貿易企業の保険料コスト削減プログラム|フォワーダー手配と自社契約を同条件で検証する5段階

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1. 結論:保険料は「必ず検証項目に入れる」。ただし「必ず安くなる」ではない

貿易企業のコスト削減で、運賃・通関費用・倉庫費用は毎年見直されるのに、保険関連費用だけが手つかずになっているケースは珍しくありません。理由は単純で、多くの場合、保険料が運賃と同じ請求書の一行として処理されており、年間いくら払っているかを誰も集計していないからです。

先に結論を書きます。

  • 保険料の見直しは、コスト削減活動の検証項目に必ず入れる価値がある。
  • ただし、フォワーダー手配が割高だとは限らない。 手配の利便性・事務負荷の低さと一体になった価格であり、自社契約に切り替えれば必ず安くなるという性質のものではありません。
  • だからこそ手順が必要です。 「可視化 → 同条件化 → 相見積り → 移行 → 年次検証」という5段階で進めれば、削減できるのか、現状維持が合理的なのかを、根拠を持って判断できます。

経営・財務の立場からは、まず次の2点を確認してください。

  1. 年間の保険関連支払額を、いま即答できるか。
  2. その支払いに対応する証券・Certificateの条件(保険金額・区間・補償条件・免責)を照合できるか。

どちらかが「できない」なら、それ自体が見直しの着手理由になります。金額の多寡以前に、補償条件を検証できていない状態だからです。

2. なぜ貿易保険料はコスト削減の検証対象から漏れるのか

運賃と同一請求書で処理されている

国際輸送事業者やフォワーダーの中には、輸送料と貨物保険料を同一の請求書で請求するサービスを提供している事業者があります(例:DHL Global Forwarding「貨物保険」)。

これは実務上便利です。一方で、経理処理上は「国際輸送費」として一括計上されやすく、保険部分だけを抜き出して年間集計する動機が生まれにくくなります。結果として、支払っているのに管理対象になっていない費用が生まれます。

「運送人の責任」と「貨物保険」が混同されている

運送人が負う責任と、貨物保険による補償は別物です。運送人の責任は条約や約款で上限が設けられていることが一般的で、貨物の全損害をカバーする前提のものではありません。ここが曖昧なままだと、「輸送を頼んでいるのだから何かあれば補償される」という誤解が生まれ、保険の中身を検証する必要性が感じられなくなります。

一件ごとの金額が小さく、意思決定の議題に上がらない

1件あたりの金額が小さければ、現場は都度承認で処理しがちです。ところが件数が積み上がると、年間ではまとまった金額になります。1件単位では合理的でも、年間総額で見ると最適とは限りません。

3. 保険料の決まり方と、単純比較できない理由

外航貨物海上保険の保険料は、一般に 保険金額 × 保険料率 で算出されます。保険料率は原則として自由料率であり、貨物の種類、積載船舶、仕出地・仕向地、輸送時期などによって異なります(損害保険ジャパン「保険金額、保険料率」)。

また、外航貨物海上保険は貿易実態や貨物特性に応じて条件を設計するオーダーメイド型の保険です(損害保険ジャパン「外航貨物海上保険」)。

同じ「保険料」という名称でも、前提条件が違えば単純比較できません。

たとえば公開されている例として、DHL Expressの運送保険では、保険料は2,500円または申告金額の1.2%のいずれか高い額とされています(DHL Express「運送保険」)。これは特定の事業者・特定のサービスの公開条件であり、フォワーダー一般の料率でも、外航貨物海上保険の相場でもありません。個別発送では選びやすい条件ですが、継続的・高頻度の出荷では、自社契約の見積りと同じ条件にそろえて比較する対象になり得ます。

比較するときにそろえるべき項目は以下です。

  • 保険金額と通貨
  • 対象区間(Door to Doorか、Port to Portか、保管・積替えを含むか)
  • 補償条件(Institute Cargo Clausesの版と種類、War/Strikesの付保有無)
  • 免責事項・免責金額
  • 特約
  • 事故発生時の窓口とサーベイヤー手配の体制
  • 最低保険料、手配料等の固定的費用

なお、ICC(A)は「すべての損害を補償する」ものではありません。免責条項があり、条件差を価格差と取り違えないことが重要です。

4. 保険料コスト削減プログラム:5段階

Phase 1|現行コストの可視化

目的は、年間いくら、どの条件で払っているかを一覧にすることです。

  • 過去12か月の全出荷を抽出する
  • 運賃請求書から、保険料・運送保険・従価料金・手配料等を行単位で分離する
  • 各出荷に、貨物価額・運賃・保険金額・通貨・出荷日・ルート・輸送手段・フォワーダー・Incotermsをひもづける
  • 証券・Certificateの有無、対象区間、被保険者、ICCの版と条件、免責、War/Strikesの有無を記録する

この段階で、最低料金が何件で発生していたか、同じ貨物でも手配先ごとに条件が違っていないかを確認できます。

Phase 2|同条件化

目的は、価格差なのか、条件差なのかを切り分けることです。

現行案と代替案について、対象貨物・保険金額・通貨・区間・保管や積替えの扱い・補償条件・免責・特約・免責金額・事故窓口をそろえます。

補償を削って保険料だけ下げる比較はしません。安くなったのではなく、リスクを自社に移しただけという結果を避けるためです。

CIFやCIPなど売主付保の条件で輸入している場合、保険費用は売買価格に含まれます。この場合は保険単独ではなく、売買条件と価格交渉をセットで検討します。

Phase 3|相見積りとTCO比較

目的は、保険料ではなく総コスト(TCO)で比べることです。

比較対象は次の4つです。

  1. 現行のフォワーダー等による都度手配
  2. 自社の個別契約
  3. 予定保険
  4. 包括予定保険

包括予定保険は、付保が必要な貨物を一括して予定保険とし、確定通知と精算を行う方式です。多数の輸出案件がある場合、個別手配を減らし、申込漏れの防止と事務の省力化につながり得るとされています(農林水産省「畜産物輸出にかかる輸送手引書」)。

比較には、保険料に加えて最低保険料、手配料、確定通知・精算の工数、証券管理、事故時の対応体制を含めます。削減率を先に目標として置かず、同一条件の見積結果から算出します。

Phase 4|移行設計

目的は、切り替えの瞬間に補償の空白をつくらないことです。

  • Incoterms、売買契約、発注書、Shipping Instruction上の付保主体と費用負担を整合させる
  • 売主と自社の双方で付保している場合は、契約関係と各保険の対象を確認する
  • 内陸区間や保管中を含め、対象区間の空白がないか確認する
  • 切替日をまたぐ出荷の扱いを明文化する
  • 予定保険の確定通知漏れを防ぐ運用を組む
  • 高額貨物・例外貨物・制裁対象地域向け等の承認フローを設ける

Incoterms 2020では、CIFにおける売主の保険義務はInstitute Cargo Clauses (C)または同等の最低限の水準、CIPではClauses (A)または同等が基準とされています(ICC「Incoterms 2020 checklist and flowcharts」)。

「CIF/CIPだから自社で保険を考えなくてよい」「FOB/CFRだから必ず自社契約」とは単純化できません。危険移転の時点、実際に自社が損害を負う区間、証券上の被保険者を確認して判断します。

Phase 5|年次検証

目的は、一度きりの見直しで終わらせないことです。

  • 年間保険関連費用の総額
  • 出荷価額あたりの保険コスト(実質料率)
  • 最低料金が発生した件数
  • 未通知・訂正の件数
  • 事故の発生件数と事故対応・保険金請求の状況

料率だけでなく、貨物構成・ルート・損害実績・一度に集積する貨物価額の変化も反映させます。

5. 4つの付保方法を比較する

比較軸 フォワーダー等の都度手配 自社の個別契約 予定保険 包括予定保険
手配単位 出荷ごと 出荷ごと 一定期間・一定範囲を予定し、確定通知 対象貨物を一括して予定し、確定通知と精算
事務負荷 手配先のサービスにより異なる 都度申込が必要 通知運用が必要 確定通知・精算等の運用が必要
最低料金 サービス条件による 契約条件による 契約条件による 契約条件による
条件設計 手配先の選択肢による 貨物・輸送実態に応じて相談 貨物・輸送実態に応じて相談 貨物・輸送実態に応じて相談
証券・Certificate管理 手配先の運用による 自社で管理 自社で管理 自社で管理
事故時の窓口 契約・証券記載を確認 保険会社・代理店 保険会社・代理店 保険会社・代理店
向く出荷形態 少量・スポット時の比較候補 高額・特殊条件の単発時の比較候補 継続取引時の比較候補 件数が多い継続出荷時の比較候補

商品・保険会社・事業者によって運用は異なります。上表は選択肢を整理するための一般的な比較軸です。

6. 計算方法:削減効果はTCOで測る

現行年間保険関連費用

現行年間保険関連費用
= 各請求書の保険関連項目(保険料・運送保険・従価料金・手配料等)の年間合計

実質料率(監査指標)

実質料率 = 現行年間保険関連費用 ÷ 年間の基準保険金額合計

実質料率は、条件差をならした後で比較する社内監査用の指標です。保険会社が提示する正式な保険料率とは異なります。年ごと・拠点ごと・手配先ごとのばらつきを見つけるために使います。

削減効果

削減効果 = 現行TCO −(見直し後TCO + 移行コスト + 運用追加コスト)

TCOには、保険料本体に加えて、最低保険料、手配料、確定通知・精算、証券管理、事故対応の社内工数を含めます。保険料が下がっても、追加工数がそれを上回れば、見直し後の総コストは下がりません。

7. このプログラムの着手優先度チェック

次の項目に当てはまるほど、見直しの優先度が高いと考えられます。

  • □ 年間の保険関連支払額を集計できていない
  • □ 出荷件数が多く、1件ごとの最低料金が繰り返し発生している
  • □ 利用するフォワーダーが複数あり、請求名称・条件がばらついている
  • □ 保険料が運賃請求書に含まれ、分離して見たことがない
  • □ 証券・Certificateの補償条件を社内で一覧化できていない
  • □ 貨物・ルート・保管・温度管理・積替えなどに固有の条件がある
  • □ CIF/CIP等で売主付保を受けているが、証券条件を照合していない
  • □ 予定保険の確定通知が属人的な運用になっている
  • □ 取扱高が増えたのに、付保方法を数年見直していない

8. よくある質問

フォワーダー経由の保険は割高なのでしょうか

一概には言えません。手配の利便性と一体の価格です。自社の出荷件数・金額・貨物・ルートに対して合理的かを、同じ補償条件にそろえて比較します。

自社契約に切り替えれば必ず安くなりますか

必ず安くなるとは限りません。自社契約では申込、確定通知、証券管理等の社内運用も発生します。出荷件数が少ない企業では、都度手配のほうが総コストで合理的な場合もあります。

CIF/CIPで輸入していれば、自社で保険を考える必要はありませんか

実際の証券で、被保険者、対象区間、補償条件、免責を確認して判断します。Incotermsの規則だけで、個別契約の補償や保険金支払可否は決まりません。

ICC(A)ならすべての損害が対象ですか

いいえ。ICC(A)にも免責があります。貨物特性や輸送実態に照らして、必要な条件や特約を確認します。

どのくらい削減できますか

現行条件、出荷構成、必要な補償水準により異なります。見直した結果、現状維持が合理的という結論もあり得ます。年間コストと補償条件を可視化したうえで判断します。

社内で整理が進んでいない段階でも相談できますか

はい。現状のままご相談いただけます。年間の保険関連費用と補償条件は、ご相談のなかで一緒に可視化していきますので、まずはお問い合わせください。

9. 未整理の段階から、那由他保険にご相談ください

那由他保険では、年間の保険関連費用が分からない、フォワーダー手配を続けるべきか判断できない、Incotermsと実際の補償条件の関係が判断できないといった段階から、一緒に状況を整理します。

自社契約への切替を前提にはしません。現行手配、自社個別契約、予定保険、包括予定保険を同じ条件で比較し、補償と総コストの両面から合理的な方法を検討します。4方式のどれが自社の貨物と取引条件に見合うかという結論まで一緒に出しますので、まずはお気軽にご相談ください。

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参考一次情報・公的資料

情報確認日:2026年8月3日

執筆:那由他保険テクノロジーズ株式会社 編集部|監修:中村 祐太朗|情報確認日:2026年8月3日