 |
|---|---|---|
| 旧契約にランオフを付す | 旧D&O契約の延長報告期間 | 変更日までの行為を、どの期間・どの通知先で残すか |
| 買収後契約で遡及日を過去に置く | 新契約の遡及日設定 | 遡及日が変更日以前か、既知事情で切れないか |
| 併用 | 旧契約ランオフ+新契約遡及 | 期間の重なり・空白と、旧新どちらへ通知するか |
どのパターンで空白を防ぐかは、対象会社の約款・遡及日・通知条項と、買収後契約の設計を突き合わせて選びます。補償設計の選び方を体系的に確認したい場合は、D&O保険の選び方を整理した記事で、補償範囲や接続の考え方を確認できます。
非上場・小規模でも証券の有無から確認する
非上場・小規模の会社でも、規模だけでランオフの要否は決まりません。旧役員個人への賠償請求や防御費用のリスクは残ります。会社法上、役員は会社に対する任務懈怠責任や第三者に対する責任を負い得るため、支配権が移った後でも在任期間中の行為が問われる可能性は残ります(e-Gov法令検索「会社法」)。誰が請求の相手になり得るかや、実際の補償範囲・支払可否は会社法だけで決まるものではなく、個別のD&O契約とSPAで確認します。
確認の出発点は、対象会社がそもそもD&O保険に加入しているかを、規模から推測せずDDの初期に証券・約款の現物で押さえることです。日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」では、会社役員賠償責任保険の加入回答は、全体n=1,050に対しQ16で9.1%でした(日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」)。これは2025年調査の一設問の回答であり、全中小企業やM&A対象会社の実測加入率、ランオフの手配率・必要率を示すものではありません。この数字は、対象会社の加入状況を推測せず、証券の有無を必ず現物で確認するという入口として使います。加入していれば約款の条件を、加入していなければ買収後契約でどう手当てするかを検討する、という分岐になります。
非上場の中小企業でD&Oが必要になる背景は、非上場企業のD&O保険を整理した記事で確認できます。資金調達を経たスタートアップの役員責任は、スタートアップのD&O保険と資金調達を整理した記事で確認できます。
11の条件を照合し、追加手配・保留・非購入・追加調査へ分ける
空白が見えても、それだけで追加手配を確定するわけではありません。限度、免責、自己保有、引受可否、資料の欠落、費用負担などを案件ごとに評価してはじめて、追加手配・保留・非購入・追加調査の4つのどれへ進むかが決まります。次の表は、11の条件を一覧化し、それぞれの確認先と、4分岐への影響を整理したものです。
| 条件 | 確認先 | 4分岐への影響 |
|---|---|---|
| 限度額 | 証券・約款 | 想定請求に対し不足なら追加手配・保留 |
| 対象期間・対象行為 | 約款・遡及日・特約 | 空白があれば追加手配か追加調査 |
| 免責 | 約款の免責条項 | 実質補償が薄ければ再評価して保留 |
| 自己保有 | 証券・社内方針 | 自己保有可能額の範囲なら非購入も選べる |
| 保険料 | 見積条件・保険会社回答 | 費用対効果によっては保留・非購入 |
| 引受可否 | 保険会社回答 | 引受不可なら追加調査・別手段の検討 |
| SPA上の費用負担 | SPAドラフト・当事者協議 | 負担者が未定なら追加調査 |
| 除外 | 約款の除外条項 | 主要リスクが除外なら追加手配を見直す |
| 既契約への通知影響 | 旧契約の通知条項 | 通知漏れのリスクがあれば保留 |
| 防御・専門家費用 | 約款の費用担保・特約 | 防御費用が薄ければ追加手配 |
| 資料の充足・欠落 | 証券・約款・SPA・DD指摘 | 欠落があれば追加調査へ戻す |
この表は、条件と確認先と分岐への影響だけを示すもので、市場共通の引受基準ではありません。同じ空白でも、資料がそろっていれば追加手配や保留を判断でき、欠落があれば結論を出さず追加調査へ戻します。表明保証違反リスクの移転とD&Oランオフの守備範囲の違いは、中小企業のM&Aと表明保証保険を整理した記事で確認できます。
補償費用・追加保険料・SPA上の費用配分を分ける
費用を一つの相場としてまとめないために、確認先の異なる3つの費用を分けて扱います。
- 補償費用(保険で補償され得る費用)は、証券・約款・特約で確認する
- 追加保険料(ランオフなどを購入するコスト)は、見積条件・保険会社の回答で確認する
- SPA上の費用配分(当事者間の負担)は、SPAドラフト・当事者協議で確認する
この3層は確認先も意味も異なるため、同じ費用の相場として横に並べたり、期間が延びれば費用がこう増えると一般化したりはしません。各層の結果は、対象会社の実物の書面と保険会社・当事者の回答が出るまで断定せず、未確定のまま次の判断へ引き継ぎます。
急いで変更しない条件を社内で承認する
11条件の照合結果は、そのまま4分岐へ変換します。空白があるという一点だけで購入を確定せず、自己保有で受けられる金額の範囲か、社内の承認が得られるか、現状維持のままクロージング後に確認する選択が妥当かを、あわせて評価します。非上場・小規模だからという理由だけで非購入にもしません。自己保有可能額が小さく承認も難しいのに空白が大きければ追加手配へ、費用対効果が見合わなければ保留や非購入へ、資料が欠けていれば追加調査へと、条件の組み合わせで慎重に社内承認へ上げます。
クロージング前にそろえる6資料で未確認事項を潰す
ここまで見てきた時点の切り分けと約款の各論点を照合するには、対象会社の書面がそろっていることが前提になります。クロージング前に次の6つの資料を照合順にそろえ、どこに空白・重複・追加照会が残るかを一つずつ埋めていきます。
- 対象会社の現行D&O保険証券・約款(prior acts・既知事情・通知条項・延長報告期間の各条項)
- 保険期間・更新日が分かる書類
- 株式譲渡契約(SPA)の補償・特別補償(indemnity)条項のドラフト
- DDで判明した係争・調査・監査指摘の一覧
- 旧役員・退任予定役員の名簿と在任期間
- 買収後の役員構成案
これらがそろうと、証券・約款とSPAを並べて4時点と11条件を照合でき、どの空白を誰へ照会するかが具体的になります。逆に欠けたままでは、11条件の比較も非購入の判断も確定できないため、まず不足資料の収集を追加調査として先に片づけます。加入中の保険を一覧で棚卸しする手順は、法人保険の見直しチェックリストを整理した記事で確認できます。
D&O契約とSPAの照合で那由他保険テクノロジーズが整理できること
新旧のD&O契約とSPAのどこに空白・重複があり、何を追加照会すべきか、自己保有と保険移転をどう社内承認へ上げるかは、対象会社の資料を集めただけでは整理しきれないことがあります。那由他保険テクノロジーズは、現契約の精査と補償ギャップ分析、事業リスクと契約条件に沿った保険プログラム・補償設計・適切な保険調達の支援を行っています。
具体的には、対象会社の現行D&O証券・約款・特約、旧役員名簿・在任期間、事故・通知履歴、DDの指摘、買収後契約の条件、SPAを、4時点・6軸・11条件で並べ、空白・重複・追加照会・費用負担・自己保有の判断材料を整理します。そのうえで、保険を買わない、急いで変更しない、保留する、追加調査へ戻すといった選択肢も残します。法的責任やSPAの解釈、税務・会計、個別の保険金の支払可否は、弁護士・税理士等の専門家や保険会社への確認へ戻す前提で、判断材料の整理までを支援します。
よくある質問
D&O保険のランオフとtailはどう違いますか?
名称の一般的な同義・別義を断定することはできません。対象行為・対象期間・発動条件・通知期限・被保険者・補償費用という6つの軸を、個別の証券・約款・特約で確認します。呼称が同じでも、商品・対象版・特約により機能が一致するとは限りません。
ランオフ期間は何年に設定できますか?
一律の年数や自動付帯を前提にはできません。対象商品・版の特則、見積条件、SPAの補償期間(サバイバル期間)との整合を、個別の証券・特約・見積で確認します。
prior acts(過去の行為)はどこまで対象になり得ますか?
遡及日、支配権変更条項、既知事情の除外、被保険者の定義の組み合わせで決まります。個別のD&O約款・適用特約で、これらがどう書かれているかを照合します。
請求や請求のおそれはいつ通知しますか?
一律の日数は前提にせず、請求やその兆候を認識した時点で、個別約款の通知条項が定める期限・通知先・受領の記録を確認します。通知日は4時点の一つとして、どの契約へ通知するかを切り分けます。
ランオフ費用は売主・買主のどちらが負担しますか?
一律の決まりはありません。追加保険料は見積条件・保険会社の回答で、当事者間の費用配分はSPAドラフト・当事者協議で確認し、個別のSPA交渉に戻します。
非上場・小規模企業でも確認は必要ですか?
規模だけで要否は決まりません。会社法上、役員は会社に対する任務懈怠責任や第三者に対する責任を負い得るため、旧役員個人が請求の相手として問われ得ます。請求の主体、対象会社のD&O証券の有無、自己保有可能額を、個別のD&O契約とSPAで確認します。
表明保証保険があればD&Oランオフは不要ですか?
商品横断で守備範囲を断定することはできません。被保険者、損失・請求の主体、対象条項を、個別のD&O契約・個別の表明保証保険契約・SPAで照合し、未確認であれば追加調査へ戻します。
参考一次情報・公的資料
- 経済産業省「会社役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント」(2015年)
- 東京海上日動「D&Oマネジメントパッケージ ご案内」2025年1月1日以降始期契約用
- Chubb「会社役員賠償責任保険普通保険約款」
- 中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第2章第3節
- 日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」
- e-Gov法令検索「会社法」
情報確認日:2026年7月20日
執筆:中村 祐太朗(那由他保険テクノロジーズ株式会社 Risk & Benefits事業 執行役員/損害保険・生命保険募集人)|編集:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|最終更新日:2026年8月4日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。補償・引受・保険料・保険金の支払は、個別の契約・約款・引受条件によって異なります。法務・税務・会計に関わる事項は、弁護士・税理士等の専門家への確認が必要になる場合があります。SPAは保険商品やD&O保険の代替ではなく、法的責任、SPAの解釈、費用負担、引受の可否、保険金の支払可否を保証するものではありません。実際の手配にあたっては個別にご確認ください。