大使館の公館建物・公邸・来館者・レセプション・現地職員・美術品・ビザ申請者情報の7つのリスクを、火災・賠償責任・傷害・動産・サイバーの保険に対応づけて整理した図

2026年7月30日、厚生労働省は日本年金機構に対し、日本で雇用された外国公館の職員について、外国公館を健康保険法と厚生年金保険法の適用対象とし、2028年4月1日から施行する旨の通知を出しました。1955年以来「任意適用」とされてきた取扱いを見直すもので、外務省とも協議済みとされています。駐日外国公館にとって、日本の制度との接点がまた一つ増えることになります。

社会保険は損害保険とは別の制度ですが、この通知は公館の総務・会計担当者に一つのことを告げています。日本に置いた施設、日本で雇った職員、日本で開く行事について、公館は接受国の制度の中で責任を負う場面が増えており、保険の棚卸しをしないまま時間が過ぎている契約があるかもしれない、ということです。外務省の駐日外国公館リストには188の国・機関の公館が掲載されています(2026年10月28日時点、当社集計)。その多くが、公館建物、公邸、公用車、職員、来館者、行事という共通のリスクを日本で抱えています。

この記事では、駐日外国公館が日本で一般的にかけている損害保険を7つに分け、公館ならではの固有事情(外交関係に関するウィーン条約、保険業法、地震、現地職員の労働法)を踏まえて、何を確認し、どう見直すかを一般論として整理します。公用車の自動車保険については、外務省登録との関係が深く論点が多いため、別の記事で詳しく扱っています。結論を先に言うと、見直しは「本国プログラムと日本の契約の重複」「公館建物の所有・賃借に応じた保険の分担」「現地職員のけがの補償の空白」の3点から始めるのが合理的です。

なお、本記事は特定の保険会社、保険商品、保険契約や特約の内容を説明するものではなく、一般的な考え方の整理です。条約や法令の適用関係は外務省、厚生労働省または専門家にご確認ください。個別の保険金請求の可否は、ご契約の約款と事実関係に基づいて保険会社が判断します。

Summaryこの記事のポイント

  • 公館の不可侵、課税免除、裁判権免除はウィーン条約が定める特権だが、公館が他人に与えた損害を賠償する責任や、日本で雇った職員に対する雇用者の義務を消すものではない。相手方の救済と公館の支出を支えるのは保険になる。
  • 日本に所在する建物や動産を、日本に支店を持たない本国の保険会社で直接付保することは保険業法186条で原則禁止されている。本国の保険プログラムは重複と空白を確認する対象であり、日本の契約の代わりにはなりにくい。
  • 大使館が一般的にかける損害保険は、公館建物・公邸・什器の火災保険、施設の賠償責任、行事の賠償責任と参加者のけが、現地職員のけが、公邸の美術品や現金などの動産、ビザ申請者情報を含む情報の漏えい、そして公用車の7つに整理できる。
  • 見直しは、証券の棚卸し台帳を作り、本国プログラムとの重複、所有・賃借の分担、職員のけがの空白を順に確認し、満期を揃えて調達の記録を残す5つの手順で進める。

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駐日外国公館が日本で向き合う4つの固有事情

日本の一般の法人と同じ保険を同じように掛ければよい、とは言えないのが公館の難しさです。保険を考える前に、公館を取り巻く4つの固有事情を押さえておきます。

ウィーン条約の特権と免除は、賠償責任を消さない

外交関係に関するウィーン条約22条1は使節団の公館を不可侵とし、同条2は接受国に対し、侵入または損壊から公館を保護するためのすべての適当な措置を執る特別の責務を課しています。同条3は、公館、公館内の財産および使節団の輸送手段を捜索、徴発、差押えまたは強制執行から免除しています。23条1は、所有か賃借かを問わず公館について国または地方公共団体のすべての賦課金および租税を免除しています(提供された特定の役務に対する給付としての性質を有するものを除く)。

ここで注意したいのは、これらの規定が「公館が損害を受けたときに接受国が補償する」とは書いていないことです。接受国の責務は保護のための措置であり、火災や地震で公館が受けた損害を日本政府が補償する仕組みはありません。逆に、公館の施設で来館者がけがをした、公館の行事で第三者に損害を与えた、という場面では、外交官個人は31条により民事裁判権から免除されますが、相手方の損害そのものは残ります。41条1は、特権および免除を享有するすべての者に接受国の法令を尊重する義務を課しています。相手方への賠償を実際に行う手段として、保険が実務的に選ばれる理由はここにあります。

本国の保険会社で日本の資産を直接付保することには法令上の制約がある

保険業法186条1項は、日本に支店等を設けない外国保険業者が、日本に所在する財産に係る保険契約を締結することを原則として禁止しています。同条2項により、契約者側もこうした外国保険業者に申込みをするには、申込みの前に内閣総理大臣の許可を受けなければなりません。日本に所在する公館建物、什器、公用車は日本に所在する財産です。本国政府が本国の保険会社と結んでいるプログラムに日本の資産を乗せる、という発想は、日本の法令上は許可を前提とする例外的な扱いになります。

これは、本国プログラムが無意味だということではありません。本国で手配した補償が、日本の契約で足りない部分(本国への搬送、本国の規程に基づく職員への給付など)を補っている場合があります。日本で免許を受けた保険会社の契約を基本に置き、本国プログラムは重複と空白を点検する対象として並べる、という整理が実務的です。法令の適用に疑問があれば、金融庁または専門家に確認してください。

日本の地震・風水災は、火災保険の標準では足りない

地震調査研究推進本部の長期評価では、相模トラフ沿いの「プレートの沈み込みに伴うマグニチュード7程度の地震」(南関東)が今後30年以内に発生する確率は70%程度とされています(算定基準日2026年1月1日)。日本の企業向け火災保険では、地震による損害は標準では対象外とされ、補償を追加して対象にするのが一般的です。日本損害保険協会の調査では、中小企業の火災保険の加入率が58.6%であるのに対し、地震の補償を追加している割合は30.9%でした(出典:日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」2025年12月、n=1,050)。本国の担当者が「火災保険に入っているなら地震も大丈夫だろう」と考えている場合、この前提から確認が必要です。

日本で雇った職員には、日本の労働法と社会保険の義務がある

ウィーン条約33条1は、外交官を派遣国のために提供した役務について接受国の社会保障規程の適用から免除していますが、同条3は、免除の適用されない者を雇用する外交官に、接受国の社会保障規程が雇用者に課する義務に従うことを求めています。日本で採用された現地職員は、この「免除の適用されない者」に当たるのが通常です。

実態として、連合(日本労働組合総連合会)が2025年4月に公表した記事では、情報労連の集計として、日本の外国公館で社会保険に加入しているのは3割弱、領事館では1割弱にとどまり、雇用保険や労災保険に未加入の公館も多数あると報告されています。冒頭の厚生労働省通知は、この健康保険・厚生年金の部分を2028年4月から適用対象に改めるものです。労災保険に未加入の公館では、職員が業務中にけがをしたときの治療費や休業中の補償を公館が自ら負担することになり、ここに損害保険(職員のけがの補償)が入る余地があります。労働保険の適用手続きは所轄の労働基準監督署・ハローワークに、社会保険は年金事務所に確認してください。

大使館が一般的にかけている7つの損害保険

公館が日本で抱えるリスクを、相手に与える損害(賠償)、自分の財産の損害(財物)、人のけが(傷害)の3つの軸で分けると、一般的にかけられている損害保険は7つに整理できます。保険の名称は一般名称で示します。実際の商品では、複数の補償が1つの契約にまとまっていることも、逆に分かれていることもあります。

表1:駐日外国公館が一般的にかけている損害保険と、公館で論点になる点(一般論、2026年10月28日時点)
対象保険の一般名称公館で論点になる点
1. 公館建物・公邸・什器火災保険(企業向け)、地震・水災の補償の追加所有か賃借か。賃借なら建物は貸主、公館は什器・設備と借家人としての賠償責任を持つのが一般的。地震の補償は標準では対象外。
2. 来館者・近隣への損害施設賠償責任保険ビザ窓口の来館者、公邸の来客、看板や外壁の落下、水漏れによる近隣への損害。公館の所有・使用・管理に起因する事故が対象。
3. ナショナルデー・文化行事行事の賠償責任保険、参加者の傷害保険、行事中止の費用の保険会場側が求める保険条件、屋外行事の天候、来場者のけが、外部の出演者・設営業者との責任分担。
4. 現地採用職員のけが傷害保険、業務災害の補償(法定の労災の上乗せ)労災保険の加入状況。未加入なら業務中のけがの補償が空白になる。通勤中、出張中、公館行事の運営中の扱い。
5. 美術品・展示品・現金動産の保険(動産総合、美術品の保険)、現金・有価証券の盗難の補償公邸に置かれた本国の美術品、巡回展示、輸送中の損害、ビザ・証明の手数料として受け取る現金の保管。
6. ビザ申請者・在留自国民の情報サイバー保険、情報漏えいの賠償責任保険申請書類、旅券の写し、在留届の情報。委託先(申請受付センター、翻訳、システム)起因の漏えい。公館の情報システムは本国管理が多く、対象範囲の線引きが必要。
7. 公用車・外交官の自家用車自動車保険外務省登録の条件として第三者への賠償保険が求められる。対人・対物無制限、示談交渉サービス、フリート契約の判定。別記事で詳述。

日本の中小企業の加入率(前掲の日本損害保険協会調査)を並べると、火災保険58.6%、傷害保険30.9%、業務災害の補償22.6%、施設賠償責任保険17.0%、動産総合保険12.4%、サイバー保険8.8%です。公館は来館者と行事を日常的に抱える施設なので、施設賠償と行事の保険の重要度は一般の中小企業より高いと考えるのが自然です。

7つの保険それぞれで確認する点

1. 公館建物・公邸・什器の火災保険

最初に確認するのは、建物を派遣国が所有しているか、賃借しているかです。所有であれば建物と什器の両方を公館が付保します。賃借であれば建物の火災保険は貸主がかけているのが一般的で、公館は自分の什器・設備・改装部分と、借りている建物に損害を与えた場合の借家人としての賠償責任を持ちます。賃貸借契約書に保険の条件(借家人賠償の保険金額、貸主への証明書の提出)が書かれていることが多いので、契約書の保険条項と現在の証券を突き合わせます。

次に地震です。前述のとおり、日本の企業向け火災保険では地震による損害は標準では対象外で、補償を追加して対象にします。追加した場合でも、保険金額の一部を上限にする、自己負担の割合を設けるなど、火災とは条件が異なるのが一般的です。公邸の美術品や特殊な設備は、火災保険の対象になっていても評価額が実態と合っていないことがあります。保険金額(評価額)、建物の構造と用途の申告、改修工事中の扱い、休館中の扱いが確認項目です。

2. 来館者・近隣に対する施設賠償責任

公館は、ビザや証明の窓口に一般の来館者を受け入れ、公邸には来客を招きます。来館者が階段で転倒した、外壁や看板が落下して通行人がけがをした、配管の水漏れで階下の店舗に損害を与えた、という事故は、施設の所有・使用・管理に起因する賠償責任として扱われます。施設賠償責任保険は、こうした法律上の賠償責任を対象にするのが一般的です。確認する点は、対象になる施設の範囲(公館、公邸、外交官住居、倉庫)、警備や清掃を委託している業者の作業に起因する事故の扱い、相手方との示談交渉を保険会社が行うか、そして公館が「法律上の責任を超えて」見舞金を支払う場合の扱いです。見舞金や道義的な支払いは、法律上の賠償責任を対象とする保険では対象外とされるのが一般的です。

3. ナショナルデー・レセプション・文化行事

公館の行事には3つの別々のリスクがあります。来場者や会場に損害を与える賠償責任、来場者や運営スタッフのけが、そして天候や不測の事情で行事を中止・延期したときに戻らない費用です。この3つは別の保険で対応するのが一般的で、会場(ホテル、ホール、屋外施設)側が賠償責任保険の加入を利用条件にしていることがあります。会場の利用規約や契約書に保険条件があれば、それが起点になります。

屋外や大規模な行事では、中止したときの費用(会場費、設営費、ケータリングのキャンセル料など)が大きくなります。行事の中止に伴う費用を対象にする保険は、天候、会場の事故、出演者の都合など対象になる事由と対象外の事由が商品ごとに明確に分かれているので、何を心配しているのかを先に整理してから確認します。一般的な考え方は興行中止保険のページにまとめています。

4. 現地採用職員のけが

職員が業務中や通勤中にけがをしたときの補償は、日本では労災保険が第一の制度です。労災保険に加入している公館では、法定の給付を超える部分(休業中の収入の補てん、後遺障害や死亡の際の見舞金)を傷害保険や業務災害の補償で上乗せするのが一般的な設計です。労災保険に未加入の公館では、法定部分そのものが空白になります。この空白は、職員本人の不利益であると同時に、公館が本国の予算で治療費や補償を負担することを意味します。

確認する点は、労災保険と雇用保険の加入状況(労働基準監督署・ハローワークへの手続きの有無)、傷害保険の対象者(現地職員のみか、本国から派遣された職員も含めるか)、対象になる時間(業務中のみか24時間か)、公館行事の運営に当たる職員とボランティアの扱いです。2028年4月の健康保険・厚生年金の適用開始に向けて、職員の保険料負担や給付を本国規程とどう調整するかの検討と同じテーブルで整理すると、二度手間になりません。

5. 公邸の美術品・展示品・現金

公邸や公館のロビーに置かれた本国の美術品、文化行事のために本国から運ばれてくる展示品、ビザや証明の手数料として受け取る現金は、火災保険の対象になっていないか、なっていても評価額や保管場所の条件が合っていないことがあります。美術品は、保管中だけでなく輸送中、展示中、修復中の損害を含めるかどうかで保険の組み方が変わります。現金は、金庫の有無や保管額の上限、輸送中の盗難が条件になるのが一般的です。本国政府が所有する美術品について本国側で保険がかかっている場合は、保険業法186条の観点も含めて、日本国内の保管・展示をどちらの契約で見るかを整理します。

6. ビザ申請者・在留自国民の情報

公館は、ビザ申請者の申請書と旅券の写し、在留する自国民の在留届、人事情報など、日本に住む多くの人の個人情報を扱います。申請受付を外部のセンターに委託している公館、翻訳や予約システムを外部に頼っている公館では、委託先で漏えいが起きたときに申請者から公館に苦情や請求が来る経路があります。サイバー保険や情報漏えいの賠償責任保険は、一般に、漏えいが起きたときの調査、本人への通知、問い合わせ窓口、法律相談の費用と、被害者への賠償責任を対象にします。ただし、公館の情報システムは本国が管理していることが多く、日本の契約で対象にする範囲(日本の公館が管理する情報とシステムに限るか)の線引きが先に必要です。基本的な考え方はサイバー保険とはで解説しています。

7. 公用車・外交官の自家用車

外務省に登録する外交団車両は、第三者への損害を補償する保険への加入が登録の前提です。2026年6月には損害保険料率算出機構が自動車保険の参考純率を平均14.4%引き上げる届出を行い、保険料が上がる局面に入っています。対人・対物無制限と示談交渉サービスを維持したうえで、フリート契約の判定、車両保険の線引き、満期の統一で見直す論点は、大使館・外交官ナンバー車の自動車保険で詳しく整理しています。

見直しの進め方 5ステップ

公館の保険は、担当者の交代、本国の方針変更、建物の移転、行事の増減のたびに個別に手配され、全体を見た人がいない状態になりがちです。見直しは、以下の順番で進めると、手戻りが少なくなります。

  1. 証券の棚卸し台帳を作る。日本で結んでいる契約と本国プログラムの両方について、表2の項目を1枚に書き出します。保険証券の原本が本国にあって日本に写しがない契約、担当者の個人メールにしか更新案内が来ていない契約が、この段階で見つかります。
  2. 本国プログラムとの重複と空白を照らす。同じ建物、同じ職員、同じ行事について、日本の契約と本国プログラムの両方が対象にしているもの(重複)、どちらも対象にしていないもの(空白)を印を付けて確認します。重複を残す判断はあり得ますが、知らずに二重に払うのと把握して残すのは別のことです。保険業法186条の観点から、本国プログラムで日本の資産を直接付保している形になっていないかもここで見ます。
  3. 所有・賃借に応じた分担を契約書と突き合わせる。公館建物、公邸、外交官住居、倉庫のそれぞれについて、賃貸借契約書の保険条項、貸主がかけている保険の範囲、公館が負う借家人としての責任を確認し、火災保険と施設賠償の対象範囲と整合させます。
  4. 職員のけがと行事の空白を埋める。労災保険・雇用保険の加入状況、傷害保険の対象者と時間、行事の会場条件を確認し、空白があれば優先度を付けます。公館で最も起きやすい事故は、火災でも地震でもなく、来館者と職員のけが、そして行事です。
  5. 満期を揃え、調達の記録を残す。複数の契約の満期を可能な範囲で統一し、更新案内の受取先を部署の共有アドレスにします。見積りの依頼条件、比較した項目、選定理由を文書に残しておくと、本国の会計監査と後任への引継ぎが同時に済みます。日本の自治体が保険を調達するときは、保険料だけでなく事故対応の体制や保険会社の財務健全性を評価項目にして文書化しています(例:岩手県の令和8年度公用車任意保険契約実施要領では、保険料50点、企業の体力15点、示談交渉での信用力15点、事故発生時の対応力20点)。公館でも、同じ考え方で評価軸を先に決めると、比較が楽になります。
表2:公館の保険証券台帳に載せる項目(見直しの起点)
項目確認する内容
契約の基本保険の種類、保険会社・代理店、証券番号、契約者名義(国か公館か)、保険期間と満期日、保険料と支払方法、更新案内の受取先
対象対象になる施設・車両・物・人(記名被保険者と追加の被保険者)、所在地、所有か賃借か
補償保険金額(評価額)、自己負担額、地震・水災など追加した補償、対象外とされている主な事由
本国との関係本国プログラムで同じ対象を補償しているか、本国の規程で付保が義務づけられているか、保険証券の写しの保管場所
手続き事故時の連絡先と受付時間、外国語対応の有無と範囲、保険金の受取口座、代表者(大使・総領事)交代時の変更手続き

公館ならではの契約実務

棚卸しをすると、公館特有の実務上の論点がいくつか見えてきます。

  • 契約者と被保険者の名義。公館は法人格を持つ日本の会社ではなく、派遣国という国家の機関です。契約者を国の名義にするか公館の名義にするか、保険金の受取口座をどこにするかは、保険会社との契約手続きで最初に決める事項です。本国の規程で定めがある場合はそれに従います。
  • 代表者の交代。大使や総領事は数年で交代します。契約書類の署名者や連絡先が前任者のままになっていないかを、着任・離任のたびに確認します。
  • 通貨と会計年度。日本の保険料は円建てで、一括払いが基本です。本国の会計年度や予算執行の時期と満期がずれていると、支払いの承認に時間がかかります。満期の統一と合わせて、本国の会計年度に合う始期を選べるかを確認します。
  • 消費税と免税証明。ウィーン条約23条の課税免除や、外務省が案内する外国公館等に対する消費税の免除は、物品やサービスの購入に関わる手続きです。日本の消費税法上、保険料は非課税取引とされているため、保険料について免税証明の手続きは生じないのが一般的です。
  • 証券と約款の言語。日本の保険の証券と約款は日本語が基本です。本国に報告するために英語の証明書(Certificate of Insurance)が必要な場合は、発行の可否と様式を契約前に確認します。
  • 保険業法186条。日本に所在する財産を本国の保険会社で直接付保する形は、許可を前提とする例外的な扱いです。本国プログラムに日本の資産が含まれている場合は、その構造を確認します。

那由他保険テクノロジーズ Government & Public Sector Practice が公館の損害保険でご支援できること

ここまでの整理は一般論です。実際には、公館建物が所有か賃借か、本国プログラムが何をどこまで補償しているか、現地職員の労働保険の加入状況、行事の規模と会場の条件、公邸にある美術品の評価といった公館固有の事情で結論が変わります。那由他保険テクノロジーズは、駐日外国公館・政府関係機関・公共セクター向けにリスクマネジメントと保険ソリューションを提供する専門チームとして、Government & Public Sector Practice を設けています。担当するのは、公的機関の調達手続きと説明責任の求め方を理解した損害保険の募集人です。

公館の損害保険では、日本の保険証券と本国プログラムの資料、賃貸借契約書、職員の雇用形態、年間の行事予定を起点に、表2の台帳を作り、重複と空白、所有・賃借に応じた分担、職員のけがの補償の空白、行事ごとの会場条件を一覧にします。そのうえで、保険料の削減余地がある契約と、むしろ補償を厚くすべき契約を、金額と理由を付けて切り分け、公館が見積りを依頼するときの条件書として使える形に落とします。結果として保険料が下がることを保証するものではありませんが、本国に説明できる資料と、担当者が交代しても引き継げる台帳が残ります。

なお、那由他保険テクノロジーズは損害保険については特定の保険会社の代理店として保険契約の媒介を行っており、複数の保険会社の商品を比較して推奨する販売は行っていません(詳細は比較推奨販売方針をご覧ください)。公館が複数の保険会社や代理店から見積りを取る調達の過程では、当社はその一社として条件の提示と説明を行う立場です。証券の写しが揃っていない、本国プログラムの内容が分からない、という段階からの相談が実際には多く、そこから始めるのが通常です。

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よくある質問

公館建物を賃借している場合、火災保険は誰がかけるのですか?

建物そのものの火災保険は貸主(所有者)がかけているのが一般的で、公館は自分の什器・設備・改装部分の保険と、借りている建物に損害を与えた場合の借家人としての賠償責任を持ちます。賃貸借契約書に保険の条件が定められていることが多いので、契約書の保険条項と現在の証券を突き合わせてください。貸主の保険は貸主の損害を補償するもので、公館の什器や公館が負う賠償責任は対象になりません。

本国政府の保険プログラムで日本の公館建物や美術品をカバーできますか?

保険業法186条は、日本に支店等を設けない外国保険業者が日本に所在する財産に係る保険契約を締結することを原則として禁止し、契約者側も申込み前に内閣総理大臣の許可を受ける必要があると定めています。日本の公館建物や公邸の美術品は日本に所在する財産です。日本で免許を受けた保険会社の契約を基本に置き、本国プログラムは重複と空白を確認する対象として扱うのが実務的です。法令の適用関係は金融庁または専門家に確認してください。

来館者が公館内で転倒してけがをした場合、外交特権で賠償責任はなくなりますか?

ウィーン条約が定める裁判権からの免除は、相手方が日本の裁判所で訴えることを制限するもので、公館が与えた損害そのものを消すものではありません。同条約41条1は、特権および免除を享有する者に接受国の法令を尊重する義務を課しています。施設の所有・使用・管理に起因する事故については、施設賠償責任保険で法律上の賠償責任に相当する部分を補償し、保険会社が相手方との示談交渉を行う契約にしておくのが一般的な対応です。免除の放棄は派遣国が明示的に行う必要があり(32条)、保険会社が示談交渉を行うことは免除の放棄ではありません。個別の事案の扱いは外務省または専門家に確認してください。

労災保険に入っていない場合、職員のけがは傷害保険で代わりになりますか?

傷害保険は、労災保険の代わりになる制度ではありません。労災保険は日本の法律に基づく制度で、加入の手続きは労働基準監督署で行います。傷害保険や業務災害の補償は、法定の給付に上乗せする部分、または法定給付が受けられない空白を公館の負担で埋める手段として使われます。まず労働保険の加入状況を確認し、そのうえで上乗せの設計を考える順番が実務的です。2028年4月からは健康保険・厚生年金についても外国公館が適用対象になることが2026年7月30日の厚生労働省通知で示されています。

ナショナルデーのレセプションで、会場から保険証明を求められました。何を用意すればよいですか?

会場側が求めるのは、多くの場合、行事の主催者としての賠償責任保険の加入証明です。会場の利用規約や契約書に、求められる保険の種類と保険金額、証明書の提出期限が書かれているので、まずそれを確認します。公館が年間を通じて施設賠償責任保険に加入している場合、その契約で公館外での行事が対象になるか、行事ごとに別の契約が必要かを保険会社に確認します。来場者のけがや行事中止の費用は別の保険で対応するのが一般的なので、会場条件とは分けて必要性を判断してください。

参考一次情報

本記事は、駐日外国公館の担当者向けに損害保険の一般的な考え方を整理したもので、特定の保険会社、保険商品、保険契約、特約の内容を説明することを目的としたものではありません。記事中の「一般的」「対象になる」「対象外とされる」といった記述は一般的な傾向を示すもので、実際に保険金が支払われるかどうかは、個々の保険契約の約款、契約条件と事実関係に基づいて保険会社が判断します。条約・法令・労働保険・社会保険の適用関係は、外務省、厚生労働省、所轄の行政機関または専門家にご確認ください。