
「万が一のとき、社員の家族を支えられる制度をつくりたい」「採用候補者にも、自社のセーフティラインとして説明したい」。那由他保険テクノロジーズでは、ベンチャー企業のコーポレート部門責任者から、このような相談をよく聞きます。
死亡保険は、商品を選べば制度になるわけではありません。誰を対象にするか、いつまで保障するか、いくら支給すると約束するか、その約束をどの規程に書くか、誰が受け取るか、名簿を誰が更新するかまで決めて、初めて社内外へ説明できる福利厚生制度になります。
この記事では、商品の詳細比較ではなく、福利厚生としての死亡保障を制度に落とす順序を整理します。保険商品の仕組みと導入実務は総合福祉団体定期保険とは?中小企業が弔慰金・死亡退職金規程とセットで導入する手順、福利厚生全体の棚卸しはIPOを目指すスタートアップが揃えるべき福利厚生制度をご覧ください。
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福利厚生としての死亡保険は、遺族への約束から設計する
最初に決めるのは「この制度で何を支えるか」です。主な目的は、次の3つに分けられます。
- 遺族の生活支援:在職中に従業員が亡くなったとき、家族へ当面の生活資金を届ける
- 弔慰金・死亡退職金の財源準備:規程に基づいて会社が支給する金銭の財源を準備する
- 社員・採用候補者への説明:多様な社員が安心して働くための備えを、制度として示す
複数の目的を持たせることはできますが、主目的によって対象者、保障額、保険金受取人の設計は変わります。保険契約だけがあり、規程上の支給額や受給者が決まっていなければ、採用候補者へ説明しても、実際に何を約束しているのかが伝わりません。
メルカリは「万が一のときのセーフティライン」として説明
企業の例として、メルカリは採用サイトで「万が一のときのセーフティライン」を掲げ、全社員を対象とする死亡保険への加入により、万一の際に社員の家族を支援することを説明しています(メルカリ「福利厚生」、2026年8月1日確認)。
参考になるのは、保険の存在だけでなく、制度の目的を採用候補者へ言葉で示している点です。自社でも、対象者の定義、保障期間、受取の流れまで決めて言語化すれば、同じように「うちはここまで備えている」と伝えられる制度になります。
福利厚生は人材の確保・定着を支える取り組みとして重視されている
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査シリーズNo.203では、企業が福利厚生制度・施策で重視する現在の目的として、「従業員の仕事に対する意欲の向上」「従業員の定着」「人材の確保」などが企業割合で5割を超えています。同調査は2017年に全国の従業員10人以上の民間企業を対象として実施され、有効回答は企業2,809社、従業員8,298人でした(JILPT「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」)。
死亡保障は、社員と家族をどう支えるかという会社の姿勢を、目に見える制度として示せる取り組みです。目的と対象、給付の考え方を明確にすれば、社内説明にも採用の場面にも活かせる自社の強みになります。
全社員の基本保障と、客観基準による上乗せの二層で考える
制度の骨格は、加入対象と定めた社員に共通する基本保障と、必要に応じて設ける上乗せ保障の二層に分けると整理しやすくなります。
第一層は共通の基本保障
対象者に同額の保障を用意し、「対象となる社員の家族には最低限ここまで備える」という基準を示します。制度趣旨が分かりやすく、規程、名簿、従業員説明も比較的運用しやすい設計です。ここでいう「全社員」は曖昧にせず、正社員、契約社員、役員、海外赴任者等のどこまでを含むかを規程で定義します。
第二層は役職・勤続等に応じた上乗せ
那由他の相談実務では、一定以上の役職者や、一定年数以上勤務した功労者に上乗せ保障を設ける企業もあります。これは代理店の相談現場で見られる設計であり、法令や統計上の標準ではありません。
上乗せを設ける場合は、役職等級、勤続年数、基準給与など、誰が判定しても同じ結果になる基準を決めます。なぜその層に差を設けるのかを制度目的と結びつけ、社員へ説明できることも欠かせません。役員や特定の使用人だけを対象とする契約は税務上の取扱いが変わり得るため、後述の確認も必要です。
役職体系が流動的な段階では、共通の基本保障だけで始める選択肢もあります。上乗せは必須ではなく、自社の制度目的と運用体制に応じて判断します。
対象者・期間・金額・支給約束・受取方法を決める
| 設計項目 | 決めること | 運用で確認すること |
|---|---|---|
| 対象者 | 雇用区分、役職、加入開始の基準 | 入社・雇用区分変更の反映 |
| 保障期間 | 在職中、定年、契約終了、再雇用時の扱い | 退職・定年延長・休職の反映 |
| 保障額 | 一律額、給与・役職・勤続連動、ランク | 昇格・勤続到達・給与改定の反映 |
| 支給約束 | 弔慰金・死亡退職金の支給要件と金額 | 規程と保険金額の照合 |
| 受取・支給 | 保険金受取人、規程上の受給者と順位 | 会社経由時の遺族説明と支払記録 |
保障期間は定年等の在職期間に合わせる
福利厚生としての死亡保障は、在職期間に対応させるのが基本です。那由他の相談実務では、定年等の区切りまでの死亡保障を準備する設計が多く見られます。定年延長、再雇用、契約終了、休職中の扱いも、加入・脱退の基準として先に決めます。
規程上の支給額と保険金額を照合する
保障額は、全員同額、基準給与に月数を乗じる方式、役職・勤続別の定額等から選べます。先に弔慰金・死亡退職金として会社が何を支給するかを定め、その財源となる保険金額を照合する順序が分かりやすいでしょう。規程の支給額が保険金額を上回れば、差額は会社の自己資金から支給することになります。
総合福祉団体定期保険について、日本生命は、死亡退職金規程等に基づく支給額を設定保険金額の範囲内で死亡保険金等として支払う制度と説明しています(日本生命「在職中の従業員の死亡保障」)。具体的な支払条件や引受条件は商品・契約ごとに確認してください。
規程・受取の流れ・被保険者同意をセットで整える
弔慰金規程や死亡退職金規程には、対象者、支給事由、支給額の算定方法、受給者と順位、支給時期等を定めます。就業規則や既存の退職金規程と重複・矛盾しないかも確認します。
金融庁の監督上の着眼点では、全員加入団体定期保険について、遺族・従業員の生活保障という目的を明確にし、弔慰金・死亡退職金等の財源を保障する主契約と、従業員の死亡に伴う企業の経済的損失を保障する特約を区分する考え方が示されています。また、主契約部分を企業がいったん受け取って遺族へ支払う場合には、遺族への説明と支払確認が求められる趣旨が示されています(金融庁「他人の生命の保険契約について」)。
他人を被保険者とする死亡保険契約では、被保険者の同意が契約の効力に関わります(保険法)。団体契約での具体的な同意方法は商品・方式により異なるため、保険会社へ確認し、入社手続や制度変更時の説明フローへ組み込みます。
特定の役職者・功労者へ上乗せするときは税務を確認する
保険料の経理・税務上の取扱いは、契約者、被保険者、保険金受取人、保険期間、解約返戻金等によって変わります。国税庁の法人税基本通達では、役員・部課長その他の特定の使用人だけを被保険者とする場合、一定の契約形態で保険料を給与として取り扱う旨も示されています(国税庁「法人税基本通達 第3節 保険料等」)。
上乗せ層を設ける場合は、契約形態、受取人、保険期間、経理処理、役員報酬・役員退職給与との関係を、規程上の合理性とあわせて顧問税理士等と確認しながら進めます。
導入後は入退社・昇格・定年延長を名簿へ反映する
導入時に制度と契約が一致していても、入退社、雇用区分変更、昇格、勤続年数の到達、休職・復職、定年延長、再雇用でずれが生じます。人事が変更情報を集約する日、保険契約へ反映する担当者、保険会社へ提出する頻度、更新記録の保存場所を決めておきます。
既存の生命保険、退職金制度、慶弔見舞金規程がある場合は、証券と規程を並べ、対象者、支給額、受取人、更新基準を照合します。制度を追加する前に、重複や空白を把握することが先です。
採用候補者には「誰のどんな不安に備えるか」を伝える
採用サイトや候補者向け資料では、「死亡保険に加入している」とだけ書くより、制度の目的、対象、給付の考え方、問い合わせ先を示す方が内容を理解しやすくなります。たとえば「在職中に万が一のことがあった場合に、規程に基づいてご家族を支える制度です」という形です。
給付の内容は、会社が定めた規程と保険の契約条件に基づいて決まります。だからこそ、対象範囲、給付の考え方、問い合わせ先まで正確に書ききることが、候補者の安心と会社への信頼につながります。
那由他保険テクノロジーズが死亡保障制度の設計と実装を支援します
制度の目的がまだ固まっていない段階からご相談いただけます。規程や既契約の内容が整理されていなくても、相談のなかで一緒に照合しながら、対象者や保障額を決めていけます。
那由他保険テクノロジーズでは、人員構成、雇用区分、定年、役職・勤続基準、弔慰金・死亡退職金規程、既契約の保険証券を照合し、対象者、保障期間、基本保障と上乗せ、受取・支給、名簿更新の運用まで一貫して整理します。その制度要件をもとに、保険プログラムの比較・設計、調達、加入・同意・名簿運用を含む導入実装まで伴走します。
制度が形になれば、社員には「家族まで支える会社」という具体的なメッセージが届き、採用候補者には自社のセーフティラインを自信を持って説明できます。税務・法務・労務の確認は、税理士、弁護士、社会保険労務士等と連携して進め、会社の状況に合わせて制度設計から保険調達、導入後の運用までの進行順を整理します。
福利厚生としての死亡保険に関するよくある質問
全社員を対象にしないと福利厚生制度になりませんか?
対象範囲は制度目的と契約条件に応じて設計します。役員や特定の使用人だけを対象とする場合は、契約形態によって保険料が給与扱いとなる税務論点も設計時に整理します。
保障は定年までにするべきですか?
福利厚生として在職期間に対応させる設計は多く見られますが、定年延長、再雇用、契約社員等の扱いを含めて会社ごとに決めます。保険商品の加入可能年齢や引受条件も個別に確認します。
死亡保険を導入すれば採用に有利になりますか?
JILPT調査では、人材の確保や従業員の定着を目的に福利厚生を重視する企業が多いことが示されています。死亡保障は、万が一のときに家族を支えるという会社の姿勢を、制度として具体的に伝えられる取り組みです。目的、対象、給付の考え方を正確に説明できる状態にしておけば、候補者にしっかり伝わる採用材料になります。
被保険者本人の同意は必要ですか?
他人を被保険者とする死亡保険契約では、被保険者の同意が契約の効力に関わります。団体契約での具体的な方法は商品・方式によって異なるため、保険会社へ確認してください。
参考一次情報・公的資料
情報確認日:2026年8月1日